変わる境界

拡大するフィンテックの影響

金融機関にとってフィンテックは、革新か、破壊か、チャンスか、それともその全てか?

今、フィンテック企業は世界中の金融機関において無視できない存在となってきています。金融機関は、フィンテックによる破壊(ディスラプション)的性質を受け入れ、フィンテック企業との協業などの対応を進めており、両者を隔てる境界が変化しています。

本報告書は、PwCが71カ国、1,300名を超える金融機関およびフィンテック企業のエグゼクティブに対して実施したグローバルフィンテック調査における日本とグローバル全体の回答の比較に基づくものです。グローバルと日本のフィンテック投資に対する意識の差がどこにあるのかを明らかにし、フィンテックが日本の金融機関にもたらす機会と今後の課題について考察しています。

主な調査結果

Q:貴社業界において、フィンテック台頭による機会についてお聞かせください(上位3つの機会を選択、フィンテック企業は回答対象外)

既存のビジネスモデルの延長線上にある 日本のフィンテック

既存のビジネスモデルの延長線上にある
日本のフィンテック

グローバル(世界全体)、日本ともに9割の金融機関が、自社のビジネスの一部が、フィンテック企業に奪われる脅威にさらされていると回答している。しかしながら、グローバルの金融機関が年間営業収益の15%をフィンテックに投資していると回答したのに対し、日本の金融機関は6%に留まった。

フィンテックの台頭による機会を尋ねた質問に対し、日本の金融機関の回答のトップとなったのは、人件費の削減でグローバルの倍近くの回答となっている。グローバルより回答が多かったもう一つの項目はITインフラコストの削減だった。一方で、グローバルでは、フィンテックに商品・サービスの拡大(60%)を期待する回答が最も多くなっている。

グローバルにおいては、フィンテックについてゲームチェンジを起こすようなイノベーションの可能性を想定し対応しているが、日本の金融機関は、既存のビジネスモデルを前提とした効率化を期待していることが推察される。

ブロックチェーンなどテクノロジーへの理解は進むも、活用には遅れ

ブロックチェーンは、金融業界のインフラ費用を大幅に引き下げ、また金融取引、スマートコントラクトなど、さまざまな用途への拡大の可能性が期待されている。

ブロックチェーンは重要性の高い技術として注目されており、日本において、ブロックチェーンに全く馴染みがない人はわずか6%であった。しかしながら、ブロックチェーンをいつ採用するか分からないとしている企業は約4割に上る。グローバルでは、採用時期が分からないとしているのは2割未満で、約7割の企業が2019年までに採用すると答えており、今後ブロックチェーン技術を実装したシステムの導入が進んでいくものと推察される。

Q:ブロックチェーンまたは分散型台帳技術についてどの程度、馴染みがありますか?

Q:プロダクションシステム/プロセスの一環として貴社組織がブロックチェーンを採用するのはいつ頃になると思われますか?
(上記質問で「全く馴染みがない」と答えた企業は回答対象外)

Q:フィンテックにかかわるイノベーションにおいて、規制障壁が見られる分野はどこですか?(あてはまるものを全て選択)

イノベーションに向けた課題
サイバーセキュリティ、規制への対応

日本の金融機関はフィンテックの台頭による脅威としてサイバーセキュリティとプライバシーの侵害をトップに挙げている。金融業務において信頼は事業の根幹であり、サイバーセキュリティは、単なるITやコンプライアンスの問題としてではなく、経営課題として取り組む必要がある。

また規制への対応も課題である。イノベーションの障壁となる規制の分野として、グローバルではデータストレージ、プライバシー保護、デジタルアイデンティティ認証、AML/KYC、日本ではデータストレージ、プライバシーの保護、デジタル通貨/仮想通貨、(クラウドファンディング、P2P融資など)の新たなビジネスモデルが上位に挙げられている。

金融機関への規制が複雑かつ増大する中で、イノベーションの促進には、規制対応やリスク管理にテクノロジーを活用し、効率化していく取り組みを官民連携で進めいていくことが求められる。

金融機関の9割がフィンテック企業とのパートナーシップを拡大予定

日本企業はデザインシンキングやリーンスタートアップといったイノベーションに関連のあるスキルに苦手意識を持つ傾向がある。しかしながら、日本の金融機関が顧客に選ばれ生き残っていくには、デジタルを活用し、顧客ニーズを的確に把握する必要がある。

現時点ではグローバルに遅れをとっているものの、本調査に回答した日本の金融機関の91%が今後3年から5年の内にフィンテック企業とのパートナーシップを拡大するとしている。

今後は、外部組織とのパートナーシップや組織文化の変革を通じて、新しいテクノロジーを速やかに理解し、適用できる組織に強化するため、人材戦略の見直しも求められるだろう。

Q:現在、フィンテックにどの程度対応していますか?フィンテック企業とパートナーシップを結んでいると回答した企業の割合
(フィンテック企業は回答対象外)

調査結果データを見る

世界71カ国、1300社を超える金融機関・フィンテック関連企業のエグゼクティブがフィンテックやエマージングテクノロジーの影響をどう見ているか、また貴社や、貴社の属する業界・領域においてこれらのテクノロジーがどういった意味を持つのかなど、こちらから確認することができます。

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主要メンバー

鈴木 智佳子

パートナー, PwC Japan有限責任監査法人

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