2025年の見通し

エネルギー・ユーティリティ・資源分野における世界のM&A動向

Global M&A Trends in Energy, Utilities & Resources hero image
  • 2025-03-10

2025年のエネルギー・ユーティリティ・資源分野におけるM&Aは、地政学、エネルギー安全保障の優先順位、市場のダイナミクスによるトランスフォーメーションが進むことで活発化するでしょう。

2025年に入り、世界のエネルギー・資源・ユーティリティ(EU&R)業界では、依然としてエネルギートランジションがM&A活動の最も大きな原動力となっています。しかし、地政学、エネルギー安全保障、AIの稼働に必要なエネルギー需要の急増、その他の市場のダイナミクスなどの要因が影響するため、変化の形やペースは地域やセクターによって大きく異なるでしょう。

グローバルプレーヤーがこのような地域的なダイナミクスに対応する中で、信頼性が高く、価格が手頃で持続可能なエネルギー源を確保するための競争は激化しており、2025年にはEU&Rのあらゆる領域でM&A活動が活発化することが予想されます。

地域ごとに異なるM&Aの状況

米国では、ドナルド・トランプ氏が大統領に再選されたことで、化石燃料を優遇する政策が導入され、環境規制が一部後退する可能性もあります。このシフトにより、天然ガスインフラや火力発電施設への投資が促進される一方、再生可能エネルギーは目先の不確実性にもかかわらず、長期的な支援から引き続き恩恵を受けると予想されます。原子力発電は、廃炉になった一部の原子炉を再稼働させる計画もあり、排出ガスを出さない電力に対する需要の急増に対応するために再び検討されています。

欧州では、外部エネルギー源への依存度を低減するため、エネルギー安全保障が引き続き最重要課題となっています。欧州連合(EU)は、再生可能エネルギー、送電網の近代化、エネルギー貯蔵への注力を強めていますが、規制上の課題や高コストが取引活動を抑制する可能性もあります。

米国と同様、日本は原子力エネルギーを復活させる一方で、増大する国内エネルギー需要を満たすために重要鉱物の輸入への依存度を高めています。

中国では電気自動車の導入が加速しているため、企業がスケールメリットを必要とするにつれて、M&A活動が活発化すると予想されます。これにより、太陽光発電セクターのほか、エネルギー貯蔵や重要鉱物などの支援セクターの業界再編が進むでしょう。

中南米は再生可能エネルギー投資のホットスポットとして台頭しており、豊富な太陽光や風力資源が世界の資本を引き付けています。リチウムやその他の重要鉱物に対する関心の高まりも、チリやペルーを中心とするこの地域の鉱業セクターのM&A活動を後押しするでしょう。

アフリカにおいては、各国がエネルギーアクセスのギャップを埋めようすることで、投資家にとって大きな機会が生まれます。天然ガス、水力発電プロジェクト、分散型再生可能エネルギーへの投資は、国内市場と世界のコモディティーバイヤー双方からの需要の増加に支えられ、加速する見込みです。

インドの野心的な脱炭素化目標は、同国のエネルギー事情を大きく変えつつあります。石炭や重要鉱物への戦略的投資と並んで、再生可能エネルギーのインフラへの意欲が高まっているインドの状況は、先進国と発展途上国が同様に直面しているエネルギー安全保障とサステナビリティの微妙なバランスを浮き彫りにしています。

スポットライト:セクター間の相互依存

私たちは2024年上半期最新情報の中で「再構成の必然性」を初めて取り上げ、気候、テクノロジー、人口動態の変化といったメガトレンドがビジネスモデルのディスラプションを引き起こし、EU&RのM&A活動を世界的に促進していることを強調しました。

その核心にあるのは、企業が斬新な方法で、また業界の垣根を越えて買収、提携、パートナーシップを結ぶことによる、セクターを超えた相互依存に向けた大きな動きです。企業は市場シェアを獲得し、価値を高め、重要なサプライチェーンを確保し、技術面で自らをポジショニングするために、このような動きをしています。このような動きの重要性が高まっていることが今後のM&A戦略を形作り、特に今後の多くのトランジションで中心的な役割を果たすと見込まれるEU&Rのプレーヤーにおいては顕著に影響するでしょう。

ビジネス環境のダイナミックな変化により、新たなバリュープールが生まれつつあります。これらはもはやセクターによって定義されるものではなく、異なるセクターが結びついたテーマ別の活動領域によって推進されるものです。PwCでは、この再構築がエネルギー、モビリティ、建設、製造、食料、ヘルスケアの6つの領域で展開していると考えています。各領域において生まれつつある新たなエコシステムからは、さらなる考察が得られるほか、世界中で形成され始めている業界横断的な提携やパートナーシップの重要性も見て取れます。

