【2019年】PwCの眼(3)次世代モビリティ時代を支えるメカニズム

2019-06-27

次世代モビリティの本質の1つが「都市レベルのシェアリングエコノミー」であり、「データを押さえ、様々なモノ・コトを最適化していく」ことであるとすると、「ダイナミックプライシングによるアセットの最大活用」「MaaS経済圏における新たな与信の仕組み」「所有データ流通経済への対応やサイバーセキュリティ対応等市場参加条件の整備」がそれを支える主要なメカニズムとなる。

ダイナミックプライシングに関しては、これまでもエアラインやホテルなどで採用されてきたが、近年ではシェアリングエコノミーにおける資産効率最大化の視点で、新たに導入する業界や企業が相次いでいる。これは、商いの根幹である価格設定を「頻繁に」「細かく」「自動的に」動かす、まさに一物一価の常識を壊すものである。米国EC大手では、1日に250万回以上価格変更が行われているという。日本エアライン大手では、「個別最適と個別最適の組合せが全体最適になるとは限らない」とし、システム刷新と合わせ、乗り換え客を含めた価格最適化に踏み切ったが、客単価は国際線で4千円弱上がり、稼働率も1%増加、単価アップと稼働率アップを両立させたと言われている。最近、世の中を賑わせた巨大投資やM&Aの動きは、この全体最適化メカニズムを活用し、単一事業ではなく複数事業に跨って最大限の効果を刈り取ることが狙いにある、という解釈が出来る。

一方、企業としてのリスクもある。大事なポイントは、消費者を含めた“全体最適化”である点だが、ライドシェアサービスの例で言えば、価格を下げ、稼働率を上げ過ぎると待ち時間が長くなり、消費者の利便性が落ちる。このバランスを保つことの重要性を考えると、各市場(ライドシェアでは地域)のゲームルールであるWinner Takes Allの結果は、社会機能としての次世代モビリティでは、必ずしも“良し”とされないことに留意する必要がある。

また、様々な担い手がモビリティに関与・形成する時代が訪れ始めている。例えば、価値・サービス提供者としての“個人”が直接関与・形成するモビリティ市場においては、スマートフォンアプリケーションの「評価機能」で提供者の信頼性を担保することが一般的である。しかしながら、ライドシェアサービスにおいて、高評価のドライバーがトラブルを起こす事案も発生しており、完璧に機能しているとは言い難い。移動、決済、行政等の様々なデータとブロックチェーンなどのテクノロジーを活用した複合的な信用管理のシステムが、モビリティサービスの担い手を増やすことにつながり、より発展に寄与していくと考えられる。

様々なモビリティが接続/統合され、都市と連携していくことは、即ち「所有データの流通」にほかならない。運行情報やリアルタイム走行位置のデータ化のみならず、複数事業体と連携するためのフォーマット変換等、データ経済圏へ参加する仕組みの構築が求められる。更には高まるセキュリティリスクへの対応が“責任”として発生する。次回は、次世代自動車、という観点でも注目が集まるサイバーセキュリティに触れる。

担当者

北川 友彦

ディレクター
PwC Strategy&

阿部 健太郎

シニアマネージャー
PwC Strategy&

※本稿は、日刊自動車新聞2019年6月15日付掲載のコラムを転載したものです。

※本記事は、日刊自動車新聞の許諾を得て掲載しています。無断複製・転載はお控えください。

※法人名、役職などは掲載当時のものです。

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