2025年の見通し

テクノロジー・メディア・情報通信における世界のM&A動向

Global M&A Industry Trends in Technology, Media & Telecommunications hero image
  • 2025-03-10

AIブーム、テクノロジーとビジネスモデルの継続的なディスラプションに伴い、テクノロジー・メディア・情報通信(TMT)分野のM&Aは2025年も活発に行われる見込みです。

ディールメーカーは2025年のTMTセクターにおけるM&Aの機会について、楽観的な見通しを持っています。TMTセクターはAIブームの中心にあるため、ディールへの道が開くとともに、TMT企業がエネルギーや不動産に投資するという設備投資の「スーパーサイクル」が始動しています。同時に、高インフレ、資本コストの上昇、地政学的緊張、規制上の課題など、過去2年間ディールを遅らせてきた逆風が、米国を中心に緩和され、ディールを生じさせやすい環境が整いつつあります。

2024年の世界のTMTセクターにおけるディール件数は2023年を27%下回りましたが、2024年初頭には、特にテクノロジーセクターで複数の大型ディールが公表され、ディール金額の回復が見られており、この勢いは今後も続くと予想されます。米国の新政権が規制緩和を進めることでTMTセクターにおけるメガディール(50億米ドル以上のディール)が活発化し、各国の中央銀行による利下げと相まって経営者をM&Aへと後押しするでしょう。このようなマクロ要因に加え、セクターを越えたAIの普及、新旧メディアの競合、通信業界における継続的な移行と組織のフラット化によって、2025年のM&A件数と金額は増加する可能性があります。

76%

の過去3年間に大規模な買収を行ったTMTセクターのCEOが、今後3年間に1件以上の買収を計画している。

出典:PwC第28回世界CEO意識調査(2025年1月)

ディール件数は減少、ディール金額は増加

テクノロジーセクターは引き続きTMTセクターの大部分を占めており、これは2025年も続くと予想されます。2024年には、テクノロジーセクターのディール件数はTMTセクターの83%、ディール金額はTMTセクターの75%を占めました。2024年におけるテクノロジーセクターのディール件数は前年比29%減少したものの、ディール金額は33%増加し、ディールは大型化の傾向にあります。こうした増加は、2024年のテクノロジーセクターにおけるディール金額の65%を占めたソフトウェアセクターによって推進されました。

ソフトウェアセクターのディール件数は33%減少する一方、ディール金額は2023年の2,290億米ドルから2024年には3,160億米ドルへと38%増加しました。ディール件数が減少する一方で、金利の引き下げ、AIの影響、株式市場の回復を反映し、ソフトウェア企業は昨年と比較して高いバリュエーションで買収されています。

「AI関連設備投資の『スーパーサイクル』は、多くの資本源に新たな投資機会をもたらすでしょう。株式市場とバリュエーションが回復し、プライベート・エクイティによるエグジット案件が大幅に積み上がっていることと相まって、2025年のTMTセクターにおけるM&Aが促進されるでしょう」

Barry Jaber、PwC英国 グローバルテクノロジー&テレコミュニケーションディールズリーダー、Strategy&パートナー

サブセクターの動向は以下の各セクションをご覧ください。

スポットライト:AIが引き起こす設備投資の「スーパーサイクル」

AIに対する世界的な関心の高まりは、設備投資の急増につながり、他の資本配分に影響を与える可能性があります。しかし、このシフトによって、バリューチェーンの下流においては戦略的買収を通じて市場シェアと価値を獲得する機会が増加しています。

AIへの投資

AIは、特にテクノロジーが進んでいる国々で、企業やプライベート・キャピタルからの投資を集めています。とりわけ米国は、国内の大手テック企業だけでなく海外の投資家からも大きな投資を集めています。2025年1月、トランプ大統領はOpenAI、Oracle、SoftBankの3社による5,000億米ドル規模のジョイントベンチャーを発表しました。このジョイントベンチャーは、米国でAI開発を支えるデータセンターネットワークを構築することを目指しています。