「エネルギー・ユーティリティ・資源・化学セクター全体での産業の再構成の一環として、セクターを超えた大きな相互依存関係が生まれると見ています。戦略的にポジショニングを変えようとする企業の努力は、2025年、そして今後何年にもわたって、M&Aやパートナーシップ、その他の提携のきっかけを生み出すでしょう。」

Greg Oberti、PwCカナダ、パートナー、エネルギートランジション&ユーティリティ・ディールズリーダー

EU&Rの文脈でこのようなセクターを超えた相互依存の例がとりわけ見られるのが、モビリティの領域です。企業は戦略的に原材料にアクセスし、隣接する技術や専門知識を獲得し、サプライチェーンを強化し、エネルギー需要を確保するために、再構成を模索しながらM&Aに取り組むでしょう。Volkswagenが2024年12月にリチウム開発会社Patriot Batteryの9.9%を買収したように、鉱業会社は電気自動車用バッテリー生産用のリチウム供給源として自動車メーカーと提携するか、あるいはその買収ターゲットになるでしょう。重要鉱物や新興技術プラットフォームなどに関連するディールが、多極化する地政学的状況下で戦略的地位の確立を目指す企業を中心にさらに活発化すると予想されます。

また、建設や製造といった他の領域でもEU&Rが関与する例があると見ています。例えば、EU&R企業が建設会社や製造会社とつながるケースがありうるでしょう。このようなつながりはさまざまな形で展開される可能性があり、企業が規模を拡大し、収益源を拡大し、サプライチェーンを確保するために業界を超えて協力するためのパイプ役として機能します。2024年には、この傾向の継続と加速が見られました。例えば建設領域での注目すべき例として、BPが2024年6月にオーストラリアのエンジニアリング会社であるWorleyと、2024年8月には世界的なエンジニアリングコンサルティング会社であるWoodと、効率化、継続的改善、現場開発の強化を推進するためにグローバル提携を結びました。製造領域では、カナダのBruce Powerが2024年3月に、重要なサプライチェーンの安全性を高め、事業全体の効率化を推進することを企図してGE Vernova社の蒸気発電事業と提携しました。

60%

の今後3年間に買収を計画しているCEOが、ディールメーキングの資本の一部を自社以外のセクターや業界に投入することを想定している。

出典:PwC第28回世界CEO意識調査(2025年1月)

サブセクターの動向は以下の各セクションをご覧ください。

エネルギー・ユーティリティ・資源分野における2025年の主要なM&Aテーマ

EU&Rセクターは、持続可能性、信頼性、成長を同時に実現する取り組みの中心にあります。このダイナミックな環境における2025年のM&Aは、4つの主要テーマによって形作られると見ています。

エネルギー安全保障と地政学

地政学的緊張や同盟関係の変化の中で、各国が信頼性の高い多様なエネルギー供給を優先する中、エネルギー安全保障は依然としてM&Aの重要な推進力となっています。米国の新政権下では、国内のエネルギー自給を強化するために化石燃料への投資が促進されるでしょう。欧州は、特にロシアからの輸入への依存度を下げることを引き続き推進するでしょう。こうした動きは、天然ガス、原子力、重要インフラアセットにおけるクロスボーダー・ディールを促進しています。

エネルギートランジションと脱炭素化

脱炭素化への世界的なシフトは、蓄電池や重要鉱物などの分野でのM&Aに拍車をかけるでしょう。エネルギー貯蔵や電気自動車の生産に不可欠なリチウム、コバルト、ニッケルに対する需要の高まりは、特に中南米、オーストラリア、アフリカでの鉱業ディールを促進しています。再生可能エネルギー分野のM&Aも引き続き活発になると予想され、企業は再生可能エネルギーアセットを取得し、グリーン水素、電気自動車、送電網の近代化をサポートするインフラに投資するでしょう。KKRによるドイツの再生可能エネルギープラットフォームで独立系発電事業者のEncavisの買収や、Iberdrolaによる英国の配電事業者ElectricityNorthWestの買収などがその例です。

テクノロジーの進歩とデジタルインフラ

AI、クラウドコンピューティング、デジタルトランスフォーメーションの急速な普及により、エネルギー消費の多いデータセンターに対するかつてない需要が生まれています。2024年9月に発表されたBlackRock、GlobalInfrastructurePartners、Microsoftおよび中東の大手AI投資家によるデータセンターとそれを支える電力インフラへの投資を目的としたAIパートナーシップのように、こうした施設の電力供給を確保するための斬新なパートナーシップや買収が行われています。また、効率性とレジリエンスを高めるため、スマートグリッド(次世代電力網)やエネルギー管理システムへの投資も増加しています。

