農林水産・食 ・バイオ

PwC Japanグループの農業ビジネス支援について紹介します

食料生産を担う生産者が減少し、高齢化が進むことで生産基盤が脆弱化するなど地域社会の衰退が顕在化している中、農林水産業の生産力の強化が大きな課題となっています。そして食料を安定的に供給するためには、国内の農業生産力の強化が求められています。

私たちPwCは「食料生産・供給」「バイオテクノロジー/バイオマス資源」「生物多様性・多面的機能」「食・健康」の4つの柱を掲げ、現場の声を大切にしながら「日本における持続可能な農林水産業と社会の実現」を目指しています。また、これらの取り組みを通じて、農林水産業・食により人々の健康で充実した生活の基礎を築くことを見据えています。そしてこれらの4つの柱を推進するためには、農林水産分野や食におけるイノベーションの成果創出が不可欠であり、研究開発実施者に対する伴走支援や、マルチステークホルダーの連携強化が重要となります。

農林水産業・食においてPwCが取り組む4つの柱

農林水産業・食において PwCが取り組む4つの柱
  1. 食料生産・供給
    デジタル活用やスマート農業などの研究開発により、食料生産・供給の高度化および効率化
  2. バイオテクノロジー/バイオマス資源
    バイオテクノロジーやバイオマス資源を活用した新たな生産方法の確立、新規産業の創出、地域農業の活性化、環境保全型農業・循環型社会・経済合理性のリデザイン
  3. 生物多様性・多面的機能
    自然資本や生物多様性の保全に資する取り組みの維持・拡大、農山漁村の有する文化的機能や防災機能などの活用による地域社会の活性化
  4. 食・健康
    食の根本的な価値である生命機能維持、食を通したコミュニケーションの形成および食文化の体験、農作業を通したストレス軽減など、食・農を活かしたウェルビーイングの最大化

1. 食料生産・供給

PwCは「農業DXの加速化」「スマート農業・林業・水産業の推進」「フードバリューチェーンの最適化」により食料生産・供給の高度化および効率化に貢献していきます。

農業従事者の高齢化・担い手不足に伴って農地の集積・集約が推進される中、農家の法人化が進むことで、ほ場(農地)の特性を熟知し、管理を行うことが難しくなっています。また、小さな農地が点在している中山間地域においては集積・集約が難しく、農地の状況把握に多くの労力が必要となります。

これらの課題に対しては、衛生画像やドローンといったリモートセンシング技術が有効な解決策となります。画像解析により農地の耕作状況や作付作物を可視化し、農地の状況を広域な範囲で俯瞰的に把握することや、解析結果を作物の生育・収量予測に活用することは農業行政業務の省力化につながると考えています。

PwCはこれらのデジタル技術の活用に対して、地域の農業を主導する官公庁や自治体、農業関係団体に寄り添った伴走支援を行い、農業のデジタルトランスフォーメーション(DX)に貢献します。

また、データ解析やAI技術の活用による作物の生産性向上、農機やUAVの自動走行、ロボットによる遠隔収穫による作業省力化といった「スマート農業」、地理空間情報のデータ解析、ドローンを活用した測量・運搬による作業効率化および省力化といった「スマート林業」、データ解析・AI技術による養殖における生産管理の効率化をはじめとする「スマート水産業」などの実証に積極的に取り組み、普及に向けて貢献していきます。

そして、生産から消費までの食料生産・供給に係る一連のバリューチェーンに対して、川上から川下までデータを相互共有することにより、生産性向上や商品の付加価値向上、流通コスト削減などを実現し、最適化を図ります。その際には、温室効果ガスの排出状況などを把握する「環境配慮の観点」や、農薬の残留量などを可視化する「食の安全の観点」も踏まえたバリューチェーンの形成を目指します。

関連サービス

宇宙ビジネス向けコンサルティング

ドローンテクノロジー/ソリューション

2. バイオテクノロジー/バイオマス資源

"Bio is the new digital "――。少資源国である日本にとって、バイオテクノロジーは資源不足などの課題解決に貢献する“新資本主義を開く鍵”と言われています。