企業は、現在の製品やサービスを強化し、成長に向けたポジションを確立するために、データ分析、オートメーション、言語処理、生成AIなど、より成長性の高い市場セグメントへの投資を選択しています。2024年のメガディールのいくつかは、この傾向を象徴するものです。例えば、Ciscoによる280億米ドルでのSplunk買収や、HPEによる140億米ドルでのJuniper Networks買収は、AIネットワーキング機能を強化したいという強い意向が一因となっています。同様に、Thomson ReutersのMateria買収について、Thomson Reuters最高製品責任者のDavid Wongは、「当社の顧客である各専門家に生成AIアシスタントを提供することで、業務を変革し、顧客体験全体を統一する」計画の一環であると説明しています。

中国企業DeepSeekは、これまで多くの人が考えていたよりも大幅に少ない投資で、高機能な大規模言語モデル(LLM)を開発できることを示しました。このことは、AIインフラへの中期的な設備投資に影響を与える可能性がありますが、AIの需要が伸び続ける中、今後数カ月間の投資が減少する可能性は低いでしょう。また、LLMにはさらなるイノベーションの余地が大きくあり、研究者が新たな領域に挑み続ける中で、新しいモデルアーキテクチャは依然として大量のリソースを必要とする可能性があります。

データセンターへの注力

大手ハイテク企業による大規模な設備投資は、バリューチェーンに波及効果をもたらし、特にデータセンターとそれを支えるエネルギーソリューションやインフラ周辺に活発なM&Aの機会を生み出しています。

AI分野で最も魅力的なアセットの中には、プライベート・エクイティ(PE)投資をすでに確保しているものもあります。例えば、AIによるITインフラへの需要増加に適しているとされるハイパースケール・データセンター・キャンパスの世界的プロバイダーVantage Data Centersに対して、DigitalBridgeとSilver Lakeが92億米ドルのエクイティ投資を行ったことが挙げられます。

Gartnerによると、ビッグデータ分析、IoT、生成AIの普及により、データセンターの容量は5年間の年平均成長率(CAGR)28.3%で拡大する見込みです。特に注目すべき例として、2024年12月に完了したBlackstoneによる160億米ドル規模のAirTrunk買収が挙げられます。このディールによりBlackstoneは、世界的なデータセンターの新設を促進すると予測されている2兆米ドルの設備投資から、利益を得ることを見込んでいます。

このようなデータセンターの構築は、エネルギー消費が大きいため、エネルギーと資源の管理の両面で大きな課題をもたらします。このため、クリーンでカーボンフリーのエネルギーを高いエネルギー密度で提供する原子力など、革新的なエネルギーソリューションへの関心が高まっています。GoogleによるKairos Powerとの小型モジュール式原子炉のディールや、AmazonによるTalenの原子力データセンターキャンパスの6億5,000万米ドルでの買収など、最近の取引は、持続可能なエネルギーソリューションのデータセンター運営への統合に戦略的重点が置かれていることを裏付けており、2025年を通じてディールの原動力になると予想されます。AIによるトランスフォーメーションの可能性に対する市場の信頼を背景に、財務基盤の強い企業が本来ならばM&Aに使われるはずだった資本をAI関連の設備投資に振り向け続けるため、TMTセクターにおける一部のM&Aが鈍化する可能性があります。とはいえ、一般的に企業のM&Aを後押しする規制緩和など、他の要因がM&Aへの影響を緩和するものと見られます。

2025年にM&Aを促進する主なテーマ

大手ハイテク企業の設備投資ニーズ

2024年、Amazon、Meta、Googleなどの大手テクノロジー企業は、前述のようにAIへの注力により、設備投資を大幅に拡大しました。例えば、Microsoftは2024年第3四半期の決算発表で、設備投資額が前年同期比79%増の140億米ドルに達したと発表しています。同様に、Metaも2024年第3四半期の決算発表で、設備投資が前年同期比36%増となったと発表しています。こうした多額の投資にもかかわらず、サプライチェーンの制約がAIデータセンターの容量拡張を制限しているため、2025年も大規模な設備投資が続くと予想されます。

