PwCコンサルティング合同会社(以下、PwCコンサルティング)は、同社出身者を対象とした交流会「PwC Consulting Alumni Happy Hour」を2025年5月30日に開催しました。今回の交流会では、EF Polymer株式会社でCOOを務める下地 邦拓氏と、PwCコンサルティング代表執行役CEO 安井 正樹によるスペシャルトークが行われ、アルムナイネットワークの現状と展望について語り合いました。会場には約40名の卒業生が集まり、スピーカーとの質疑応答やネットワークキングを通じて、有意義な時間を共有しました。
交流会が始まる前はやや緊張感がありましたが、PwCコンサルティングのアルムナイ担当パートナーである藤井 大地の挨拶をきっかけに、会場の雰囲気は次第に和らいでいきました。藤井は「PwCは優秀な人材を数多く預かっている。その力をいかに社会に還元できるか、また卒業された方とどうつながっていけるかを、1年にわたり試行錯誤してきた」と語り、本イベント開催の背景を伝えました。
メインイベントであるスペシャルトークは、「アルムナイネットワークの可能性」をテーマに行われました。
PwCコンサルティングの蔵屋 聖子の進行のもと、まず安井が「雑誌などで元PwCの方を見かけると誇りに思う。卒業生が活躍していること、そして今日こうして皆さんが集まってくれたことが本当にうれしい」と卒業生を歓迎し、「私には目標が2つある。ひとつはクライアントやアナリストからの評価においても、社員の満足度においても、PwCコンサルティングをナンバー1にすること。もうひとつは、クライアントやアルムナイとともに、インパクトを生み出し続けるエコシステムをつくること。PwCコンサルティングに入社した優秀な人材を世の中に還流させることで、私たちは社会的意義を果たせると考えている」と語りました。
下地氏は2020年にPwCを卒業後、地元である沖縄に戻り、沖縄科学技術大学院大学(以下、OIST)で産学連携に従事する中で、EF Polymer関係者と出会い、同社に参画しました。EF Polymerは、自社開発した世界唯一の有機ポリマー技術を活用し、農業分野における世界的な課題の解決を目指すアグリ・新素材スタートアップです。
下地氏は「人間が利用可能な灌水のうち7割は飲み水に利用される。そのため、世界中の多くの農家には水不足によって十分な収量を確保できないという課題がある。その課題解決を目指して作られたのが当社の有機ポリマーだ。現在、日本に25名、インドに60名のスタッフがいる。ポリマーは農業だけでなく、ナプキンやおむつの吸水シート、化粧品などに使用される増粘剤、保冷剤などにも応用できる。現在、欧米のラグジュアリーブランドなどとも新たな価値創造のために一緒に仕事しており、さらなる事業拡大やシリーズBの資金調達に向け活動を続けている」と語りました。
安井はPwCとアルムナイのコラボレーションを可能にする3つの仕組みとして、「プロボノ制度」「財団による助成」「本業におけるスタートアップとの協業」の3つを挙げました。
PwC財団の助成制度に応募し、支援を受けた下地氏は「シード期にPwC財団から資金を調達できたことは精神的な安定につながった」としつつ、「同時にプロジェクトマネージャーが事業にジョインしてくれたことも心強かった」と振り返りました。
また、下地氏はEF PolymerにPwC時代の同僚が加わったことや、PwCのアルムナイメンバーの事業がOISTのプログラムに採択された事例などを紹介し、アルムナイ同士のつながりに「大きな可能性がある」と語りました。
「PwCは専門人材の宝庫で豊富なアセットを持っている。同期のみならず、前後2~3期のメンバーとの関係も深い。そしてPwC出身者であれば、能力の見極めの負担やコミュニケーションのハードルも低い。事業においては人のつながりが大事だが、アルムナイネットワークはその可視化や情報共有という側面で大きな力を秘めていると思う」(下地氏)
下地氏と安井がアルムナイネットワークの可能性について語った後、会場からはいくつかの質問が寄せられました。最初の質問は、「アルムナイネットワークのビジョンや今後の取り組み」についてでした。質問に対し藤井は「自走・自律」をキーワードに挙げました。
「最終的には、PwCが介在しなくともアルムナイ同士の関係性が広がっていくことがひとつの理想。例えば、今日登壇された下地さんと他のアルムナイがつながり、新たな関係性やアイデアが生まれるような、自走するネットワークの在り方を目指している。今後はアルムナイネットワーク強化のためのプラットフォーム整備、スタートアップを集めた企画、また金融・人材・パブリックなど、セクターごとのネットワークが自然発生するような仕掛けづくりなどに取り組みたい。また、参加者としてではなく、企画側として参画したいアルムナイも募っていきたい」(藤井)
質疑応答では、「日本に進出する海外スタートアップへの支援」「PwCとベンチャーキャピタルの連携の在り方」など、多様な観点から質問が寄せられ、PwCの現役メンバーとアルムナイが相互理解するための貴重な時間が共有されました。そして下地氏と安井はスペシャルトークの総括として、次のメッセージを残しました。
「私はアルムナイの皆さんに、PwCの仕組みを上手く使ってほしいと考えている。PwCには多くの専門家がいて互いに助け合っている。それはPwCの外部にあっても同じだ。社員と同じように、卒業した方々にもPwC出身であることに誇りを持ってほしい。そのためにも、信頼とリスペクトに裏打ちされたネットワークの構築に邁進していきたい」(安井)
「私はアルムナイがPwCから支援してもらうだけでなく、支援することもできると考えている。例えば、私は沖縄の補助金制度や農業系スタートアップのトレンドなどについて理解している方だと思うので、求められればいつでも情報を共有する用意がある。PwCとアルムナイ、そしてアルムナイ同士が支え合うネットワークが、より拡大していくことに期待したい」(下地氏)
スペシャルトーク終了後のネットワーキングの時間には、元同僚との近況報告、名刺交換や自己紹介を通じた新たな関係性の構築など、アルムナイ同士の交流が活発に行われました。