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デジタル世界で誰もが活躍するために

アップスキリングに向けたPwCの取り組み

日本語版発刊にあたり

人工知能やロボティクスの台頭に代表される技術革新の速さ、ミレニアル世代やジェネレーションZと呼ばれるデジタルネイティブの若手層が持ち込む新たな価値観、シェアリングエコノミーやギグエコノミーに代表される社会の変化など、われわれは大きな時代の転換点にいます。その先にある「新たな世界」は、さまざまな不確実性に満ちています。だからといって準備ができないわけではありません。

例えば、技術革新やビジネスモデル刷新が急速に進むのに比例して、人々のスキルも加速度的に陳腐化していきます。テクノロジーが進化し続ける環境では、人が新たなスキルをいち早く習得する機会を設けること、それを通じて社員が俊敏に学習する能力や組織カルチャーを醸成し、新たな世界へ適応する組織力を持つことが、成功の鍵を握ります。

教育研修の考え方は抜本的に考え直さないといけなくなるでしょう。特定の知識を身につけるインプット型の研修はEラーニング化して、社員には空き時間を利用して随時独学で知識をアップデートしてもらわなければなりません。オンラインシミュレーションやチャレンジなどのゲーミフィケーションの活用範囲も広がっていきます。個人向けにカスタマイズできて飽きさせない、さまざまな形式の学習を提供するのです。

同時に、知識積み上げ型の集合研修を行うのは時代遅れになってゆくでしょう。もちろん人と人とが接する集合研修を否定するものではありません。新たな世界では、お互いの経験をシェアして、失敗や成功の実体験に共感すること、それぞれ異なる経験を持ち寄って何か新しい発想をすること、アイデアを出すことが極めて重要になってくるのです。そのためには失敗から学ぶ癖をつけることも大事です。

キーワードは「ラーニングアジリティ」です。学習力の俊敏性、新たな世界への適応力とも言い換えられます。

PwCの第22回グローバルCEO意識調査では、世界中の最高経営責任者の79%が、「主要なスキルの不足がビジネスの成長を脅かす」と回答しています。

多くのビジネスリーダーは、将来必要なスキルを持つ優秀な人材を雇うことがどんどん難しくなると認め始めています。つまり、企業はタレントの供給源を外部市場に頼るだけでなく、既存の社員のスキルの向上、すなわち「アップスキリング」を進める必要性も高まるのです。さらに、急速に変化する将来の人材ニーズを満たすためには、各社の取り組みにとどまらず、経済社会全体で人々のスキルと雇用可能性(Employability)の底上げを目指さなければなりません。

アップスキリングは企業・組織にとって今後の重要な施策になっていきますが、それだけでは不十分です。同時に仕事そのものを再考する必要があります。なぜなら、業務プロセスを再設計し、既存ポジションを統廃合し、新規ポジションを追加して新たな役割を付与するとともに、その新たな役割を担うために必要な新たなスキルを定義しなければ、デジタル時代に求められるスピードで仕事を回していくことはできないからです。

雇用のあり方も、従来のようなフルタイムの正社員だけでなく、買収やアライアンスを通じた人材の共有、ギグエコノミースタイルのフリーランサーの活用、兼業・副業など柔軟な就業形態など、多様化が進んでいきます。人という経営リソースのマネジメントそのものが、これまでよりも圧倒的に創造力が必要な方向へ変化しつつあるのです。

新たな世界に向けたアップスキリングには、これら全ての要素を検討し、それぞれの組織に合わせて最適化していくことが必要です。超高齢化という課題先進国である日本において、企業が人材を活用し続け、個人が活躍し続けるためにも、本稿での提言がアップスキリングの取り組みを推し進める変革への勇敢な一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。

PwCコンサルティング合同会社
パートナー
佐々木 亮輔

はじめに

世界経済フォーラムでは、企業経営者らとの会話はどれも最後に同じ質問にたどり着きました。それは、「従業員にどんなふうに準備させればいいのか?」というものです。

新たなスキルが求められる新たな世界が到来しています。多くの人はこれを進歩の証ととらえ、先行きが楽しみだと考えています。CEOや各界リーダーと話をすると、大半が基本的にそう同意します。しかし同時に、そのための準備ができていないとも言います。テクノロジーの変化の驚異的なスピードや広がり、インパクトが各社のビジネス、そして社会全体を根底から揺るがしています。今年1月、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で150名以上のビジネスリーダーと会合した際には、どの会話でも最後はほぼ同じ質問にたどり着きました。それは、「従業員にどんなふうに準備させればいいのか?」というものです。

PwCでもこの点について自問自答してきました。私たちの答えは、世界中の組織が採用すべきだと思えるような対策をまず自分たちで実行に移してみるということでした。そこで、従業員がデジタル時代に向けて新しいスキルを学べるよう支援する取り組みをスタートしました。この「アップスキリング」の旅は米国から始まり、今では全ての従業員に行き渡るよう計画を進めています。