こうした投資の増加は、伝統的に利益率の高いビジネスに対する長期的な影響について重大な疑問を提起しています。ソフトウェア企業は現在、急成長するAI需要に対応するために多額の設備投資が必要とされる状況に直面しています。この傾向が定着するにつれて、高収益で資本集約度の低いソフトウェア企業の従来のビジネスモデルは変化する可能性があります。

地政学的変化がM&Aを活性化させる可能性

米国のトランプ新政権下で、TMTセクターのM&Aにおける規制環境が大きく変化し始めるでしょう。トランプ氏は規制環境を一新しうる政策を掲げており、米連邦通信委員会(FCC)と米連邦取引委員会(FTC)の新委員長の任命により、新たな政策が導入され、前政権の既存政策の一部が覆されることが見込まれます。例えば、FCCはテクノロジー分野の規制を緩和し、FTCは反トラスト法執行に関してより緩やかな姿勢をとる可能性があります。また、関税やその他の貿易規制が課される可能性もあります。これらは米国の政策措置ですが、いずれも世界経済に影響を与えうるものです。M&Aは規制緩和によって促進される可能性が高いですが、米国内外の規制状況は複雑なため、M&A動向への影響は地域やセクターによって異なるでしょう。

「世界のエンタテイメント・メディアのM&Aは、潜在的な需要と予想される規制緩和のおかげで、2025年に変革を迎える準備が整っています」

Bart Spiegel、PwC米国パートナー、グローバルエンタテイメント&メディアディールズリーダー

金利の緩和

高金利の長期化により資本コストが大幅に上昇しM&Aにも悪影響が及んでいた市場が、ようやく落ち着きを取り戻しつつあります。米国連邦準備制度理事会(FRB)は、欧州中央銀行やイングランド銀行と同様に、2025年も緩やかな利下げを続けると予想されています。低コストの資本へのアクセスが増加するにつれて、PEがTMTセクターにおけるディールに占める割合が高まり、2023年から2024年にかけて事業会社によるディールが増えていた傾向を逆転させると予想されます。2024年後半に発表されたTMTセクターにおけるメガディールには、前述のBlackstoneによる160億米ドルのAirTrunk買収、BlackstoneとPermiraによる130億米ドルのAdevinta買収提案、BlackstoneとVistaによる84億米ドルのSmartsheet買収提案など、PE投資復活の兆しを示しています。

TMTセクターは、今後見込まれる金利引き下げによって他のセクターよりも割合として多くの利益を得ることができる立場にあります。TMTセクターの企業のバリュエーションは、パンデミック期に高成長と低金利への期待から急騰しました。現在、ナスダックがTMTセクターのMega Capの企業の業績に大きく後押しされて史上最高値を更新していることからも分かるように、米国株式市場の堅調さは、このセクターの回復を示しています。さらに、パンデミック時に高いバリュエーションでPEに買収されたアセットも、金利が低下するにつれて、より魅力的なバリュエーションでのイグジットが実現する可能性があります。

テクノロジー・メディア・情報通信の世界のM&A動向

AIの波に乗る半導体

半導体セクターはAI急増の恩恵を最も受けている業界です。消費者向けチャットボットやB2BソフトウェアにAI機能を追加するアップグレードの急増を支えているのは、それらを動かすチップです。このため、並列処理機能を持つグラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPU)などの特殊半導体への需要が高まっています。

