上記はPwC米国発行のレポートを翻訳した内容ですが、PwC Japanグループでは、ソーシャルコマースが新しく発展途中にあるがゆえに取り組むべき課題が多岐にわたるため、早期からトライアルを繰り返し、学びを得ていくことが望ましいのではないかと考えています。
まず1点目は、重要な取り組みの1つであるインフルエンサーマーケティングについてです。これは、インフルエンサー自身が持つ価値観や影響力、フォロワーとの信頼関係に基づき、ブランドの価値観に共感してくれる潜在的な消費者へリーチでき、そして商品やサービスをより身近に信頼できるものとして伝えられることが魅力です。PwCが2024年に世界31カ国20,662人を対象に実施した調査「PwC’s 2024 Voice of the Consumer Survey」によると、近年、インフルエンサーの役割はより大きく拡大し、消費者の41%(アジアパシフィック地域では50%)が、有名人やインフルエンサーによる影響で商品やサービスを購入していると述べています。これほどまでにチャネルとして確立しているにもかかわらず、インフルエンサーによるメッセージの伝達はブランドからの一定のコントロールを失うため、メッセージが意図したとおりに伝わらない、またインフルエンサー自身の行動や言動による炎上にブランドが巻き込まれるといったリスクも伴います。ブランドはこれらのリスクに対応するため、インフルエンサーとのコミュニケーションや契約形態(例えば、企画単位の契約とするなど)についての最適な方法を模索していく必要があります。
もう1つがデータ管理についてです。個人情報を中心としたデータ管理の透明性は、以前からソーシャルメディア・マーケティングの課題ですが、今後ソーシャルコマースの浸透においても継続して取り組むテーマであると言えます。前述した「PwC’s 2024 Voice of the Consumer Survey」のアジア太平洋地域版*では、回答者の74%がソーシャルメディアの利用について自身のプライバシーとデータ共有に懸念を抱いており、50%はソーシャルメディアを通じての購入に対して不安を感じています。消費者の懸念はどこで発生しているのか、どのようなコミュニケーションが懸念の払拭に有効なのかを試行錯誤しながら学んでいくことが、ブランドの信頼へつながっていくと考えます。
ソーシャルコマースは、消費者がブランドや商品・サービスに興味を持ったその瞬間を逃さずに購買までつなげられる点で大きなポテンシャルを持ちますが、一方でまだ発展の途上にあるため、早期から経験を積み重ね学びを得ていくことが競争優位性の獲得につながると私たちは考えています。
*PwC「Voice of the Consumer Survey 2024: Asia Pacific」