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PwCコンサルティング合同会社(以下、PwCコンサルティング)は日本国内の企業を対象にピープルアナリティクスへの取り組み状況や人材データの利活用に関して、HR総研(ProFuture株式会社)と2025年2~4月に共同調査を実施し、143社からの回答を分析しました。
本調査は2015年から継続しており、今回で10回目を迎えます。
2015年の調査開始以来、人材データ活用・分析は増加傾向を示し、2022年に56%とピークを迎えました。その後、一時的な減少はありましたが、2025年の調査では、「取り組みを実施している/実施した」「今後取り組む予定がある」と回答した企業が46%と、前年比7ポイント増加し、再び上昇傾向に転じています(図表1)。
図表1:人材データ活用の取り組みに関する経年変化(2015~2025年)
人材データ分析の活用状況は、より複雑な様相を呈しています。2015年当初は、ビッグデータへの注目を背景に、人事領域でのデータ利活用に挑戦する企業が増加しました。各社は採用分析や離職分析など、既存データが充実している領域から実証実験(PoC)に着手しました。コロナ禍では、リモートワークの普及に伴い、従業員の働き方や生産性の把握、メンタルヘルス対策、エンゲージメント向上に向けたデータ活用が進みました。近年は人的資本経営・開示の要請を受け、社内状況の実態をデータで可視化し、それに基づいた戦略・計画策定を行うなど、より実践的な人材データの活用が進展しています。
本調査では、これらの近年のトレンドを踏まえ、人材データ活用状況を示す5つの重要ポイントを抽出しました(図表2)。以下、その内容を速報版として紹介します。
図表2:人材データ活用の5つのポイント
人材データ分析に用いるデータの現在の活用度と3年後の活用意向を比較すると、20項目中14項目で活用増加の意向が示されました(図表3)。この背景には、人事担当者が直面する課題の複雑化(働き方の見直し、人的資本経営・開示への対応、生成AI活用促進など)があると考えられます。
活用意向が最も高まったのは「キャリアプラン情報」(+18.9ポイント)で、次いで「職務関連情報」(+16.8ポイント)でした。また「社員個人の興味・関心データ」(+13.3ポイント)、「ワークスタイル情報」(+9.8ポイント)、「人材育成開発データ」(+8.4ポイント)も、全体に占める割合は少ないものの、増加傾向にあります。これらのデータへの関心は、人材戦略が「組織主導」から「個人重視」へとシフトしていることを示唆しています。会社都合ではなく、従業員一人一人のキャリア志向を尊重し、それに基づいたパーソナライズされた人材育成や配置を行おうとする傾向が見て取れます。
一方で、「育成情報」「従業員意識調査」は既に3割ほどの企業で活用されており、今後も同水準の活用が見込まれています。「評価情報」「勤怠情報」「経歴情報」「ストレスチェック情報」「採用情報」の活用意向は減少傾向にありますが、これらは既に一定程度活用されており、今後は他のデータとの組み合わせによる活用が続くと予測します。
図表3:人材データの現在の活用度と今後の活用意向の比較
人事データ分析ツールの将来的な活用意向においては、「生成AIや生成AIをベースとしたツール」が32%と最も高い関心を集めていることが明らかになりました(図表4)。これに続く「BI(データ視覚化)ツール」(31%)、「採用、配置、業務効率化などの特定の領域に特化したサービス・ツール」(23%)、「専門的なデータ分析ツールやプログラミング言語」(21%)も、現在の活用度と比較して顕著な伸びが見込まれています。
この傾向は、日本企業における生成AI活用の加速を示唆しています。PwCの「生成AIに関する実態調査 2025春 5カ国比較」によれば、生成AIの活用または提供を行っている企業の割合は56%に達し、前年比13ポイント上昇しました。さらに20%の企業が「生成AIを推進中」と回答しており、生成AI活用の波が急速に広がっていることが確認されています。*1
生成AIツールへの高い期待の背景には、パーソナルデータ活用の複雑化があります。多角的なデータ分析、個人データの高度な加工処理、厳格なセキュリティ対応など、高度な要求に対して、生成AIが必要なデータリテラシーや技術力を補完する役割を果たすと期待されていることが考えられます。
一方、現在の活用状況を見ると、「表計算ソフト」(66%)や「人事基幹システムに付随するツール」(34%)の利用が主流ですが、これらの将来的な活用意向は限定的です。注目すべきは「BI(データ視覚化)ツール」(現在24%)への関心の高まりです。これは、人事データをより戦略的に活用し、経営陣やステークホルダーに対して定量的かつ説得力のある形でコミュニケーションを行いたいという人事部門の意欲の表れと解釈できます。
図表4:人材データ分析に使用しているツール/今後活用したいツール
現在の人材データ分析の結果提供は、従来の主要な対象である本社人事(57%)と経営層(66%)が依然として中心となっています(図表5)。
