2025年の見通し

産業・サービス分野における世界のM&A動向

工業製造業と自動車産業における世界的なM&A動向 ヒーローイメージ
  • 2025-03-17

2025年の産業・サービス分野におけるM&A活動は、企業がポートフォリオの拡大、再編、洗練に向けた取り組みを強化していることから、成長へ向かうことが見込まれます。

産業・サービス(I&S)における2025年のM&Aは成長に向かい、成長を促進したい成功企業と、解決策を模索している苦境にある企業の両方からディール活動が生じると見込まれます。

包括的なテーマの1つは、企業がエネルギートランジションおよび関連サービスの買収と投資に注力していることです。また、競争力を維持し、市場でのプレゼンスを拡大するために、新しいテクノロジーとデジタル機能を獲得しており、特にAI、自動化、デジタルトランスフォーメーションに重点を置いています。M&A活動は、以下のようにサブセクターによって異なる展開を見せるでしょう。

  • ビジネスサービスのディールは大幅に増加すると予想されます。これはこのセクターが安定したキャッシュフローと再編の機会をもたらす需要の高いサービスを提供しているためです。
  • 航空宇宙・防衛(A&D)のディールは、観光市場の成長および世界的な紛争に対応するための防衛予算の拡大に伴い、増加しています。
  • エンジニアリング・建設(E&C)および産業機械のサブセクターでは、エネルギートランジションおよび関連サービスに牽引されるとともに、自動化、ロボット、AIなどのテクノロジーの導入・展開を通じて効率を最大化しようという動きに後押しされ、ディール活動の増加が引き続き見込まれています。
  • 自動車サブセクターのM&A案件も増加すると予想されます。これは、OEMとサプライヤー双方による生産能力の合理化とリストラクチャリングに牽引されるものと思われます。電気自動車(EV)市場に焦点を当てたディール活動は、特にEVを取り巻くサービスやインフラにおいては引き続き活発であると見られますが、トレンドの鈍化に伴い、よりターゲットを絞った形で進行するでしょう。

CEOは、M&Aの見通しについて過去数年よりも自信を持っています。M&Aは、ポートフォリオを積極的に見直し、コアとなる戦略的成長分野、収益性、資本配分に集中できるようなカーブアウトや売却を検討する上で、魅力的な選択肢となっています。企業は、ノンコアまたは不採算のアセットを売却し、より収益性の高い分野や成長志向の分野に資本を再配分するための行動を起こしています。2024年にGEが3つの上場会社に分割されたのに続き、分社化へと向かう幅広いトレンドの中で、I&Sでは2025年に他の重要なコングロマリット分割が発表される可能性が高いと予想されます。

81%

の過去3年間に大規模な買収を行ったI&S分野のCEOが、今後3年間で1件以上の買収を計画している。

出典:PwC第28回世界CEO意識調査(2025年1月)

最新の世界CEO意識調査によると、買収を計画しているI&SのCEOの割合は、昨年の79%からわずかに増加しました。世界的な選挙の年だった2024年が過ぎ、インフレ圧力が緩和されつつあるため、ディール活動は近い将来回復すると予想されます。

世界各地で、ディ―ルメーキングや戦略的アライアンスにおける保護主義が台頭しています。企業は新たな関税の導入やサプライチェーンにおけるリスク管理の問題に直面しており、すでに一部の企業はサプライチェーンの地理的範囲を限定したり、一部の事業をニアショア化したりしています。

84%

のI&S分野のCEOが、貿易問題や国家間の対立紛争など、地政学的紛争に少なくとも何らかの影響を受けると述べており、25%は大きな影響を受けると述べている。

出典:PwC第28回世界CEO意識調査(2025年1月)

このような地政学的環境は、ディールメーカーを国内のM&A機会に集中させ、世界的な拡大や国際的なディール活動を制限する可能性があります。一方、地域によって状況は異なります。米国では、2024年末の金利低下(ただし、2025年にはこの傾向は鈍化する見込み)とインフレ圧力の緩和によってM&Aにとってより好ましい経済条件が整いつつあることもあり、楽観的な見方が強まっています。米国の規制・反トラスト政策の変化は、特にA&Dや産業機械において、より大規模でトランスフォーメーション効果の高いディールの増加に影響を与えると予想されます。欧州やアジアの一部の市場では、成長、インフレ、金利の先行きに対する不透明感が続いています。これは買い手の自信に影響し、買い手と売り手の間のバリュエーションギャップを持続させています。リスク、資金調達、バリュエーションに関する懸念に対処するため、プライベート・キャピタルなどのオルタナティブファイナンスや、アーンアウト、パートナーシップ、ジョイントベンチャーなどのストラクチャーアプローチが頻繁に利用されるようになっています。