アップスキリングとは、変化し続ける高度なテクノロジーを職場や日常生活の中で使えるようになるために、必要な知識やツール、能力を身に着ける機会を与えることです。

全員がプログラミングを学ぶ必要はありませんが、多くの従業員は人工知能やデータアナリティクス、自動運転車など、現在の新しい技術や将来開発される技術を含め、予測さえできないテクノロジーを理解し、うまく対応する必要があります。また、全ての企業の従業員には、より強いリーダーシップのスキルも求められています。それは所属チームやグループの同僚などを巻き込み、学び続ける意欲をかき立てやる気にさせる能力と、テクノロジーの導入と活用に関して適切な判断ができる能力です。

PwCグローバルネットワークは今後4年間で、30億米ドルを投じてアップスキリングに取り組む計画です。これはPwCスタッフの教育だけでなく、クライアントと地域社会を支援するためのテクノロジーの開発にも向けられます。

この取り組みは、PwC内での経験と協業関係にある他の組織の経験に基づくほか、蓄積が進む生涯教育とデジタル能力構築に関する知識も活用しながら実施していきます。「New world. New skills. 新たな世界。新たなスキル。」と呼ぶこのイニシアチブは、PwCネットワークが掲げるPurpose(存在意義)、すなわち「社会における信頼を構築し、重要な課題を解決すること」をまさに体現するものなのです。

新たな世界。新たなスキル。

340億米ドル:世界経済フォーラムは、雇用が脅かされている米国の労働者137万人のアップスキリングは、それだけで340億米ドルのコストがかかると推定しています。

PwCの調査では、テクノロジーの変化により、今後10年間で3分の1の職業が根底から覆されるような変化を余儀なくされるか、消失する可能性があります。その影響は、低技能(low-skilled)職種のほぼ半分と準技能(semi-skilled)職種の3分の1に及ぶと見られます。世界経済フォーラムは、雇用が脅かされている米国の労働者137万人のアップスキリングのコストは、それだけで340億米ドル、すなわち一人当たり2万4,800米ドルになると推定[English][PDF 2,232KB]しています。世界全体を考えてこれを100倍すると、合計額は途方もない数字になります。

とはいえ、何もしないでいた場合のコストはそれを上回ります。すでに世界中でスキルのミスマッチが生じ、何百万人もの人手不足が発生しています。その仕事を担えるスキルをもともと身に着けている人材が、十分に確保できないのです。唯一の選択肢は、既存の労働者や現在雇用されていない人、新社会人、次世代の人材に対し、デジタル時代に彼らが必要としている、そして社会が彼らに求めている知識とスキルを身に着けられるよう支援することです。

テクノロジーからの挑戦

富裕層と貧困層の間の「デジタルデバイド」は、公正な経済とは何かを考えさせます。

アップスキリングは、単に従業員に新しい端末の使い方を教えるという問題ではありません。その端末は翌年には時代遅れになっているかもしれないのです。アップスキリングがもたらすのは、これからのデジタルな世界でどのように考え、行動し、成功するかを学ぶ体験です。

例えば、監視カメラの普及により、私たちは倫理とガバナンスをこれまでとは違う視点から考えざるを得なくなっています。遺伝子工学と人工知能の進化は、人間であることの本質を問いかけています。富裕層と貧困層の間の「デジタルデバイド」は、公正な経済とは何かを考えさせます。デジタルメディアによって社会の分断は深刻化し、情報の信頼性が揺らいでいます。差し迫る気候変動や、エネルギー技術とモビリティの進展は、環境の持続可能性へのアプローチについて再考を求めるでしょう。

どの国も、自国の人口動態や技術成熟度のレベル、経済構造を考慮した上で独自のアップスキリングソリューションを策定する必要があります。経済発展と高齢化が進み、強力なサービス部門を擁する地域と、開発途上で農村経済を主とし、30歳未満の人口比率が高い地域とでは、優先課題が異なります。しかし、こうした違いはあれ、世界のどの地域にも当てはまる共通項が一つあります。それは、ますます多くの労働者が、自分の能力と理解度を高める必要があるということです。

アップスキリングを実行に移す

PwCネットワークに所属する9万7,000人以上がこの評価を終了し、デジタルフィットネスプランに参加しています。

協業は、将来必要となる適切なスキルの見極めにも及びます。

PwCでは、教育と育成を含め、自社の業務の中で新しいテクノロジーとイノベーションを取り入れています。2017年には、集中的なアップスキリングの取り組みを開始し、効果的なソリューションを見極めることに注力しました。

イノベーションについては、従業員が学びたいと思うものを主体的に選ぶことがより有効であるため、従業員主導のアプローチを支援し、奨励しています。さらに、新しいスキルを活用して業務やクライアントとの協業を改善するよう促しています。教室での学習もありますが、大半はマルチメディアやシミュレーションゲームを使って自分のペースで学ぶか、チーム単位で新しいツールを構築して共有するプロジェクトを通じて学んでいます。