新たなビジネスチャンスをもたらす産業間の融合

進化するエネルギーニーズに対応するために企業がシナジーを求めるにつれて、エネルギー・ユーティリティ・資源セクター間の境界線は曖昧になり続けるでしょう。テクノロジー企業がデータセンター向けに自然エネルギーやエネルギー貯蔵に投資する一方で、従来のエネルギー企業がデジタルソリューションを獲得してオペレーションを強化する動きが見られます。同様に、産業機械メーカーはエネルギー企業と提携し、製造業の脱炭素化のために信頼できる電力を確保しようとしています。2024年10月に核融合エネルギー技術の商業化を加速させるためにドイツの企業グループが産業団体を設立するなど、このような融合は革新的パートナーシップを促進するでしょう。M&A活動は、伝統的な業界の垣根を越えて継続するでしょう。

82%

の過去3年間に大規模な買収を行ったEU&RのCEOが、今後3年間に1件以上の買収を計画している。

出典:PwC第28回世界CEO意識調査(2025年1月)

エネルギー・ユーティリティ・資源分野における世界のM&A動向

鉱業は世界中のほとんどのセクターのサプライチェーンの出発点であることから、2025年以降も活発なM&A活動が促進され続けるでしょう。最近のM&A活動は、引き続き重要鉱物、金、銅、石炭セクターにおける業界再編や戦略的な事業ポートフォリオの組み替えが中心となっています。注目すべき例として以下が挙げられます。

  • Rio Tinto Groupは、2024年10月にArcadium Lithiumを67億米ドルで買収すると発表し、リチウム市場での地位を強化しました。
  • Teck Resourcesは、2024年7月に製鉄用石炭事業の残り77%の権益を73米億ドルでGlencore plcに売却しました。
  • BHPとLundin Miningは、主要な銅プロジェクトを50/50のパートナーシップで進めるべく、2024年7月に33億米ドルでFilo Miningを共同買収すると発表しました。
  • Newmont Gold Corporationは、同社が掲げるポートフォリオ最適化戦略の一環として、ノンコア資産の売却を発表しました。
  • 2024年11月、AngloGold Ashanti PLCは、主要な金生産地域での存在感を高めるため、エジプト最大の金鉱を管理するCentamin PLCを25億米ドルで買収しました。

しかし、関連当局の承認の遅れ、買い手と売り手の価格期待のギャップ、地政学的要因、その他の各ディール固有の複雑な要因など、ディールを頓挫させる可能性のある課題は依然として残っています。こうした要因にもかかわらず、2025年は、企業は政治的不確実性の低下や最近の金利低下からも恩恵を受けることから、ディール活動が活発化すると思われます。

鉱業・金属に関する2025年の主なM&A動向は以下の通りです。

  • 企業は、資本集約的な新規プロジェクトに着手するよりも、リスクを軽減し、事業シナジーを活かせる既存のアセットを取得することを選好するでしょう。
  • 金価格の高騰と探査活動が限定的なことによる埋蔵量の枯渇により、金鉱山会社の買収が促進されるでしょう。
  • 米国が中国への依存度を下げるにつれ、米州において重要鉱物への投資機会が増える可能性があります。
  • 原子力需要の増加と小型モジュール炉の採用によりウランの魅力が高まっており、関連セクターでのディールにつながる可能性があります。
  • コモディティ価格の乱高下によって、有利なポジションに位置する買い手にはリストラクチャリングやディストレストM&Aの機会が生まれる可能性があります。

鉱業セクターは世界のさまざまな産業に対する重要性が高まっていることから、2025年も活発なディール活動が続くと予想されます。鉱業企業は今、未来を形作るという重要な役割を果たす機会に適応できるよう自らをポジショニングしようとしています。

石油・ガスセクターは、市場環境の変化や脱炭素化の世界的な推進に適応しながら、そのレジリエンスを発揮しています。最近のM&A動向からは、継続的な再編、ポートフォリオの多様化、クリーンエネルギーソリューションの統合の高まりが見て取れます。注目すべきディールは以下の通りです。