プライベート・エクイティ(PE)は、資金調達難が緩和されれば多額の「ドライパウダー」を投入できるため、M&A活動の増加に一役買うと予想されます。PEの活動が活発化している例としては、マクロおよびミクロ経済状況の影響を受けている中小企業の再編が進んでいる建設セクターや、現在の厳しい市場環境の中で「ロールアップ」による再編の機会が存在する自動車サプライヤーなどが挙げられます。このような再編によって、PEプラットフォームはM&Aの機会を戦略的目標に合致させ、規模を活用できるようになり、価値創造と持続的な成果につなげることが可能になるでしょう。

「I&Sのディール活動は2025年に轟音とともに復活しています。その原動力となるのは、マクロ経済状況の改善、エネルギートランジション、ロールアップとエグジット戦略、大規模なトランスフォーメーションアプローチ、リストラクチャリングと事業再編の必要性であり、いずれもグローバルおよび各国内のリスクの観点から見込まれるものです」

Michelle Ritchie、PwC米国、パートナー、グローバル産業・サービス分野ディールズ共同リーダー

サブセクターの動向は以下の各セクションをご覧ください

2024年のM&A件数と金額

産業・サービス分野のディール件数と金額(2019~2024年)
タブをクリックすると、各地域のチャートが表示されます。

Bar chart showing M&A volumes and values for the consumer markets sectors. Deal volumes declined in H1'24 but deal values increased compared to both H1'23 and H2'23 largely due to some notable megadeals.

出典:LSEGとPwCの分析(データはターゲット企業の所在地に基づく)

産業・サービス分野のディール件数と金額は、2023年から2024年にかけてそれぞれ15%、3%減少しましたが、ほぼパンデミック前の水準を維持しています。M&A活動の継続的な減少はマクロ経済および地政学的環境に起因するもので、こうした環境はディールメーカーにとって引き続き課題となっています。

欧州・中東・アフリカ(EMEA)のディール件数は19%減、米州は17%減、アジア太平洋は9%減と、地域によってばらつきがありました。アジア太平洋では、インドは9%増となり、中国はディール件数は10%減となったものの、3年にわたる減少の後でディール活動が安定してきていることがうかがえます。ディール金額は、米州が27%増、EMEAが20%減、アジア太平洋が17%減と、異なる結果となりました。この地域差は主にメガディール(50億米ドル以上のディール)活動のためで、米州ではメガディールが2023年は4件だったのに対し、2024年は6件となりました。

状況はセクターによっても異なります。2023年から2024年にかけて、すべてのセクターでディール件数が減少しましたが、その程度はセクターによって差がありました。A&Dは-35%、自動車は-18%、通常より回復力のあるビジネスサービスは-18%、産業機械は-14%、E&C-8%となりました。同時期にディール金額が減少したセクターは3つ(自動車、ビジネスサービス、産業機械)、増加したセクターは2つ(A&D、E&C)でした。