現在の提供状況と将来的な提供意向の差が最も大きかった対象は従業員本人で、17ポイントの差が確認されました。従業員本人へのデータ提供拡大は、不確実性の高い現代において、従業員が自身のキャリアを主体的に構築することの重要性が高まっていることを反映しています。データの提供により、従業員が自身の経験やスキルをデータに基づいて客観的に把握し、戦略的にキャリアを形成することが可能になります。さらに、生産性や健康状態に関するデータをリアルタイムに提供することは、従業員の自己管理を支援し、ウェルビーイングの促進にも寄与すると考えられます。
マネージャーへのデータ提供意向も13ポイントの差があり、これは組織のパフォーマンス向上に向けてマネージャーに期待される役割の拡大を示していると思われます。従業員一人一人の志向、労働状況、パルスサーベイ結果などをまとめたBIダッシュボードで提供することで、定量的なデータに基づく意思決定の実現や、チームの動き方に対する適切なアドバイスを提供することが可能となります。
また、データアナリティクス部門への提供意向は、現状の提供状況(1%)に対して大幅に高い15%となっています。これは、人材データの複雑化と分析ツールの高度化に伴い、専門的な解釈と分析が不可欠となっていることを反映しており、人事部門とデータ分析の専門家の協働の重要性がますます高まっていると言えるでしょう。
図表5:人材データ分析結果の提供範囲
データアナリストの採用・育成に向けた取り組みは、主に大企業を中心に進展していることが確認されました。その方法としては、人事部からの育成、社内のデータアナリティクス人材の再配置、そして社外からの採用が大企業でそれぞれ28%と同等の割合を示しており、いずれも有力な選択肢となっています(図表6)。私たちは、ピープルアナリティクスの推進に必要なスキルには図表7に挙げた4種類があると考えていますが、今回の結果はこれらのスキルを全て満たす人材の獲得には、単一の方法では難しいことを示唆しています。
図表6:データアナリストの採用・育成に向けた取り組み状況
図表7:ピープルアナリティクスに必要な4つのスキル
図表8は人材データを活用するデータアナリスト育成施策についての回答結果です。特に施策を実施していない(「特にない」)大企業は28%にとどまり、72%はなんらかの育成施策を実施しています。最も多く取り組まれているのは、「E-Learningツール・サービスの活用」と「自己学習プログラムの活用」で、ともに48%の企業が採用しています。データ分析の方法論やスキル習得に関するコンテンツは、動画サイトや外部E-Learningツールなどに豊富に用意されているため、これらを活用することで、企業は比較的安価に従業員のスキルアップを図ることが可能です。
一方、人材データに特有の特徴(相関係数が高く出にくい、データ件数が確保できないなど)に関するリテラシーは、社内の研修プログラムやOJT機会など実践の場を通じて習得する必要があります。これらの結果は、データアナリスト育成において多角的な学習機会の提供が必要であることを示唆しています。
図表8:データアナリスト育成のための取り組み状況
人材データ分析における今後の強化ポイントとして、大企業の79%が「現場主導の人材データ活用」を挙げています。これは全体平均の48%を大きく上回り、大企業特有の傾向を示しています(図表9)。この結果は、データ活用が成熟段階に入った大企業において、データ基盤整備やアナリスト育成といった初期投資段階から、具体的な課題解決へと焦点が移行していることを示唆しています。
また、生成AIの進化により、従来は実装の負荷が高かった「エンドユーザーにとって使いやすいデータ可視化」などが、より容易になると予想されます。ただし、データリテラシー、統計学、機械学習、生成AIに関する基礎知識の重要性は変わらず、これらのスキル開発は継続的に必要です。
「現場主導」のデータ活用をさらに推進するためには、以下の点も重要になるでしょう。
これらの要素を統合的に推進するチェンジマネジメントが、今後のピープルアナリティクスの成功を左右する鍵となるでしょう。
図表9:人材データ分析において今後強化すべき要素
本調査結果から、日本企業のピープルアナリティクスは今までの傾向に沿って進展しつつも、個人重視のデータ活用、データ活用の民主化と現場主導のデータ活用という地に足の着いた活用にシフトしていることが分かりました。このような傾向には、最新ツールの利活用に向けた従業員のリテラシー向上やスキルアップはもちろんのこと、それらを支える企業風土の醸成が必要不可欠です。
今後は、データから得られた洞察を実際の意思決定や施策に効果的に結びつけること、また新技術の活用と倫理的配慮のバランスを取ることも重要となると考えられます。また人事部独自で活用を進めるのではなく、関連する部署と連携を図りながら、人事の知見とデータ分析の技術力を融合させていくことも成功の鍵となるでしょう。
*1 PwC「生成AIに関する実態調査 2025春 5カ国比較」(2025年6月発行)
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/generative-ai-survey2025.html
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