バイオテクノロジーは、ゲノムデータの蓄積、ゲノム解読のスピードやAI技術の進展により大きく革新しました。現在はゲノム医療から、ワクチンや診断薬などの医療関連、ゲノム編集食品・培養肉・腸内細菌などの食農関連、バイオプラスチックや繊維などの新素材およびバイオ燃料まで、金属以外の物質であれば大抵のものは生成または編集可能となっています。

また、バイオマス資源である森林、農地、海洋/藻場などは、温室効果ガスの吸収源としての役割を担うことの重要性が再認識されています。農林水産資源は、環境・社会課題の解決と経済成長の両立に大きく貢献する可能性を有しており、農林水産業は単なる食料生産・供給以外の産業への影響力も見せています。

バイオテクノロジー/バイオマス資源には、気候変動や食料問題、エネルギー問題、感染症予防といった地球規模の社会課題を解決し得る可能性があります。

PwCは、環境・社会価値が毀損されない持続可能な社会の構築に向け、バイオテック、アグリテック、フードテックなどの先進技術を活用し、気候変動、エネルギー、水、廃棄物など環境・社会に係る課題の解決に取り組みます。

また、バイオマス資源やバイオテクノロジーなどを活用した地域農業の活性化、農林水産資源を活用した新産業および新事業の創出に向け、さまざまなステークホルダーや産業界との有機的なつながりを活かし、農林水産業のさらなる振興に貢献します。

これらの取り組みを通して、日本国内の資源である米、藻類、微生物、細菌などのバイオマス資源、バイオテクノロジーおよびIoT、AIなどの先端テクノロジーを活用したSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)を実現し、経済合理性のリデザインを目指します。

関連サービス

Technology Laboratory

バイオテクノロジー/バイオマス資源

3. 生物多様性・多面的機能

気候変動や生物多様性、自然資本の劣化に対する関心が高まる昨今、環境再生型(Regenerative)の農業など食料生産の新しい在り方が世界で注目され、大きな投資を受けています。また、日本では農林水産省が「みどりの食料システム戦略」を立ち上げ、これらの取り組みを推進させようとしています。

これらの背景には、サプライチェーンが世界中でつながったことで水の無駄遣い、土壌の劣化、化学物質による土壌・海洋・河川の汚染、プラスチックの海洋流出が世界中で発生し、それらが気候変動や生物多様性の喪失の一因となっていることが挙げられます。農業は気候や自然資本への依存度が大きいことから、こうした要因が今後の事業基盤にも大きな影響を及ぼすことになるでしょう。

持続的なサプライチェーンとフードシステムを長期的に維持・構築するためには、環境負荷の低い農業やサプライチェーン、加工の仕組みなどの検討が不可欠です。経済成長とサステナビリティを両立するためには、サステナビリティに係る制約と要請に応えていく必要があり、そうすることで新しいイノベーションにつながります。

さらに、農山漁村における農業や水産業といった生産活動は、地域社会の維持形成だけでなく、洪水防止や土砂崩れ防止といった土壌の保全、水源のかん養、自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝承といった多面的な機能を有しています。また、農業は福祉機能と教育機能も合わせ持っており、近年では特に、生命倫理を学ぶ教育機能の重要性が注目され、初中等教育現場への導入が進んでいます。

一方、農山漁村の集落では高齢化や過疎化に伴い、休耕地および耕作荒廃地の増大や、中山間地域における集落崩壊や廃村が進んでおり、上記のような多面的機能の発揮が困難になりつつあります。

農林水産業の多面的機能が発揮されるためには、農山漁村における生産活動の維持に向けてデジタル技術を導入するなど、地域の課題解決に向けた取り組みが不可欠です。PwCは地域の最前線に立ち、多様なステークホルダーを結び付けながら、共創により地域の課題解決を図るとともに、多面的機能の維持・発揮をサポートします。

関連サービス

サステナビリティ経営支援サービス

自治体変革・地方創生推進支援

4. 食・健康

近年、ウェルビーイングという価値観が世界的に注目されています。ウェルビーイングとは、身体的・精神的・社会的にも良好な状態にあるという概念です。

従来は身体的に良好であることが“健康”と捉えられていましたが、一人ひとりの特性や考えを尊重する社会的風潮となり、身体的だけではなく、精神的・社会的にも持続的に良好であることが重視されるようになりました。

