データマネタイゼーション実態調査2025

PwCコンサルティング合同会社のAnalytics Insightsチームは2022年より毎年、日本国内企業のデータマネタイゼーション(データ利活用による新たな価値創出)の検討状況や課題感に焦点を当てた「データマネタイゼーション実態調査」を発表してきました。
4回目となる今回の調査では、前年からのデータマネタイゼーションの検討状況や課題感の変化を確認しました。また、データマネタイゼーションによって「成果を上げた(上げている)」と感じている回答者に対し、具体的な成果を上げるための工夫や外部機関の活用方法などについてのアンケートを行いました。

本調査のハイライトは以下のとおりです。

  • 4人に3人は何らかのデータマネタイゼーションを検討(または過去に検討済み)となり、データマネタイゼーションの活動は定着
  • 本活動の責任者として、従来のCxOクラスではなく事業部長クラスが責任者を担う機会が増加。経営層と管理職層との間の認識のギャップも解消傾向にあり、現場主導の活動へと移行中
  • データマネタイゼーションは業界を問わず進展。「データを活用した分析・コンサルティングサービス」「既存事業の機能拡張・高度化」が主流のユースケース
  • 1/4が依然としてデータマネタイゼーションに未着手であり、そこには「活動による費用対効果」「経営層や周囲からの理解」「データマネタイゼーションのアイデア」などのいわゆる「始まりの壁」が存在
  • データマネタイゼーションで成果を上げるために重要なことは「適切な社内プロセスとステージゲートの設定」「質の良いユースケースの企画」「必要なデータの収集」
  • 業界動向や他社事例等の情報収集の場としては、業界団体やコンソーシアム活動が一定の効果あり

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現場への権限移譲が進み、既に4人に3人は何らかのデータマネタイゼーションを検討

データマネタイゼーションの検討状況に関する質問では、データマネタイゼーションを「実現できている」と回答した人が27.1%に到達。「実現に向けて検討・推進中」と回答した人を含めると、実に4人に3人が何らかのデータマネタイゼーションを検討中という結果となりました(図表1)。

図表1:データマネタイゼーションの検討状況

また、データマネタイゼーションの活動の責任者に関する質問では、CxOクラスの回答が昨年の73.1%から59.5%へ減少し、代わりに事業部長クラスの回答が21.4%から31.7%へ増加しました(図表2)。これらの変化に伴い、データマネタイゼーションへの期待効果についての質問でも経営層(CxO、執行役員)と管理職層(部門長、事業部長、部長、マネージャー)の認識のギャップが昨年から最大で-10.4ptと大きく低下しました(図表3)。昨年の調査では、データマネタイゼーションを推進する上での課題の1つに経営層と管理職層の認識の差異がありましたが、今回の結果では経営層から管理職層への権限移譲が進み、現場主導の取り組みへと移行しつつあることが伺えます。

図表2:データマネタイゼーション推進の責任者

図表3:データマネタイゼーションに関する期待効果 経営層・管理職層間の認識ギャップ

「既存事業の高度化」「分析・コンサルティングサービスの提供」による価値提供を模索中

業界別のデータマネタイゼーション実現状況では、多くの業界でデータマネタイゼーションの実現度合は昨年から進展しており*1、特に運輸・物流業、商社、自動車業では最大で昨年から+21.9ptと大幅な進展がみられるなど、業界を問わずデータマネタイゼーションの活動が盛んに推進されていることが示されました(図表4)。

*1 公共事業、不動産業、エンジニアリング・建設業を除く。

図表4:業界別・データマネタイゼーション実現状況

昨年度から大きな進展を見せた3つの業界において、具体的なユースケースを確認したところ、「既存事業の機能拡張・高度化」「データを活用した分析・コンサルティングサービス提供」が上位となり、次いで「データ活用のソリューション販売」となりました(図表5)。自社の顧客基盤やノウハウの通用しない「飛び地」で新たなビジネスを立ち上げることのハードルの高さ故に、多くの企業が既存ビジネスからの“地続き”で新たな価値創出を考えていることが伺えます。