以下のセクター別スポットライトでは、2025年にM&A活動を促進すると予想されるA&D、自動車、ビジネスサービス、E&C、産業機械の動向について概説します。

産業・サービ分野におけるM&A動向

  • A&Dのディールは2025年に増加すると予想されています。企業は旺盛な需要に対応していくためにサプライチェーンをテコ入れし、民間航空や政府系の案件に集中するためにノンコアアセットを売却していくと想定され、結果としてM&Aは、大型ディールよりもむしろ中小規模の買収に集中すると思われます。弾薬や防衛などの重要なA&D分野の成長をM&A活動がサポートすることになるでしょう。
  • 2024年には、金利とサプライチェーンの問題によりこのセクターのM&A活動は鈍化しました。しかし、企業はそうした課題を克服するために行動を起こしていると思われ、バランスシートを強化し、サプライチェーンに投資するためにノンコアアセットを売却しています。例えば、Lockheed Martinは2024年9月にCanadian Commercial Engine Solutionsを1億7,000万米ドルでFTAI Aviationに売却しました。2025年にM&A活動が活発化する準備は整っています。
  • ウクライナ戦争や中東での紛争を含む地政学的情勢が、国防支出の増加を促しています。これは、新政権のもとで起きる政策変更の可能性によっても影響されます。軍需品への投資と、用途に適合した軍需産業の構築に大きな焦点が当てられています。さらに、原材料サプライヤーを買収することで防衛サプライチェーンに統合し、リスク特性と調達が困難になる懸念とを最小化することに引き続き関心が集まっています。
  • 民間航空宇宙部門は2025年も成長を続け、M&A活動が活発化すると予想されています。企業は中核となる航空事業に注力し、ノンコア事業を売却しています。航空宇宙関連企業の受注残は堅調で、底堅い需要が見込まれます。各社は2025年に向けて生産を拡大すると予想されます。
  • 航空宇宙・防衛の両セクターは、パンデミック後の旅行者の増加や地政学的緊張の高まりに起因する政府および民間支出の増加から恩恵を受けると見られ、それが2025年のM&A活動の原動力になるでしょう。2024年4月にArcline Investment Management LPが航空宇宙部品メーカーのKaman Corporationを18億米ドルで買収するなどの動きがあり、航空宇宙・防衛市場におけるPEのバイアウトや投資は継続すると予想されます。
  • ディールメーカーが最近の世界的な選挙結果や関税を考慮した政策の方向性に強い関心を示す中、自動車業界のM&Aディールは2025年に活発化すると予想されます。マクロ経済動向の改善にもかかわらず、自動車ビジネスは過剰生産能力、マージンの圧縮、消費者需要の低下といった課題に直面しており、これがM&A活動を活性化させる要因となっています。米国では、内燃機関(ICE)アセットに対する需要は依然として強く、ハイブリッド車や電気自動車の普及が欧州やアジア市場よりも遅れています。
  • ディール活動の成長ドライバーの1つは、事業売却による事業の適正化です。OEMとそのサプライヤーは、現在の生産能力を見直し、将来の需要予測に合わせてニーズと過剰生産能力を調整します。企業はマージンを維持するためにアセットの売却や戦略的買収を行います。メーカーは利益率を最大化すべく、事業売却や収益性の低い地域での事業閉鎖を通じて、世界的な事業拠点の縮小を検討しています。例えば、2024年12月、General Motorsは、中国のジョイントベンチャーが市場の課題と競争状況に対処するため、工場閉鎖やポートフォリオの最適化を含むリストラクチャリングを実施する予定であると発表しました。
  • 車両メーカーは、車両モデルのライフサイクルが終わりに近づくにつれて、規模の経済が縮小していることを実感しています。その結果、競争力を維持するためには、ICEアセットの刷新や、新しいハイブリッドまたはEVアセットを導入するための投資が必要となっています。自動車メーカーは、デジタル面での進展、ソフトウェアの革新、電動化テクノロジーの開発を優先することで、競争力を強化することが求められます。これらの戦略的重点分野は、買収やディールを促進する要因となります。なぜなら、買収戦略の方が構築戦略よりも市場投入までの時間が短縮されるからです。
  • サプライヤーによる再編や撤退の動き、規模を活用したロールアップ戦略を模索するPEファンドからの投資もディールの促進要因となっています。サプライヤーは、主に買収による規模拡大、あるいは規模拡大が不可能な場合は事業部門の撤退によって、厳しいマージンを改善しようとしています。OEMもサプライチェーンのリスクとコストを管理するため、サプライヤーの再編を検討しています。例えば、2024年12月、イタリアの自動車部品サプライヤーであるProma Groupは、ドイツのRecaro Automotive Germanyのアセットを買収し、自動車分野におけるRecaroブランドの使用に関するライセンス契約を締結しました。
