【2019年】PwCの眼(1)モビリティはもはやクルマの話ではない

2019-04-20

MaaSをはじめとするモビリティに関する取り組みの一部は、実証実験から実用化、そしてグローバルレベルでの適用・導入の段階にあるが、その特徴は「自動車産業が必ずしも中心ではない」「他の国・地域・領域の好事例は最適解に成り得ない」「勝つために共通のメカニズムがある」「事業化視点の大転換と生業の再定義が求められる」である。この連載では、この特徴を念頭に置きながら、我々がグローバルの経験の中から得られた気づきや勝ち残りに必要だと思われるエッセンスを濃淡をつけながら論じていく。

第1回目は、モビリティの考え方や捉え方のポイントについて言及する。まず、モビリティは、単なる「移動の最適化」ではなく、「社会課題の解決」「都市計画やその持続的運用」の中心を担う位置づけであり、ここで言われるモビリティは、もはや「クルマ」の話ではないという理解が必要である。

次世代モビリティ時代のサービス構想と事業化では、「何を目的とするか」という視点が重要であり、抱える社会課題に応じて適応するモデルを検討しなければならない。例えばMaaS Global社の「Whim」は、都市型MaaSに分類される “One of them”である一方、Whim発祥のフィンランドのある村では、自家用車はまだ必須の移動手段である代わりに、生活者は荷物の輸送・配送手段を複数から選択できる田舎型MaaSが運用されている。また、このWhimは運営費の一部を公費でカバーしているからこそ成り立つモデルである、と言われているが、事業者目線での価値の源泉は、移動そのものではなく、その移動後の「コト」にシフトすることは明確である。周辺サービスの価値向上に移動を組み込んで、モビリティの付加価値を向上させる、という発想の転換が求められる。この意味で、各国・地域・産業に合った「周辺サービス」を捉え・設計する必要がある。万能なモデルは存在しないという理由の一つはここにある。

最後に、モビリティはヒトとモノの移動の両輪で捉える必要があること、に触れておく。特に、この「両輪」に関しては、テクノロジーの進展や社会環境・ユーザー価値観の変化に伴い、モビリティの一端を支える商用車の需要が乗用車を超える時代(PwC試算では、乗用車と商用車の全需比率は2018年の3:1から2029年には1:1)に向っており、これに対してグローバルプレーヤーが着々と手を打っている様が伺えることからも、この“両輪”を捉えたものが一つの勝ちパターンを形成すると考えられる。一方、現時点ですぐに「儲かる」ビジネスモデルは残念ながら在り得ない。なぜならマネタイズは、前述の通り、“近場”で考えるのではなく、全体のエコシステムの中で価値提供できるポイントを探す、のが王道だからである。従って、この過渡期においては、既存ビジネスの徹底、手薄になった従来型ビジネスへの逆張り、なども一つの賢い戦略と言えよう。

担当者

北川 友彦

ディレクター
PwC Strategy&

阿部 健太郎

阿部 健太郎

シニアマネージャー
PwC Strategy&

※本稿は、日刊自動車新聞2019年4月20日付掲載のコラムを転載したものです。

※本記事は、日刊自動車新聞の許諾を得て掲載しています。無断複製・転載はお控えください。

※法人名、役職などは掲載当時のものです。

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