特に重視しているのは、次の分野で最大の効果を得るための取り組みです。

従業員を支援する:米国を皮切りに全社的なアップスキリングプログラムの提供を開始しており、すでに中東と英国でも実施しています。多くの従業員は、まず「デジタルフィットネス(Digital Fitness)」アプリをダウンロードし、これを使って自分のデジタルテクノロジーへの習熟度を評価し、学習と改善のためのリソースを見つけるのに役立てます。PwCネットワークに所属する9万7,000人以上がこの評価を終了し、デジタルフィットネスプランに参加しました。3万7,000人近くがすでに、データアナリティクスのイマーシブ(没入型)トレーニングを通じてデジタルスキルを高めました。

クライアントの準備を支援する:PwCは官民を問わず、事業目標の達成や生産性の向上に向け労働力変革に積極的に取り組んでいる組織と協業しています。こうした協業は、仕事に関わるスキルの開発にとどまりません。将来必要となる適切なスキルの見極め、アップスキリングを受け入れる組織文化の基盤の確立、適切な教育テクノロジーを活用した学習とスキル開発の機能の構築にまで及びます。これらを通じて、アップスキリングへの投資からはるかに多くを回収することができるのです。

取り残される恐れがある人々に支援を届ける:PwCは、アップスキリングをコーポレートレスポンシビリティ活動の基軸に据えています。PwCグローバルネットワークの全ての企業に対し、今日のデジタル世界で成果を上げるための支援を求めている人々をサポートする機会を作ることや、現在のプログラムを反復、拡大すること、新しいプログラムを作成することを要請しています。

最初に行った取り組みの例には、「アクセス・ユア・ポテンシャル(Access Your Potential)」プログラムがあります。これは3億2,000万米ドルを投じて多様な学生にテクノロジーへの関心を深めてもらうよう働きかけるプログラムで、PwCのパートナーとスタッフが19万時間以上を費やし、830万人以上の学生と教員に支援を届けています。1万7,000人以上の小・中学校教諭が教員向けの「デジタルフィットネス」アプリをダウンロードし、うち1万4,000人が評価を終えました。このアプリを活用した教員を通じ、推定90万人以上の学生がテクノロジーとデジタルに関するコンテンツに触れる機会を得ました。

対話の場を設ける:課題の規模が極めて大きいことから、PwCではグローバルレベルで、また事業を運営している全ての国で、企業経営者や政策立案者、労働者や労働組合など多岐にわたるステークホルダーと、ソリューション開発のための協力について対話を進めています。シンガポールやルクセンブルクなどの一部地域では、地域の労働力変革に向けた政府主導による包括的な取り組みを参考にしています。また、特定の従業員の才能を伸ばそうという企業を参考にすることもあります。今後は事業を運営しているどの地域においても、CEOに「行動喚起」を後押しするよう要請し、政府および市民社会との話し合いの場を設ける計画です。

大きなうねりを作り出す

アップスキリングの課題には、技術的変化のスピードと予測不能性が関係しています。このイニシアチブで目指しているのは、マルチ・ステークホルダー・アプローチの奨励です。これは、アップスキリングに関わる全ての人が、何が有効で、何が応用可能で、どこにチャンスがあるのかを共有できるアプローチです。

従業員に新しい働き方を受け入れる意欲を持たせることは可能です。そのことはPwCの経験からも、他の企業の経験からも実証されています。今こそ、人間の能力における次なる大波を作るために世界中の企業と地域社会が手を携え、大きなうねりを作り出すべき時期に来ています。

そのためには皆様の参加が必要です。アップスキリングは複雑な問題であり、教育、国・地域・自治体の行政、ビジネスなどさまざまな領域の意思決定者が協力して取り組まなければなりません。

「New world. New skills. 新たな世界。新たなスキル。」は、世界中の多くの人々がデジタル世界への知識と理解を深め、スキルを改善できるよう支援するPwCのグローバルプログラムです。

企業は、誰もが不本意に取り残されないようにする上で重要な役割を担っています。

組織や政府、教育関係者、市民は一体となり、この深刻化していく問題に緊急に対処する必要があります。PwCは、各国で有効なソリューションが見つかるよう幅広いステークホルダーとの対話と協業を進めます。また、官民の組織が将来必要となるスキルを見極め、包括的ソリューションに向けて協力するための支援をしていきます。

PwCグローバルネットワークは、今後4年間で30億米ドルを投じてアップスキリングに取り組む計画です。これはPwCスタッフの教育だけでなく、クライアントや地域社会など、事業を運営する地域のさまざまなステークホルダーを支援するためのテクノロジーの開発にも向けられます。また、PwCが実施するコミュニティ支援の取り組みにおいて、アップスキリングを重視するよう促していきます。

詳しくはwww.pwc.com/jp/ja/issues/upskilling.htmlを参照してください。

主要メンバー

佐々木 亮輔

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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