各社がこの新時代に向けて事業を最適化しようとしているため、半導体バリューチェーン全体で投資が継続すると予想されます。例えば、Intelは最近、ファウンドリー事業を独立子会社として分離する計画を発表し、同時にAmazon向けにAIチップを製造する契約を結びました。2024年11月、米国のバイデン・ハリス政権は、半導体製造とテクノロジーにおける米国のリーダーシップを拡大することを目指すIntelの1,000億米ドルの投資計画を支援するため、同社への79億米ドルの直接的な資金提供を最終決定しました。2022年に署名された米国CHIPS法により、多くの半導体企業が今後数年にわたって連邦政府の補助金を受け続けることになり、成長するAI市場を活用できる米国半導体産業の位置づけがさらに強化されます。さらに、AMDは49億米ドルでのZT Systemsの買収提案により、エンジニアリングとIP機能を強化し、NVIDIAが大きな成功を収めているAIデータセンター分野での競争に勝つことを目指してます。

PEと事業会社のディールが混在していることは、PEがAIブームに確信を持行っていることを示しており、多くのPEがその可能性に賭けています。2024年の半導体のディール件数は事業会社の買手に7%シフトしましたが、ディール金額はPEの買手に14%シフトしました。つまり、事業会社がより多くの半導体企業を買収する一方で、PEのディールはより高額になっています。私たちは、AIブームの恩恵を受ける上流企業への投資を含め、この分野へのPEによる投資の増加が2025年まで続くと予想しています。

ますます魅力的になるITサービス企業

AIブームや、コンピューティングとストレージ機能の強化に対するニーズを背景に、ITサービスセクターにおける大規模なディールのトレンドが形成されつつあります。ITサービスセクターの最近のディールには、BlackstoneによるAirTrunkの買収、X.AIによる60億米ドルのエクイティファイナンス、EQTによるグローバルデジタルコンサルタントおよびITソリューションプロバイダーPerficientの30億米ドルでの買収などがあります。

テクノロジーセクターのディールにおいて、ITサービスセクターの占める割合が増加しています。2024年、テクノロジー業界におけるディール金額に占めるITサービスセクターのシェアは14%から18%に増加し、ディール金額は19%から20%に増加しました。ITサービスセクターの平均ディールサイズはソフトウェアセクターよりも高い傾向にあり(2024年はITサービスが1億4,600万米ドル、ソフトウェアが1億500万米ドル)、メガディールの増加は2025年にITサービスセクターがディールメーカーにとってより重要となる可能性を示唆しています。ITサービスセクターのディール件数がソフトウェアセクターのディール件数をすぐに追い越すことはないものの、ITサービスセクターのディール活動は2025年を通して活発化する機会があると考えられます。

ソフトウェアが引き続き首位

クラウドコンピューティング、AI、サイバーセキュリティなどの主要テクノロジーは、ソフトウェアセクターのM&A活動に大きく貢献しています。2024年には、ソフトウェアセクターのディール金額はテクノロジーセクターのディール金額の65%、TMTセクターのディール金額の48%を占めました。ソフトウェアセクターのディール金額は2023年から2024年の間に38%増加し、いくつかの大規模なディールによって後押しされました。ソフトウェアセクターのパフォーマンスを整理すると、ディール金額は2023年から2024年にかけて870億米ドル増加し、他のテクノロジー業界におけるサブセクターの成長率を約150%上回りました。ソフトウェアセクターのディールは、2024年のTMTセクターのディール上位10件の半分を占めています。

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出典:LSEGとPwCの分析

2023年から2024年にかけてソフトウェアセクターのディール金額は増加しているものの、ディール件数は依然として減少しており、これは主にマクロ経済、地政学、規制の逆風によるものです。しかし、ディール件数が減少している市場においてディール金額が増加していることは、より大規模で戦略的なディールやプラットフォームディールへの移行を示しており、この傾向は2025年も続くと予想されます。

