
Worldwide Tax Summary 2025年4月号
本稿では、海外税制(米国、EU、ベトナム、国連)の動向を解説しています。(月刊国際税務 2025年4月号 寄稿)
2019-08-07
自動車のデジタル革命によって、利用者が求める利便性とCASE(コネクテッド、自動化、シェアリング、電動化)技術が提供するサービスとの間のギャップが小さくなっており、次世代のモビリティ社会が形作られている。車がネットワークやクラウドにつながることにより、モビリティサービスは進化を遂げている。
一方で、自動車がネットワークに接続することはサービス向上と同時に、サイバー攻撃の脅威にさらされる原因にもなる。自動車の新たなセキュリティリスクの登場は、国内外を問わず、自動車関係者では既に課題として認識されており、さまざまな団体から自動車サイバーセキュリティに関する指針やガイドラインが公開されている。
国際的な動きとして特に重要なものが、国連自動車基準調和世界フォーラム(WP29)と、国際標準規格のISO/SAE21434である。これらは自動車やモビリティサービスの開発・運用時におけるサイバーセキュリティ対策に関するガイドライン文書であり、今後は自動車のライフサイクル全体を通じたサイバーセキュリティ施策の実施を義務化、標準化する方向で検討が進められている。
これらの国際的な動きから、二つの重要な示唆が得られる。一つ目は次世代のモビリティ社会において、サイバーセキュリティ施策の実施は必須だということである。特に理解すべき点は、自動車やモビリティサービスが進化した結果、サイバーセキュリティ施策の義務化が必要になってしまうほど、サイバーセキュリティ被害にあう可能性が高まったという事実だ。ネットワーク接続など機能面で進化した自動車が従来通りの開発手法で作られてしまうと、それによりモビリティ社会全体が危険にさらされ、人々の生命や財産を脅かしてしまうことを理解する必要がある。
二つ目は、これらサイバーセキュリティ領域は、企業や国家間の競争領域ではなく、すべてのモビリティ関連の企業・組織・国家が協調して進めていくべき領域だということである。自動車に限らず、サイバーセキュリティ対策は攻撃者との技術競争の面がある。このような現実を踏まえれば、企業間・国家間でセキュリティ施策の優劣を比べている場合ではなく、攻撃者からモビリティ社会に暮らす人々を守るため、一致団結してサイバーセキュリティ対策技術や開発プロセスのセキュア化を進める必要がある。このような国際的な協調活動を加速するためにも、上述の規格の制定が進められている。
このように今後の自動車開発においては、国際的な協調領域であることを念頭に、競合他社やサプライヤーなどとも協力しあいながら、サイバーセキュリティ施策を確実に進めていくことが求められる。そのような協調サイバーセキュリティ活動ができなければ、次世代モビリティ社会を構築するメンバーとして、参加する権利が得られないということを認識する必要がある。
シニアマネージャー
PwCコンサルティング合同会社
ken.okuyama@pwc.com
※本稿は、日刊自動車新聞2019年7月13日付掲載のコラムを転載したものです。
※本記事は、日刊自動車新聞の許諾を得て掲載しています。無断複製・転載はお控えください。
※法人名、役職などは掲載当時のものです。
本稿では、海外税制(米国、EU、ベトナム、国連)の動向を解説しています。(月刊国際税務 2025年4月号 寄稿)
日本の物流業界は今、これまでにない大きな転換期を迎えています。精力的な動きをしている食品業界について、現状や課題、今後の方向性やあるべき姿などを解説します。(Logistics Today 2025年2月27日寄稿)
生成AIを中心に新たなテクノロジーがマーケットに展開され、HRテクノロジーへの期待が高まっています。PwCが実施した2つの調査結果を基に、HRテック導入の際の5つのポイントについて解説します。
PwC Japan有限責任監査法人が発表した、2030年に向けた中期経営ビジョン「Assurance Vision 2030」について、2025年の取り組みをご紹介します。(旬刊経理情報 2025年4月1日号 寄稿)
本書では、SDV(ソフトウェア定義車両、Software Defined Vehicle)とは何か、今後何をすべきかを検討いただく一助として「SDVレベル」を定義し、SDVに関するトピックや課題を10大アジェンダとして構造分解して、レベルごとに解説しています。(日経BP社/2025年4月)
2025年の産業・サービス分野におけるM&A活動は、企業がポートフォリオの拡大、再編、洗練に向けた取り組みを強化していることから、成長へ向かうことが見込まれます。
本レポートでは、世界の大企業の経営幹部673人を対象に、経営の戦略や優先順位を調査しました。COOはAIの活用拡大に強いプレッシャーを感じており、関連する人材の採用・育成に注力する一方で、業務に追われ将来のビジョン策定に注力できていない状況が明らかになりました。
PwCコンサルティング合同会社は、持続的なモビリティ社会システムの創造を推進する「スマートモビリティ総合研究所」を設立しました。モビリティ動向・関連データの発信によりステークホルダーの認識共通化を後押しするとともに、コミュニティ形成のためのリアルな場を提供し、モビリティ領域における価値創造の機会を創出します。