  • 戦略的提携、特にバッテリー製造やギガファクトリーなどの分野での提携は、2025年も引き続き重要視されるでしょう。買い手候補は戦略的アプローチを採用し、シナジー効果の活用を模索しています。例えば、2024年11月、VolkswagenとRivianは、両社の将来のEVのためのソフトウェアと次世代電気アーキテクチャの開発に注力するため、取引総額最大58億米ドルの合弁事業を発表しました。この合弁事業を通じて、両社は開発コストを削減し、新技術の迅速な拡大を目指しています。
  • ICEやEVの導入に関する消費者心理に市場が適応する中で、自動車関連のディール件数は全体的に増加すると予想されます。この適応策には、開発および製造におけるパートナーシップの活用、ディストレストアセットの売却、グローバルな事業展開の改善などが含まれます。自動車セクターの継続的な進化は、戦略的プランニングと新たなトレンドや市場環境への適応力の重要性を浮き彫りにしています。戦略的な買収を活用し、ノンコア事業を売却する企業は、この厳しい市場で競争力を維持するために有利なポジションを確保することができるでしょう。
  • 気候変動やテクノロジーから地政学に至るまで、現在の不安定で複雑なビジネス環境を乗り切るための支援を提供するスペシャリストへの需要に対応して、ビジネスサービスのディールは2025年に活発になると予想されています。事業展開が世界的に拡大するにつれ、企業は現地のビジネス環境を理解し、コンプライアンス要件を満たすために、こうした専門サービス会社を活用するようになります。スペシャリストやコンサルタントに加え、投資家の関心が高い分野は以下の通りです。
    • 安定したキャッシュフローを生み出すニッチな知識サービス企業
    • 再編の機が熟していると思われる高度に断片化された事業環境で事業を展開しており、市場成長が期待される試験・検査・認証企業
    • サイバーセキュリティからサポートサービスまで、長期的な顧客のリテンションに貢献できるマネージドサービス企業
  • PEファームは、成長が見通されているビジネスサービスセクターにおいてM&A活動を推進する上で、重要な役割を果たすでしょう。PEファンドが特に関心を寄せているのは、IT、会計、法務、行政サービスなどのプロフェッショナルサービスファームへの投資です。このセクターのアセット争奪戦は激化しており、複数のPEファンドがこのサブセクターに積極的に参入しています。PEファンドは、中小規模のファームを追加で買収または合併することで、より大きなプラットフォームを構築し、テクノロジー導入やコンプライアンス、トレーニングコストなどの分野でスケールメリットを実現することができます。また、規模の拡大は新たな市場へのアクセスを可能にし、成長の加速につながります。プロフェッショナルサービスファームへのPE投資の例としては、New Mountain CapitalによるGrant Thorntonの米国事業の株式取得(2024年5月)、Hellman & FriedmanとValeas Capital PartnersによるBaker Tilly USへの戦略的投資(2024年6月)などがあります。英国では、この傾向は以前から続いています。2024年11月にはCinvenがGrant Thornton UKの過半数の持分を取得すると発表し、2024年12月にはLee Equityが英国を拠点とする会計・ビジネスアドバイザリーサービス会社であるCooper Parryとの資本提携を公表しました。これらの最近の取引は、PEがプロフェッショナルサービス領域の投資対象に関心を持ち続けていることを反映しています。また、市場には長期的な視点での投資機会を求める大規模なプレーヤーや、新たな機能の獲得や再編を目的として新興企業を買収するプレーヤーもいます。
  • サイバーセキュリティやマネージドサービスプロバイダーを含むITサービスは、その高い成長性からここ数年注目を集めています。パンデミックの最中、多くの企業がクラウドサービス、サイバーセキュリティ、デジタルトランスフォーメーションといったITの進歩に投資し、効率性を高め、新しい働き方に適応しようとしました。導入段階では、これらの投資は多額になり、収益性が低下する傾向があります。しかし、導入後は収益性の改善に寄与し始めており、成長が見込まれることから、投資家はその安定的かつ継続的な収益源、確立された顧客網、ビジネス拡大の可能性に注目します。
  • AIの台頭、データ処理プロセスの統合、膨大なデータの利用可能性は、ビジネスサービスセクターを前進させるトレンドの1つです。プロフェッショナルサービス企業は、価値のあるデータを複製不可能な独自のアウトプットに変換する能力を高めるために従業員のスキルアップに注力しており、潜在的な買い手にとってより魅力的なビジネスとなっています。データ分析やデータ変革のツールは各企業の独自のニーズに対応するために必要なものであることから、テクノロジーとAIはコンサルティングにおいて重要な役割を担っています。