図表5:運輸・物流業、商社、自動車業で特に成果を上げたデータマネタイゼーションのユースケース

社内プロセスやゲートの定義、必要な情報の収集、質の良いユースケース企画が「始まりの壁」を超えるカギ

データマネタイゼーションの活動を進める上での課題感について、「未着手・未検討」「検討・推進中」の回答者の回答内容を比較したところ、以下の3つの課題感が抽出されました(図表6)。前述の通り、1/4の回答者はデータマネタイゼーションに未着手な状況であり、そこには「始まりの壁」が存在することが示されました。

1. 始まりの壁…「未検討・未着手」の回答者がより強く意識する課題
(例)取り組みの意義・メリット・費用対効果、経営層や周囲からの理解、データマネタイゼーションのアイデア

2. 生みの苦しみ…「検討・推進中」の回答者がより強く意識する課題
(例)必要な人材・スキルセット、アイデアから筋の良い企画への昇華、人材不足

3. 共通課題…いずれの回答者でも共通して上位に挙がっている課題(1,2を除く)
(例)社内プロセスの煩雑さ、検討のアプローチ(何から着手すれば良いか分からない)、必要なデータ

図表6:データマネタイゼーションの検討推進上の課題

また、データマネタイゼーションで成果を上げるための工夫や必要な情報、人材のスキルセットについて、「必要な社内プロセスとゲートの定義(25.6%)」「社内・社外秘情報の収集(26.1%)」「ユースケース企画スキル(31.1%)」」にそれぞれ最も多くの回答が寄せられました(図表7)。質の良いユースケースを企画するとともに、それに必要な情報を集めて実現性を高めること、また適切な社内プロセスを整備することで検討を加速させ、前述の「共通の課題」+「始まりの壁」を超えることが最も効果的であると読み取れます。

図表7:データマネタイゼーションで成果を上げるための工夫、重要な情報、人材のスキルセット

また、データ利活用やデータマネタイゼーションを検討する上で、関連する業界団体やコンソーシアムへの参画も有効です。今回の調査では、特に「業界動向や他社事例の収集」を目的とする場合において、業界団体やコンソーシアム活動への参画により一定の効果を得られることが示されました。一方で「パートナー候補企業の選定」と「具体的な検討アプローチの学習」を目的とした場合の達成状況は、それぞれ36.9%と36.6%にとどまっていたことから、データマネタイゼーションについてより具体的なアプローチを検討する段階においては、業界団体やコンソーシアム活動に依存せず複数の手法を用いることが効果的と考えられます(図表8)。

図表8:業界団体・コンソーシアムの参画目的と目的達成状況

本調査のまとめ

本調査から得られた、日本国内企業のデータマネタイゼーションの検討状況は以下のとおりです。

図表9:まとめ

PwCコンサルティングのAnalytics Insightsチームでは、企業のデータマネタイゼーション実現に向けた組織変革と実行を後押しする「データマネタイゼーション支援ソリューション」を提供しています。
データマネタイゼーション支援ソリューションは、変化の激しい市場や顧客ニーズに対応しながら提供価値を高め続けることを主眼に置いています。“小さく始めて大きく育てる”スモールスタートの事業開発アプローチを採用し、データマネタイゼーションのアイデア創出から実現、事業開発に向けた組織の検討や人材育成までを一貫してサポートします。

データマネタイゼーション支援ソリューションについての詳細はこちらからご覧ください。

図表10:PwCが考えるデータマネタイゼーション成功のアプローチ

調査概要

調査目的 企業におけるデータマネタイゼーションやデータ流通の認知・検討・実行状況と課題を把握すること
調査方法 調査会社パネルを活用したインターネットモニター調査
調査期間 2025年2月17日(月)~2月21日(金)
調査対象 売上高500億円以上の企業に勤務し、データマネタイゼーションやデータ流通に対する意思決定、方針検討、企画・検討・立ち上げ、情報収集・アドバイスを行う立場の方(原則として国内在住者を想定)
有効回答 1,010件

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問い合わせ先

河野 美香

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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辻岡 謙一

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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宿院 享

シニアマネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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