エンプロイーエクスペリエンスサーベイ2022調査結果(速報版)

従業員の声(VoE:Voice of Employee)を捉えたエンプロイーエクスペリエンスの提供が、従業員エンゲージメントを高めるための鍵となる

PwCコンサルティング合同会社(以下、PwCコンサルティング)は日本国内の企業を対象にエンプロイーエクスペリエンス(EX)*の認知度や重要度、各社の取り組みの現状などについてHR総研(ProFuture株式会社)と共同調査を行い、回答企業142社の結果を取りまとめました。

* EX=Employee Experience(従業員体験):従業員が企業組織との間で体験・経験することの内容や価値を指す概念

本調査は2018年から継続して実施しており、今回で5回目の実施となります。

EXの認知度と重要度は向上

従業員体験を示す言葉である「エンプロイーエクスペリエンス(EX)」という言葉の認知度は、調査開始の2018年から比較すると全企業で28ポイント上昇して76%、従業員5,000人以上の大企業(以下、大企業)で14ポイント上昇して80%となっています。また、2022年調査では3割近くの大企業がEX向上のための施策を検討・実施しており、この数年間でEXという考え方が日本企業の間で急速に広まったことが分かります(図1)。

図1 EXの認知度

また、EXを向上させることが今後の経営・人材マネジメントにおいてどの程度重要になると思うか質問したところ、「経営の注力テーマの一つになる」もしくは「経営の重要課題になる」と回答した企業は全体で48%、大企業では55%と企業規模にかかわらず半数程度を占める結果となりました(図2)。この背景には人材不足や人材の流動化による人材獲得競争がより一層激化していることがあると考えられ、EXの向上はもはや人事部門だけではなく、経営も含めた企業全体で取り組まなければならないテーマと認識されていることが分かります。

図2 EXの重要度

EX向上施策は領域ごとにバラツキあり

続いて、EX向上施策について領域と成熟度の観点から各社の取り組み状況を確認します。PwCコンサルティングではEX向上施策を6つの領域に分けて定義しており、各領域における関連施策の実施状況をもとにサーベイ回答企業の「EX成熟度」を計測しています(図3)。

図3 EXの施策の取り組み内訳(全体)

「EX成熟度」を領域ごとに見てみると、「ワークスタイルオプション領域」の平均レベルが1.5と最も高い結果となっており、次点で「ライフサポート領域」(平均レベル:1.2)が続くという結果になりました(図4)。「ワークスタイルオプション領域」の取り組み状況からは多くの企業が新型コロナウイルス感染症拡大に伴うハイブリッドワーク環境の整備に引き続き注力していることと、「ライフサポート領域」については前回調査(2021年度)から0.4ポイント上昇しており、ハイブリッドワーク環境下において関心が高まっている従業員の孤独や燃え尽き症候群への対応(ウェルビーイング関連施策)についても対策を進めていることがうかがえます(図5)。

一方、最も低かったのは「ネットワーキング領域」でした(平均レベル:0.3)。働き方・働く場所の多様化や柔軟性確保、ウェルビーイング向上のための施策は実施しているものの、ハイブリッドワーク環境下において生産性高く働くための仕組み(同僚とのコラボレーションやナレッジの共有等)や、従業員同士や社外関係者(アルムナイなど)とのつながりを創出・強化することによるオンボーディングの効率化・高度化やイノベーション創出などに着手している企業はまだ少ないと見られます。

図4 EXの施策の取り組み内訳(大企業)
図5 EXで捉えるべき視点

多様な従業員の声(VoE)を踏まえた良質なEXが従業員エンゲージメントの向上につながる

EXと各経営指標の関係性を分析した結果、EX成熟度が高いほど従業員エンゲージメントが改善されている企業の割合が高くなることが明らかとなりました(図6)。一般にEXを高めることがエンゲージメントの向上につながると言われますが、それを裏付ける結果となりました。

図6 EX成熟度

EX成熟度以外に従業員エンゲージメントの向上との関連がある要素について分析した結果、

  • 従業員の声(VoE)の重視度合
  • 従業員の個別性・多様性の重視度合
  • EX担当者の有無

という3つの要素と関連性があることが分かりました。

まず「従業員の声(VoE)の重視度合」と「従業員の個別性・多様性の重視度合」について着目すると、両者ともに重視度合の高い企業ほどEX成熟度・従業員エンゲージメントの向上割合のどちらも高くなる傾向にあることが分かりました(図7)。

図7 EX成熟度と改善指標の関連性

加えて、社内の取り組み体制に着目すると、EX担当者が存在する企業は、EX担当者が存在しない企業よりもEX成熟度と従業員エンゲージメント向上割合が高くなることも分かりました(図8)。

これまでの結果を総合すると、複数の領域においてEX施策を実施すること(高いEX成熟度)に加えてEX担当者を設置し、従業員から収集した声(VoE)に耳を傾け、従業員の志向性や価値観の多様性を踏まえた個別性の高い施策やメッセージを実施・発信することがエンゲージメント向上における鍵になると考えられます。

図8 従業員エンゲージメントの調査の実態

人材獲得競争が激化する中で優秀な人材を獲得・維持するため、従業員エンゲージメントを高めることは人事部門のみならず経営の重要なアジェンダとなっています。調査結果を踏まえると、EXが従業員エンゲージメント向上につながる可能性が示唆されました。より具体的には、複数のEX向上施策を実施することだけが重要なのではなく、多様な価値観を持つ従業員の声(VoE)を集め、それを踏まえた質の高いEX施策を実施していくことがエンゲージメントの向上において重要なことが分かりました。

今後、より一層従業員エンゲージメントを高めていくためには、自社の従業員が抱える多様な悩みや課題を把握し、その上でEX向上につながる施策を検討・実施するためのプロセスや体制を整備していくことが欠かせないでしょう。

執筆者

土橋 隼人

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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荒井 滉平

シニアアソシエイト, PwCコンサルティング合同会社

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森岡 桃子

シニアアソシエイト, PwCコンサルティング合同会社

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伊丹 健人

アソシエイト, PwCコンサルティング合同会社

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山下 和真

アソシエイト, PwCコンサルティング合同会社

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