  • 人材紹介会社や人材派遣会社を含むヒューマンキャピタルマネジメントのサブセクターは、採用動向の鈍化により需要が減少しました。業務処理アウトソーシング会社も需要が減少しています。英国では、政府が新年度予算のコスト削減策の一環としてアウトソーシングサービスを大幅に縮小しました。米国では、新政権が政府支出の削減に力を入れていることから、アウトソーシング需要の減少が予想されています。多くの地域では、人材紹介会社やアウトソーシングに対する需要の減少が見込まれますが、現在の従業員のスキルアップやスキル不足を克服するための研修サービスへ継続的に関心が移行していくことによって、その影響は相殺される可能性があります。
  • ビジネスサービスのディールは、進化するビジネス環境やコンプライアンス要件に対応するために必要とされる独自のサービスを提供する中堅企業に牽引され、全体として短期的にも中期的にも増加する傾向にあると思われます。また、スケーラビリティを求める企業やロールアップ戦略を取る企業による投資機会の増加もこの傾向の要因の1つとなっています。
  • E&Cセクターのディールは2025年に拡大する見込みです。企業は資本をどこに配分するかを、多くの国で選挙が実施された後、特に予想される規制政策や公共投資、また全体的な事業環境を考慮して判断するため、ディールの取引量は選挙結果等の影響を受けそうです。2024年の金利引き下げによる影響は、特に住宅不動産建設分野での投資に拍車をかける可能性があります。非住宅建築は教育や医療といったニッチ市場を中心に成長・発展します。エネルギートランジション、送電網の近代化、電力インフラ、廃水処理は、業界で引き続き注目される分野です。インフレ圧力などのマクロ的影響が緩和され続ける中、2025年はE&Cセクターのプレーヤーにとって、買収や売却を通じて価値を創造する好機となるでしょう。
  • 商業建設・非住宅建設は、プロジェクトの停滞、利益率の圧迫、リファイナンスの期限切れ、債務不履行の潜在的リスクなど、厳しい市場に直面し続けています。オフィス分野では、パンデミック以降の労働トレンドの変化が、市場に過剰なキャパシティを生み出しています。新しいオフィスビルはテナント誘致に成功していますが、古いビルのオーナーは、入居のためにスペースの改修や更新を行ったり、代替用途(ヘルスケア関連など)に転換したりする必要性を感じています。データセンター建設は、関連するエネルギーインフラや支援サービスを含め、この困難なサブセクターの中で依然として明るい話題の1つです。安定したキャッシュフロー、ロールアップ戦略の可能性、今後の成長軌道を背景に、データセンターのエネルギートランジション、バッテリー、サポートサービスへの投資は増加の一途をたどっています。
  • 住宅不動産建設は引き続き堅調で、住宅供給が限られていることから2025年も成長が続くと予想されています。米国とその貿易相手国との間で新たな関税が導入される可能性があるため、インフレ圧力がさらに高まり、コストが上昇する可能性があります。多世帯住宅は、ここ数年のインフレを受け、より手頃な価格の住宅を求める潜在的な住宅購入者からの需要が高まっているため、投資が集まっています。2024年には、特に供給側で業界の再編が進みました。例えば、2024年3月にはMITER Brandsが窓・ドアメーカーのPGT Innovationsを31億米ドルで買収し、2024年6月にはHome Depotが住宅専門商社であるSRS Distributionを183億米ドルで買収しました。2025年には、コスト上昇に対応するために企業が購買力を強化しようとすることから、ディールが活発化すると予想されます。
  • エンジニアリングサービス企業は、ディール活動のトレンドの中で見通しの明るい領域です。経常的なキャッシュフローとロールアップ戦略の機会を持つこれらの企業は、PEだけでなく、再編に関連する事業会社からの投資も呼び込むと予想されます。特にエンジニアリングや開発のような労働集約的なセクターでは、重要な労働スキルをめぐる競争に対応するため、企業は「アクイハイヤー(買収と雇用)」ディールを行う可能性があります。
  • E&C企業は、生産性の向上、顧客体験の改善、業務の合理化のためにAIやデジタルテクノロジーを導入しています。AIを活用して徐々に、あるいは変革的に業務改善を実現する企業は、このセクターをリードすると予想されます。企業は買収を通じたデジタルスキルの獲得を求めており、AIを活用してプロジェクト管理を強化し、リソース配分を最適化し、安全基準を向上させることで、競争優位性を高め、資本配分をサポートしています。
