【2019年】PwCの眼(2)視点を変えた発想でモビリティの再定義を

2019-05-18

前回、モビリティは=自動車、ではなく、社会や全産業を跨るもの、であることに言及したが、今回は次世代モビリティに対する発想について触れてみる。

サービスとしてのモビリティは、社会や街を構成する様々な領域の課題解決手段として実装されていくが、当然、国際都市や農村地区など地域特性により、異なる“型”で発展していく。モビリティサービスの検討の視点としては「インフラとして社会を支える」「産業を跨ぐ」「部分最適ではなく全体を“市場”として捉える」の3つが求められるが、これらは、次世代モビリティのエコシステム構想そのものと言える。

ここに、各社が現在苦戦している、モビリティ関連事業の成り立たせ方、の大きなヒントがある。つまり、クルマを中心としたモビリティサービスに様々な機能を付与して付加価値を向上させる(≒対価を得る)ことを考えがちであるが、社会の課題を解決するためには?人々の生活の質を上げるためには?という視点からモビリティサービスを捉えると、そこに求められるものが地域や時期によって大きく異なることが明確になり、構築すべきエコシステムやその中での対価の得方(≒儲け方)が見えてくるのである。

勿論、このモビリティトレンドの最中に、すべての事業者が従来の生業を捨て、新たに事業転換しなければならないというわけではない。次世代モビリティの戦い方としてシンプルにモデル化されたものだけでも、「高品質/低コスト」「資産効率UP」「ネットワーク効果最大化」「生活インフラ構築」などがあり、ある欧州のグローバル企業の経営者が「我々はメーカーとして、これからも良いエンジンを作り続ける」と宣言したように、生涯、「高品質/低コスト」の従来型の提供価値モデルを貫くという例もある。

大事なポイントは、モビリティ構想時の発想を社会・生活づくり、においた上で、我々の生業は何か?を見つめなおし、必要に応じて再定義することにある。

次世代モビリティのエコシステムのように従来の思考法では複雑で分からないもの、分かりにくいものを、社会や生活の創成・維持=”儲からない事業”というように一括りにしがちであるが、実際には事業としても収益化を達成する。例えば、不動産業界では「鉄道会社が進める地方創生と不動産付加価値向上施策」がそれであり、「シームレスな移動サービスにより地方・郊外への移住が進む」「渋滞/排ガス等の環境問題が解決され、幹線道路も地価が上昇する」「モビリティサービスが付帯することで不動価格が上がる」などの効果が実際に得られている。

さらに、ライフスタイルデザインのアプローチ(詳細は後段のマネタイズの回で解説する)を取ることで、従来では考え得ない組み合わせ、例えば、街づくり、モードシフト(交通)、プレミア獲得、衣料販売、という業界も規模も異なる4プレーヤーを巻き込んだ“システム”作りと収益化に成功した例もある。

この場合も、従来の“クルマ”に何かを付与して対価を得る、のではなく、社会・生活づくり・生活の質の向上の視点から、モビリティが担う役割・機能は何か?という発想である。ここまでくると、WhimなどのMaaS先進事例もまさにこの発想から生まれたものであることを改めて認識できるのではないだろうか? 次回は、この発想を起点に、モビリティサービスの主要メカニズムを紐解いてみたい。

担当者

北川 友彦

ディレクター
PwC Strategy&

阿部 健太郎

シニアマネージャー
PwC Strategy&

※本稿は、日刊自動車新聞2019年5月18日付掲載のコラムを転載したものです。

※本記事は、日刊自動車新聞の許諾を得て掲載しています。無断複製・転載はお控えください。

※法人名、役職などは掲載当時のものです。

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