  • ExxonMobilは2024年5月にPioneer Natural Resourcesを600億米ドルで買収し、同社のPermian盆地での存在感を倍増させました。
  • Devon EnergyはGrayson Mill EnergyのWilliston盆地事業を50億米ドルで買収することを提案しました。
  • Prio SAはブラジルのPeregrinoおよびPitangola油田を19億米ドルで買収することを提案しました。
  • ConocoPhillipsは今後10年間で最大90億立方メートルの天然ガスを欧州のアセットポートフォリオから欧州内のさまざまなトレーディングハブに売却し、よりリターンが高く、ローカーボン/ノーカーボンのプロジェクトに注力する予定であることを発表しました。これは、石油・ガスセクターにおいてポートフォリオ最適化が増加傾向にあることを反映しています。

石油・ガスセクターは、伝統的なエネルギー需要とよりクリーンなテクノロジーへのトランジションとが交錯する時代を迎えています。そのため、2025年にM&Aを推進する主なテーマには以下が含まれると予想されます。

  • 上流、中流、油田サービスセクターなど、伝統的なエネルギーサブセクターの再編が継続するでしょう。こうした投資は、エネルギー自給への注目度が高まることが予想される米国で特に活発化する可能性があります。
  • 特に米国以外では、事業によるオーガニックなキャッシュ獲得が将来の石油・ガス固有の成長資金を調達する最良の資金源となるため、業務効率化の必要性と強力なキャッシュフローの追求がディールを推進するでしょう。
  • 欧州では、エネルギー安全保障と脱炭素化において企業がどのようなポジショニングを選択するかが、ディール活動を推進する重要な課題となるでしょう。
  • 世界全体では、プライベート・クレジットへの依存が高まり、非伝統的な資金源、特に石油・ガスのディール活動を支える上でますます重要な役割を果たしている大手コモディティ商社からの資金が引き続き増加すると予想されます。

このようなシフトをうまく乗り切った企業は、既存資産の買収であれ、再生可能エネルギーソリューションの統合であれ、将来のエネルギー情勢を支配する態勢を整えることになるでしょう。2025年のM&A活動は、この10年間の石油・ガス情勢を決定づける極めて重要なものになると考えます。

電力・ユーティリティセクターは、エネルギー需要の増大、テクノロジーの進歩、地政学的影響の収束に牽引され、2025年はダイナミックな年になると予想されます。

M&Aの主なドライバーは、AI、クラウドコンピューティング、デジタルインフラの急速な成長に後押しされたデータセンター需要の急増で、エネルギー市場は対応を迫られています。ハイパースケールデータセンターと他のエネルギー消費者との主な違いは、コストよりもエネルギーアクセスの信頼性とスピードを重視していることです。このような電力需要の増加は、近代化された原子力技術などの従来型電源や、火力発電と組み合わせた炭素回収・利用・貯蔵(CCUS)などの革新的ソリューションへの投資を活性化させるでしょう。同様に、小型モジュール炉技術の追求が進んでいることからは、リードタイムが長くなるとしても、持続可能なユーティリティスケールのエネルギーソリューションが世界的に優先されていることが分かります。

政治と市場の不確実性への対応

自然エネルギーに対する投資家の関心は依然として高いままです。しかし、政策の不確実性、特にドナルド・トランプ氏が米国大統領に再選されたことにより、米国だけでなく世界的に自然エネルギー市場への警戒感が高まっています。伝統的なエネルギー源を優遇する政策や環境規制が緩和されることで、米国では化石燃料、特に天然ガスインフラへの投資に拍車がかかりそうです。

この2つの焦点は、このセクターが従来型電力への短期的な依存と脱炭素化への長期的なコミットメントが共存する過渡期にあることを反映しています。米国の新政権は、米国における再生可能エネルギーディールのペースをさらに減速させる可能性が高く、政治的な変化や規制の進化がM&Aに与える影響を浮き彫りにしています。米国では、関税が課せられる可能性に加え、補助金やインセンティブの削減によって、風力発電と太陽光発電の両方の成長が抑制されると予想されています。しかし、いくつかの州は独自に再生可能エネルギー目標を支持し続けており、主要テクノロジーはすでに単独でも平準化コストベースでも競争力があると主張しています。

欧州では、政治と規制における不確実性が続いているものの、風力、太陽光、エネルギー貯蔵、EV充電、エネルギー効率化が投資家の関心を最も集め、2025年に健全なディールの流れにつながる分野と見ています。アーリーステージへの投資が以前より難しくなっているため、再編が進む可能性があります。このことは、2024年12月にPwCが発表したState of Climate Tech 2024(英語)レポートでも明らかにされており、同レポートによると、2024年第1~3四半期において、企業の気候技術ディールの61%はミドルステージまたはレイトステージであり、その割合は2018年の2倍以上となっています。したがって、世界的な投資資金が実証済みの気候技術に流入する傾向は、2025年も続くと予想されます。