  • ディールメーカーは、新たな機会を活用し、今後の課題を乗り切るために、アジリティと戦略的な集中を維持する必要があります。E&C企業は、初期設計の自動化や製品開発における競争上の優位性を確保するためにAIをいち早く導入するなど、技術革新を続けています。エンジニアリングサービス、インテリジェントトランスポーテーション、電力・情報通信など、インフラへのエクスポージャーが高い企業は、このような環境下でも魅力的なアセットであり続けます。
  • 産業機械セクターのM&A活動は、比較的安定した基盤から、短期的、中期的に成長すると予想されます。税率、インフレ、金利に関連する継続的な不確実性が市場の動向に影響を及ぼす一方で、ディール活動は、企業が事業を合理化し、コアビジネスに集中するために、主に企業のスピンオフやノンコア事業の売却によって牽引されると予想されます。
  • 製造プロセスにおける継続的な革新は、M&A活動を推進する上で極めて重要な役割を果たし続けています。メーカー各社は、提供する製品と社内オペレーションの両方を刷新するために投資を続けています。特にAI、機械学習、予測ロボット工学、スマートファクトリーなどのテクノロジーの進歩は、産業機械セクターの業務効率を一貫して高めており、企業がこれらの機能の獲得を目指す中で、M&A活動の原動力となるでしょう。例えば、Siemensは2024年10月、産業用ソフトウェアにおけるリーダーシップを構築するため、産業用シミュレーションおよび分析市場のソフトウェアプロバイダーであるAltair Engineeringを106億米ドルで買収する案を発表しました。
  • 企業は、ポートフォリオを重要な事業に集中させる目的で、売却すべきノンコアアセットを積極的に特定しています。これにより、カーブアウトによる売却やディストレストアセットのリストラクチャリングが増加し、2025年のM&A活動が活発化すると予想されます。例えば、Johnson Controlsは2024年7月、ポートフォリオを簡素化し、中核事業への戦略的集中を強化するため、住宅および軽商用HVAC(空調)事業を売却する最終契約を締結したと発表しました。企業が市場での競争力を維持しようと努める中、ポートフォリオ、サプライチェーン、世界的な事業展開の戦略的見直しが大きな焦点となります。こうしたディールの規模は、ミッドマーケット向けの小規模なものから大規模なものまでさまざまで、買い手となる可能性のある企業は、戦略的投資を検討している企業体からPEファームまで多岐にわたると予想されます。
  • サステナビリティへの取り組みは、製造部門にとって引き続き重要です。サプライチェーンのリスクとマージンを管理するため、企業は、金属に依存した製造プロセスから、バイオポリマー、再生ナイロン、繊維ベースの包装材など、より持続可能な素材を使用した製造プロセスへのトランスフォーメーションへの関心を高めています。企業は積極的に実務を高度化し、これらの戦略を投資アプローチに組み込み、価値創造を強化しうるツールとして活用しています。
  • 全体として、ディストレストアセットの売却や企業のカーブアウトを含むポートフォリオの絞り込みに重点を置くことで、2025年の産業機械セクターのディール活動は活発化すると予想されます。法人税や政府の規制および政策など、重要な重点分野に関する確実性が高まることで、経営陣やディールメーカーの自信が向上し、M&A活動の活発化につながるでしょう。

M&A動向の解説は、業界で認知された情報源からのデータと当社独自の調査に基づいています。具体的には、本文で言及している金額と件数は、2024年12月31日時点でロンドン証券取引所グループ(LSEG)が提供し、2025年1月6日から9日の間にアクセスした、正式に発表されたディールに基づいています(噂や取り下げられた取引を除く)。本データは、S&P Capital IQおよび当社独自の調査による追加情報によって補完されています。PwCの業界マッピングと整合させるため、ソース情報に一定の調整が加えられています。メガディールは50億米ドル以上のディールと定義しています。

Michelle Ritchie
PwC米国、パートナー、グローバル産業・サービス分野ディールズ共同リーダー

Nathan Whitley
PwC米国、ディレクター

※本コンテンツは、PwC米国が2025年1月に公開した「Global M&A trends in industrials and services: 2025 outlook」を翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。

各国・地域別の産業・サービス分野のM&A動向については、下のボックスから選択してご覧ください。

{{filterContent.facetedTitle}}

{{contentList.dataService.numberHits}} {{contentList.dataService.numberHits == 1 ? 'result' : 'results'}}
{{contentList.loadingText}}

本ページに関するお問い合わせ