新興メディアが従来のメディアに取って代わる

最近の米国選挙は、世界のメディア業界における新たなトレンドを浮き彫りにしました。新興メディアは、コンテンツが事前に決められたスケジュールに従って配信される従来のリニアメディアモデルにとって強力な競争相手となっています。ポッドキャストやYouTubeのような新しいメディアチャンネルや、InstagramやTikTokのようなソーシャルメディアプラットフォーム上のユーザー生成コンテンツは、ここ数年で視聴者数が大幅に増加し、放送やケーブルニュースのような従来のチャンネルに匹敵するか、それを上回ることさえあります。この変化は、ポッドキャストやソーシャルメディアが現在、多くの視聴者にリーチするための強力な手段として重要であることからも明らかであり、この移行がすでにかなり進行している可能性を示唆しています。

例えば、米国のポッドキャスター、ジョー・ローガンが2024年10月、米国選挙前に行ったドナルド・トランプのインタビューは、最初の24時間でYouTubeだけで約2,600万ビューを獲得しました。同月、ケーブルTVチャンネルCNNが行ったカマラ・ハリスのタウンホールでの初回視聴者数は330万人でした。この対照的な結果からは新興メディアの台頭に関する貴重な洞察が得られ、従来のメディア企業の多くが自社の戦略、影響力、消費者へのアクセスの再評価を余儀なくされるでしょう。

変革的M&Aは、企業が現在のポートフォリオを評価し、将来の戦略にそぐわないノンコアアセットの売却を検討する際の有力な選択肢と考えられています。例えば、フランスのマスメディア持株会社であるVivendiが2024年12月に、広告会社のHavas、出版会社のLouis Hachette、有料テレビおよび映画会社のCanal+を個別に上場させましたが、これはVivendiが資本を調達し、負債を減らして中核事業に集中する一方、個別に上場した事業に対して新たな投資家や戦略的パートナーを呼び込むことを目的としていました。さらに、Comcastは2024年11月、NBCUniversalのケーブルTVネットワークを補完的なデジタル資産ともにスピンオフする計画を発表しました。

視聴パターンが変化し、新しいテクノロジーが登場するにつれ、コンテンツのリーチと消費者のエンゲージメントを理解することがこれまで以上に重要になっています。SpotifyがJoe Roganと2億5,000万米ドルで契約したり、AmazonがYouTubeで話題のMr. Beastを1億米ドルで獲得したりといった動きは、新しいメディアコンテンツの価値が高まっていることを示しています。新しいテクノロジーが消費者のコンテンツへの関わり方を変える中、これらの新興メディアにうまく戦略を適応させた企業は、決定的な競争上の優位性を得ることができるでしょう。

体験型ライブエンターテイメント

パンデミックから抜け出すにつれて人口動態が変化し、消費者はライブコンサートやスポーツイベントからコンテンツに特化した没入型イベントまで、没入体験型エンターテインメントを好むようになりました。このような顧客行動の変化は、特に確立された知的財産(IP)の収益化を中心に、将来の収益機会を生み出します。さらに、イベント参加者はソーシャルメディアで体験を共有することを好むため、ライブエンターテインメントは無償のマーケティングの機会にもなります。

このような消費者行動の変化は、世界的に、またこの業界全体で起こっています。例えばNetflixは、ニューヨークのタイムズスクエアでドラマのシーンを60分間体験できる「The Squid Games Experience」を通じて、IPを積極的に収益化しています。2025年には、同社はダラスとペンシルバニアに2つの常設没入型体験施設(ライブイベント、ギフトショップ、レストランを併設)をオープンする予定です。NBCUniversalは、Hollywood Horror Nightsをロサンゼルス、シンガポール、東京など世界各地にオープンしました。ビデオゲームでは、任天堂が京都にオープンしたインタラクティブミュージアムが大人気で、チケットは抽選制となっています。これらの例は、既存のIPを活用し、年間を通じた収益機会を促進するために新しいメディアに資本を配分する方法を示しており、2025年にはさらに多くの動きが促進される可能性があります。

