若手社員とエキスパートがテクノロジーについて語る、「どこまでやればDXを実現したと言えるのか」

2022-07-13

技術トレンドよりも重要なDXの2要素

安野:次に技術トレンドについて見解を聞かせてください。企業全体の取り組みとしてDXを推進するには、技術トレンドをいち早く把握する必要がありますよね。過去10年を振り返ると、AIの導入範囲の拡大や5Gの普及など、新技術の台頭で技術トレンドは激変しました。荒井さんはこれからの10年で、どのような技術トレンドが来ると予想しますか。また、そもそも予測することは可能でしょうか。

荒井:予測は可能です。マクロ的な観点でシナリオを想定し、将来的に活用される技術に対して“アタリ”を付けることはできます。

具体的に説明しましょう。過去に起こった技術トレンドを抽象化すると、「集中」と「分散」をくり返していますよね。例えば、クラウドコンピューティングが台頭してきた時には、全データをクラウドに集約するトレンドがありました。しかし、IoTが普及するにつれて、IoTデータはエッジ側で処理するほうが効率的であることから、エッジコンピューティングの導入が進みました。それに伴い、NFT(Non-fungible Token)のような技術も注目されています。そうなると次のトレンドは、「分散」に関する技術であることが、ある程度は予測できます。

しかしながら、ビジネス環境が複雑化している現在は、物事が予測どおりになるかわかりません。私はテクノロジー領域のコンサルティングを約20年続けていますが、数多くのディスラプション(デジタル技術による破壊的イノベーション)を目撃しています。ですから、「ある程度の予測と仮説を立てて準備する」ことは当然ですが、環境変化に迅速に対応できるアジリティ(俊敏性)を持つことも重要です。そして、外部組織と柔軟に連携できるコラボレーションの仕組み作りを早急に進める必要があると考えています。

安野:DXを成し遂げるために重要なのは、技術トレンドを追うよりも俊敏性やコラボレーションの仕組み作りが重要なのですね。

荒井:DXの目的は、企業の収益を向上させることや、自社のお客様に対してより良い価値を提供していくことです。収益向上や価値の追求にゴールはありませんよね。ですからDXは「終わりなき戦い」なのです。では、なぜDXには俊敏性やコラボレーションの仕組みが重要なのか考えてみましょう。

現在、DX推進に成功している事例でキーになるのは、「異業種連携」です。自動車会社と保険会社が連携した「テレマティクス保険」などはその典型例ですよね。また、現在はメタバースが注目されていますが、一企業が「仮想空間でイベントをやります」とうたっても、ビジネスにつながる可能性は低いでしょう。ビジネスにつなげるには実空間を超える新たな顧客体験や顧客価値を提供する必要があります。そのためには、顧客接点でのデジタル化だけでなく、金融や物流、小売り業者など、複数の異業種を巻き込んだバリューチェーン全体でのデジタル化やトランスフォーメーションが不可欠なのです。

PwCコンサルティング合同会社 アソシエイト 安野友哉

PwCコンサルティング合同会社 アソシエイト 安野友哉

産官学連携で課題に取り組む「Technology Laboratory」

安野:最後にPwCの支援内容について教えてください。お話を伺ってDXの実現には企業文化およびアーキテクチャの見直し、そして人材育成までを網羅する必要があることを理解しました。そうした課題に対し、PwCではどのような支援を実施しているのでしょうか。

荒井:不確実性が高く先行きが不透明な時代にビジネスを推進するには、既存の延長線上にある施策や経営戦略では対応できません。企業はこれから起こりうるシナリオを予測しながら、自社のありたい姿や、顧客に提供したいサービスの在り方を根本的に考え直さなければなりません。PwCではそのために必要な経営戦略立案からビジネスプラットフォームのアーキテクチャ構築、さらに必要な技術の検証から導入までを一貫して支援しています。

それを具現化したのが2021年にPwCコンサルティングが東京・大手町に開所した「Technology Laboratory」です。ここでは社会課題解決に先行して取り組む政府や地方公共団体、先端技術を開発・保有する研究機関、そして事業化の知見を持つ企業が連携し、技術を活用しながら新たなイノベーションエコシステムの形成を目指して活動しています。

安野:具体的にはどのような取り組み事例がありますか。

荒井:例えば、ヘルスケア領域の取り組みが挙げられます。労働人口の減少とともに超高齢化社会に突入する日本にとって、「ヘルステック」は注力すべき最重要領域の1つです。Technology Laboratoryでは介護事業者や関連企業とコラボレーションしながら、「望ましい介護のあり方」の実証実験などを実施しています。

安野:確かに異業種とのコラボレーションがなければ解決できない課題ですね。

荒井:PwCの強みは社会における重要なアジェンダや、企業が実現したい姿を産官学連携で支援できることです。技術の知見から持続可能な未来を予測すると同時に、実現に向けた課題設定と解決のユースケース作りの実践を通じて、企業の事業変革や大学・研究機関の技術イノベーション、政府の産業政策を総合的に支援しています。

こうした包括的な支援ができるのも、PwC Japanグループには監査法人やコンサルティング、税務・法務、M&A支援、フォレンジックなどのプロフェッショナル組織を広範囲に擁しているからです。もちろん、PwCグローバルネットワークが長年積み上げてきた知見や実績、最先端の情報を活かすこともできます。これらの力を統合し、将来的にクライアントが事業変革やイノベーションを実現できるよう、PwC Japanグループ全体で伴走型の支援を行っています。

安野:DXを継続的に推進するためにはさまざまな領域での連携や知見が必要であり、PwCはクライアントの状況に応じて支援できる体制が整っているのですね。本日はありがとうございました。


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主要メンバー

荒井 慎吾

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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