どうすれば海外子会社のリスクを効果的に管理できるのか?

2015-07-10

日本企業のアジア展開と本社管理部門の悩み

アジアの新興国市場は、多国籍企業に魅力的な投資の機会を提供しています。
日本企業にとって、これらの新興国市場の重要性はますます高くなる一方、欧米企業だけでなく中国・韓国企業などとの競争は激化しており、現地市場の開拓・拡大など、各社、生き残りをかけて競争力強化に努めています。

海外展開は、外国との単純な輸出入から始まり、加工貿易拠点、生産拠点、現地市場の開拓・拡大まで、いくつかの発展段階を経て、現地化へと進展することになります。そして、中国やインドネシアなど巨大マーケットが存在する地域に、生産および販売機能を集積することになると、リスクマネジメントの現地化も同時に求められるようになります。 そのような中において、現地のリスクマネジメントを強化するために、本社はどのような役割を持ち、どのような支援を行うべきでしょうか?

図1では、本社管理部門の典型的な悩みを紹介しています。
本社管理部門(HQ)、地域統括拠点(RHQ)、業務委託先、孫会社、買収後企業、合弁会社など本社から管理対象が離れるほど、現地の経営実態が把握しにくくなります。また、経営実態が見えないと、早期にリスク兆候を発見し、適切かつ迅速に意思決定を行うことも困難になります。

図1.本社管理部門の悩み

リスクマネジメントの実態

海外子会社におけるリスクの顕在化は、これまでの経営努力が一瞬で台無しになるほどのインパクトを持つこともあります。例えば、贈収賄、調達不正、資産盗難、経理不正、技術情報漏えい、外部委託先の食品衛生問題などは、発生可能性が高い事例ではないでしょうか。

図2.注意すべきリスク

また、新興国において発生するリスクは、内部統制の限界を突き、会計帳簿などに残らない手口を選好する傾向があり、日本国内の子会社で実施してきたようなリスクの予防・発見策では、十分に対応できない可能性もあります。図3は、新興国によくみられるリスクの特徴になります。

図3.アジア新興国におけるリスクの特徴

本社管理部門の役割と対応の方向性

次に、海外子会社のリスク管理を強化するために、以下の課題について対応の道筋を解説します。

  • 本社はどのような役割を持ち、どのような支援を行うべきでしょうか?
  • また、ハイリスクと考えられている孫会社、買収先企業、合弁企業、外部委託先のリスクをどうすれば効率的に管理できるでしょうか?

本社管理部門の役割は、海外子会社の指導・監督が主なものとなります。
図4は、本社と子会社のリスクマネジメントに関する役割の違いを説明しています。本社は、海外ビジネスの促進とリスクマネジメントを強化するために、海外子会社の経営実態を把握し、継続的にモニタリングすることが求められます。本社の責任を放棄し、現地に経営を丸投げした会社において、不正取引が発覚し、本社の責任が問われるケースは、枚挙にいとまがありません。

図4.本社の役割

では、可視化とモニタリングはどうすれば実現できるのでしょうか?
図5は、従来の指導・監督活動とこれからの指導・監督活動を比較しています。これまでは、人がサンプリングで海外子会社の経営実態を把握してきました。また、海外子会社からの報告資料などを信頼して、オペレーションレベルのチェックまでは十分に踏み込めていませんでした。
しかしながら、昨今、テクノロジーを活用して、海外子会社の全ての取引傾向を可視化し(経営ダッシュボードなども含まれる)、異常値や異常取引の継続的な監視の仕組みを構築する先進的な企業が欧米を中心に増えてきています。

図5.本社による効果的な可視化とモニタリング

リスクアナリティクスの概要

それでは、具体的なモニタリング方法を見ていきます。
海外子会社に点在する、現地会計システムのデータ、Excelの管理帳票、従業員のメールのやり取り、現地メッセージングサービスおよびソーシャルメディアのデータを収集・分析・可視化し、これらのデータから疑わしい取引の兆候を発見するための、モニタリングダッシュボードを構築します。

図6は、作成したダッシュボード事例になります。これらの分析結果から異常取引をスコアリングし、リスクの大きさに基づき、適切な対策を検討します。
本社は、海外子会社の取引を継続的にモニタリングできるようになるため、ハイリスク領域の取引にフォーカスして、子会社調査や内部監査を計画できるようになります。

図6.データ駆動型のモニタリング

データ分析からモニタリングの仕組みを構築するまでの流れは、図7になります。

図7.リスクアナリティクスのサイクル

まとめ

これらのソリューションは、テクノロジーの進展により、以前よりも低コストで調達できるようになりました。それに伴い、効率的に現地経営実態の可視化と継続的モニタリングの仕組みを構築することが可能となっています。

私どもアナリティクスセンターは、日本企業の競争力強化や生産性向上に向けて、最新のビックデータテクノロジーとPwCの伝統的なリスクマネジメントに関するケイパビリティを融合させることで、リスクマネジメントやコンプライアンスの変革を支援しています。

以上、リスクアナリティクスによって、海外子会社のリスクを効果的に管理する仕組みについてご紹介しました。引き続き、次回以降のコラムで具体的なアナリティクスソリューションや、業界に特化したアナリティクス例などについてご紹介していきます。

プライスウォーターハウスクーパース株式会社
マネジャー 西川 智章


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