日本の精神疾患患者数は近年増加の一途をたどっており、従来の4大疾病(悪性新生物、糖尿病、脳血管疾患、虚血性心疾患)の患者数を上回り、2020年度には約500万人に達しています[2]。また、精神疾患を有する外来患者数は15年前の1.8倍[3]に増え、日本では精神疾患により年間11.2兆円の経済損失[4]があると推計されています。

「メンタルヘルスに関する国際調査2021(OCED)」[5]によると、精神疾患を有する日本人の割合は、2020年に17.3%とパンデミック発生前の2.2 倍に増加したとされています。日本人のメンタルヘルスに係る問題は非常に深刻化しており、重点的に取り組むべき社会課題の1つと言えます。

精神疾患の要因の1つであるストレスは、職場や家庭などの環境を問わず発生するものであり、私たちはストレスを無意識のうちに蓄積している傾向にあります。現代は仕事でもプライベートでも、ツールで常に誰かと接続されている“常時接続時代”です。このような過剰接続時代には、以前とは違う種類のストレスが蓄積されています。

このような潮流の中、ここ数年、食を通した身体的な健康だけではなく、食・農を通じた精神的・社会的な健康にも注目が集まっています。“生命機能を維持”するためにエネルギー・栄養を摂取するという食の根本的な価値は変わりませんが、食を通したコミュニケーション形成や食文化体験、農作業に従事することによるストレス軽減など、食・農とウェルビーイングとのつながりはますます注目されています。

現代のストレス社会においては、ストレスを自分自身でコントロールする手法や軽減する環境の創出が重要となっています。

PwCは、ICTやAIなどのデジタル技術や応用脳科学などの先端技術を活用し、科学的なエビデンスに基づいて“食・農を通したウェルビーイング”に係るビジネスを創出し、多様なプレイヤーとの共創により経済的にも精神的にも豊かな社会の形成に貢献します。

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健康・環境に配慮した食の未来

イノベーション創出のための連携支援

農林水産・食品の領域においてテクノロジーの活用が急速に進展し、ゲノム編集による品種開発やビックデータを活用した農作物の生育管理が実現するなど、農林水産業の在り方そのものが大きく変わろうとしています。

また、不確実さが増す昨今の社会情勢に伴い、食料安全保障の観点から食糧確保の必要性が問われており、農業分野の重要性はこれまで以上に高まってきています。

現在、官民のさまざまな機関や事業者が革新的なテクノロジーの研究開発に取り組んでいますが、それらを社会実装することは必ずしも容易ではありません。

社会実装に向けては、研究開発だけでなく、インフラの整備、規制・ルールなどのアップデート、社会受容性の構築、事業開発や人材・コミュニティの育成などを同時に進め、テクノロジーが社会に浸透していく仕組みを構築する必要があります。特に農林水産・食・健康といった領域には、既存の商慣習(例:既存の流通構造など)や、生産者、またその先の消費者かに対する理解・納得感の醸成といった難しさなどが存在し、テクノロジーによるイノベーションが進みづらい状況にあります。

PwCはこのようなイノベーションの創出に向け、産官学金が提供するさまざまな支援を有機的に結び付け、効果の最大化をサポートします。PwC自身も社会実装の支援者として、研究開発実施者に対して新しいアイディアを生み出す仕掛け作りや事業企画の立案、販路の開拓などを支援し、マルチステークホルダー間の合意形成を推進することで、イノベーションの成果創出・最大化に貢献します。

[1] 園芸療法(horticultural therapy)は、花の鑑賞や農作業の実施により精神疾患の改善や高齢者の認知レベルの改善を行う治療方法です。

[2] 厚生労働省, 令和2年(2020)患者調査の概況

[3] 厚生労働省, 令和2年(2020)患者調査の概況

[4] 厚生労働省, 2022, 精神疾患にかかる社会的コストと保健医療福祉提供体制の国際比較に関する調査

[5] “A New Benchmark for Mental Health Systems”, https://www.oecd.org/els/a-new-benchmark-for-mental-health-systems-4ed890f6-en.htm

主要メンバー

金行 良一

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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齊藤 三希子

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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片桐 紀子

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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