スポーツにおいては、タイガー・ウッズとローリー・マキロイが創設した新しいゴルフリーグであるTGLが、シミュレーションゴルフをライブのスポーツイベントとして普及させるため、SoFiなどのスタジアムで3対3のトーナメントを開催するようになりました。これは、世界中の視聴者が旧態依然としたテレビ放送からより没入的で魅力的な体験へとシフトしていることを示しています。業界全体で、さまざまな方法や斬新なディールストラクチャーを通じて、ライブ体験型エンターテインメントに資本が流入することが予想されます。

ポートフォリオの最適化により安定したディールフローが継続

ポートフォリオの最適化は、情報通信セクター全体で引き続き重要なテーマです。情報通信事業者は、自社のポートフォリオの価値を継続的に分析しており、その多くは、過去のマルチトーン統合モデルから「ピュアトーン」通信モデルへと移行しています。これは、市場シェアを拡大する機会を特定したり、将来の成長資金を確保するために収益性の低い要素を階層化して切り離したりすることを意味します。

欧州ではポートフォリオの最適化に関連した動きが継続しており、大手多国籍企業がアセットを統合しています。例えば、195億米ドルを投じたVodafoneとThreeの合併などがその一例です。さらに、ポートフォリオの最適化は衛星とデータセンターのサブセクターで顕著で、ディール活動が活発化しており、2025年にはさらに成長する可能性があります。タイにおけるGulf Energy Development、Intouch Holdings PCL、Singtel Strategic Investmentsによる67億米ドルの合併とリストラクチャリングが、アジア太平洋地域でのディール金額の増加につながりました。このディールは、より広範なディール金額の増加とともに、アジア太平洋とグローバル双方において、今後の通信業界におけるディールフローの回復とディール金額の増加を示唆していると言えます。

ディールメーカーは衛星セクターを周回

2024年には衛星セクターにおける近年最大のディール(SESとIntelsatの31億米ドル規模の合併)が発表され、地政学的環境はこのセクターにさらなる追い風をもたらす様相にあります。トランプ大統領はイーロン・マスクと親密な関係にあり、彼が任命したFCC委員長のブレンダン・カーは衛星構想を支持し、これまで情報通信規制に反対票を投じてきました。これはマスク氏のSpaceXにとって強力な組み合わせとなる可能性があり、取引に有利な環境を作り出し、民間衛星分野の再編を促すかもしれません。さらに、DishとDirecTVの97.5億米ドルの合併計画は最終的に中止されたものの、業界再編への意欲があることを示しています。

テクノロジー・メディア・情報通信における2025年のM&Aの見通し

規制のハードルや高金利がディールの足かせとなっていた市場の変化、記録的なドライパウダーやPEのバックログ、AIに牽引される大きなイノベーションが、TMTセクターにおける2025年のM&A活動を後押しするでしょう。

M&A動向の解説は、業界で認知された情報源からのデータと当社独自の調査に基づいています。具体的には、本文で言及している金額と件数は、2024年12月31日時点でロンドン証券取引所グループ(LSEG)が提供し、2025年1月6日から9日の間にアクセスした、正式に発表されたディールに基づいています(噂や取り下げられた取引を除く)。本データは、S&P Capital IQおよび当社独自の調査による追加情報によって補完されています。PwCの業界マッピングに合わせるため、ソース情報に一定の調整が加えられています。

メガディールは50億米ドル以上のディールと定義しています。平均ディールサイズは、ディール総額を金額が公開されているディール件数で割ることで算出しています。金額が公開されていないディールは計算から除外し、金額が判明しているディールのみを使用しています。

Barry Jaber
PwC英国、グローバルテクノロジー&テレコミュニケーションディールズリーダー、Strategy&パートナー

Bart Spiegel
PwC米国、パートナー、グローバルエンタテイメント&メディアディールズリーダー

※本コンテンツは、PwC米国が2025年1月に公開した「Global M&A trends in technology, media and telecommunications: 2025 outlook」を翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。

各国・地域別のテクノロジー・メディア・情報通信業界のM&A動向については、下のボックスから選択してご覧ください。

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