今後の投資機会

進化するエネルギー情勢は、戦略的投資家にも財務的投資家にも大きな機会を提供しています。短期的な不確実性は自然エネルギーへの投資を抑制するかもしれませんが、長期的な投資価値は依然として強力です。ディールメーカーは、化石燃料アセットにおけるM&A活動が活発化することを予測しつつも、政府のインセンティブが複数の市場で安定化するにつれて自然エネルギーを活用するというアジリティを維持する必要があります。

エネルギー需要の増加と政治情勢の変化に対応するため、2025年は電力とユーティリティのM&Aにとってトランスフォーメーションの年となることが予想されます。

2024年の化学産業におけるM&Aの取引額と取引件数は2023年を下回る結果となりましたが、中央銀行による金利引き下げ、インフレの緩和、在庫調整の緩和が追い風となり、下半期には回復の兆しが見られました。主要市場の経済や政治に起因した不確実性が低下し続ければ、この流れは2025年も続くと予想されます。国内の産業政策、世界的なサプライチェーンの再編成、プライベート・エクイティによる売却活動の増加といった要因が、化学分野のディールをさらに後押しする可能性があります。

化学業界のM&Aの特色を示す主要な地域別動向は以下の通りです。

  • 米国:製造業の国内回帰の傾向(新政権下でさらに加速する可能性が高い)、魅力的な税制優遇、優れたエネルギーインフラ、安価な原料へのアクセスなどを背景に、米国が化学業界のM&Aに魅力的な地域となり、ディール活動が活発になると予想されます。
  • 中東:2024年10月に発表されたADNOCによるCovestro AGの163億米ドルの買収に見られるように、国営石油会社や政府系ファンドが化学業界への影響力を強めています。
  • 中国:2025年のM&A活動は、景気回復と政府の支援策に後押しされ、活発化すると期待されています。化学業界のM&Aは、2024年上半期にここ5年で最も低い水準となった後、下半期には回復の兆しを見せました。
  • 欧州:クラッカー工場を閉鎖する主要生産者もおり、生産コストの上昇のためM&Aは低調に推移すると見られています。

多くの事業会社は、大規模な変革を伴うディールではなく、技術力や製品ポートフォリオの強化、地理的拡大を目的とした小規模な買収を追求しています。保有期間終了間近のアセットを抱えるプライベート・エクイティ・ファンドは、これまで以上に売却活動を推進すると想定され、市場に出てくるアセットが増えるものと考えられます。

これらの動きは、市場における優先順位の変化と戦略的な再編成の進展により、化学業界のM&Aが着実に復活してきていることを示しています。

2025年のエネルギー・ユーティリティ・資源分野におけるM&Aの見通し

エネルギー、ユーティリティ、鉱業、化学セクターにおける世界のM&A活動は、エネルギートランジション、地政学的安定化、テクノロジーの進歩に牽引され、2025年に勢いを増すと予想されます。再生可能エネルギー、送電網の近代化、クリーンエネルギー技術のための重要鉱物への投資が主流になるでしょう。化石燃料アセットについては、伝統的なエネルギープレーヤーがポートフォリオの再編を行う可能性があります。新興国市場は、豊富な資源や政策的支援により、関心を集めるでしょう。プライベート・エクイティとソブリンファンドは引き続き活発で、戦略的バイヤーは気候変動関連の買収に注力するでしょう。

今後、セクター間の相互依存関係も重要性を増すと思われます。エネルギー・ユーティリティ・資源分野は、このような相互依存関係がどのように展開されるかを左右する中心的役割を担っており、経験豊富なエグゼクティブやディールメーカーは、自社が直面する再構成の必然性に応じてM&A戦略を策定する際に、この分野を考慮する必要があります。

M&A動向の解説は、業界で認知された情報源からのデータと当社独自の調査に基づいています。具体的には、本文で言及している金額と件数は、2024年12月31日時点でロンドン証券取引所グループ(LSEG)が提供し、2025年1月6日から9日の間にアクセスした、正式に発表されたディールに基づいています(噂や取り下げられた取引を除く)。本データは、S&P Capital IQおよび当社独自の調査による追加情報によって補完されています。PwCの業界マッピングに合わせるため、ソース情報に一定の調整が加えられています。メガディールは50億米ドル以上のディールと定義しています。

著者についてGreg Oberti
PwCカナダ、パートナー、エネルギートランジション&ユーティリティ・ディールズリーダー

Cameron Stonestreet
PwCカナダ、ディレクター

※本コンテンツは、PwC米国が2025年1月に公開した「Global M&A trends in energy, utilities and resources: 2025 outlook」を翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。

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