【2019年】PwCの眼(8)エコシステム構築のカギ

2019-12-09

モビリティにおけるビジネスモデルは、従来、企業と消費者の「1対1のモノの提供型」というシンプルな構図であった。近年、モノからコトへのシフト、という言葉に代表されるように、複数企業が連携しサービス(コト)を提供することで2つ以上のマネタイズポイントが発生するようなモデルが構築されている。次世代モビリティのビジネスモデルは、前回論じたように「価値の源泉は、移動そのものではなく、移動後の“コト”にシフト」することから、移動に直接関わらない領域を含めた「価値提供者分配型」のエコシステムを構築することが求められる。ここで言う価値提供者分配型とは、企業と消費者の関係もN対Nとなり、マネタイズポイントが複雑化することを意味するが、既にあるその複雑な座組の中に如何に食い込んでいくか?ではなく、ヒトや社会のライフスタイルをデザインしていくことに、成功のポイントがある。その狙いは、購買確率の最大化、ではなく、何に対価を払っているのか意識させず、サービスをシームレスに提供すること、つまり“選ばせない”ことにある。

ITジャイアントは、その経営資源を活かし、BtoB領域でマネタイズを実現すると同時に、BtoC領域でもライフスタイル=生活流を押さえること出来る状況にある。ECサイト大手の物流への取り組みは、生活流、商流、物流の一気通貫の掌握が狙いにあるとされ注目を浴びている。

では、その「ライフスタイルデザイン」はどのように実現できるだろうか?一つの有用な手段はデータアプローチである。テクノロジーの進展により、従来では考えられない情報やデータ、ビジネスモデルの組み合わせを発想し、実現することが出来るようになってきている。その点においては、社会や生活者に関する固有の情報を持っているプレーヤーに勝ち残りの可能性が残されている。

また、ライフスタイルデザインの突破口となる生活者のプライベート情報/心の中を引き出す、つまり、取れないはずの情報・データを“晒して”もらう仕掛けづくりも有効である。例えば、自社アセットを自由に“使ってもらい”、モノを自由に移動させる代わりにそのユーザーの情報やデータをオープンにさせ、お金を落とすポイントを先回りして提供する、というビジネスモデルは今後発展してこよう。

単純な経済構造から、複雑なエコシステムの中で業界の枠を越えた座組が求められるということは、産官学の連携や、参加者全員のWin/Happyを志向することに他ならない。実際に、海外では、街づくり(政策)、交通モーダルシフト、衣料品販売、プレミア感獲得、という立場、狙い、業界、規模も異なる四“者”を巻き込んだビジネスモデル作りに成功し、それぞれのWinやHappyを実現した例もある。ただし、この場合も、従来の移動手段に何かを付与して対価を得る、のではなく、社会づくり、生活の質向上等の観点から、モビリティが担う役割・機能は何か?という発想が欠かせなかったのは言うまでもない。次回は、モビリティ、特にMaaSに関する各プレーヤー動向を解説する。

担当者

北川 友彦

ディレクター
PwC Strategy&

阿部 健太郎

シニアマネージャー
PwC Strategy&

※本稿は、日刊自動車新聞2019年11月16日付掲載のコラムを転載したものです。

※本記事は、日刊自動車新聞の許諾を得て掲載しています。無断複製・転載はお控えください。

※法人名、役職などは掲載当時のものです。

{{filterContent.facetedTitle}}

{{contentList.dataService.numberHits}} {{contentList.dataService.numberHits == 1 ? 'result' : 'results'}}
{{contentList.loadingText}}

{{filterContent.facetedTitle}}

{{contentList.dataService.numberHits}} {{contentList.dataService.numberHits == 1 ? 'result' : 'results'}}
{{contentList.loadingText}}