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ある日、SNSで見知らぬ相手からメッセージが届く。
「あなたの投稿を見て、素敵だと思いました」
最初は軽い挨拶から始まり、やがて毎日メッセージを交わすようになる。
相手は優しく、あなたのことを理解しようとしてくれる。
「運命の人かもしれない」―そう思った矢先、相手から投資の話を持ちかけられた。
「これを機に私たちの未来を築こう」
あなたなら、この申し出を疑うことはできますか?
警察庁によれば、2024年の国内のSNS型ロマンス詐欺(以下、ロマンス詐欺)の認知件数は3,824件(前年比+2,249件、+142.8%)、被害金額は400.9億円(前年比+223.6億円、+126.1%)と、ともに前年から大きく増加しています。被害者の男女別年齢層は、男性は50~60歳代で合計53.3%、女性は40~50歳代で合計57.5%となっており、ともに中高年世代だけで半数を超えています。被害額は数百万円から中には1億円超のケースもあり、被害の高額化が顕著です(図表1)。
図表1:ロマンス詐欺被害者の年齢層・被害額
出所:警察庁「令和6年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値版)」を基にPwCにて作成(2025年6月4日閲覧)
デジタル世界では、現実の制約を超えて、どんな人物にでも自由に「なりすます」ことが可能です。これは、詐欺師にとって理想の環境といえます。彼らは巧妙に作られたプロフィールや豪華なライフスタイルを示唆する投稿を駆使して信頼を築き上げます。顔が見えず、声も聞こえないコミュニケーションでは、現実ではそのような人物と接点がなくとも都合の良い幻想を抱いてしまうというリスクがあります。こうした状況が、なぜ人は見知らぬ相手を信じるようになるのかという根本的な問いを生み出します。
ロマンス詐欺は、単なる「騙されやすい人」の問題ではありません。
詐欺師たちは、被害者心理を巧みに操り、信頼関係を築く技術に長けています。具体的なアプローチについて図表2に示します。
図表2:ロマンス詐欺の手口例
出所:警察庁「特殊詐欺対策ページ」を基にPwCにて作成(2025年6月4日閲覧)
詐欺師たちは、私たちが普段利用するマッチングアプリやSNSを使って接触してきます。容姿端麗なアイコン、成功した投資家や会社役員などの高い社会的地位を騙ったプロフィールにより、「あなた」の目を惹きつけます。趣味や価値観を共有することで相手に親近感を持たせ、長期間の日常的なやり取りを続けることで安心感を与えます。また、「あなたなしでは生きられない」、「運命の相手だ」といった感情に訴える巧妙な話術を用います。相手を信じてしまった「あなた」は最終的に金銭を詐取されてしまいます。
しかしながら、「あなた」が信じた相手は現実に存在せず、目にしたプロフィールと乖離した年齢、性別、容姿、国籍、職業の人物がなりすましを行っているのが現実です。
では、騙された人はどうなるのでしょうか。
金銭的被害だけでなく、被害者本人の精神的ダメージや社会的信用の喪失も発生し得ます(図表3)。
図表3:被害の種類
| No. | 種類 | 概要 |
| 1 | 金銭的被害 |
|
| 2 | 精神的ダメージ |
|
| 3 | 社会的信用の喪失 |
|
ロマンス詐欺の被害にあったことが判明した後、お金を取り戻せるのでしょうか。
一般的には被害回復は困難とされています。「必ずお金を取り戻せる」という弁護士による誇大広告の問題も起きています(図表4)。
図表4:被害回復の現実
| No. | 種類 | 概要 |
| 1 | 詐欺師の資産を追跡することは困難 |
|
| 2 | 弁護士に依頼しても回収は厳しい |
|
| 3 | 被害届を出しても、解決しないことが多い |
|
ロマンス詐欺は、もはや特定の層だけの問題ではありません。被害者は若年層から高齢者まで幅広く、デジタル世界と接点を持つ誰もが騙されるリスクを抱えています。
「この人は本当に信頼できるのか?」
「顔を見たこともない相手をなぜこんなに好きになっているのか?」
私たちは、現実では起こりえないことがデジタル世界で成立するのか、という常識を疑う力を身につけることで詐欺の被害にあうリスクを大きく下げることができます。
また、昨今のロマンス詐欺の被害拡大を受け、政府もマッチングアプリやSNS事業者に対して、本人確認の厳格化を働きかけています。事業者も一体となって対策を講じることで、社会全体としてロマンス詐欺の被害を抑止することにつながります。
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