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自動車の将来動向:EVが今後の主流になりうるのか 第3章

2019-02-26

第3章 脱石油に向けた自動車のエネルギー対応(カーボンフリー燃料への転換、トータルCO2排出量)

バイオ/水素燃料への転換

図表1は脱化石燃料化に伴う各種クリーン燃料・エネルギーの従来エンジン車、次世代車での活用法です。エネルギー多様化に向けては、インフラ、コスト、CO2地中貯留(CCS)など課題が多い中で、バイオ/電気/水素の活用が今後の鍵となります。特にバイオ/水素燃料はエンジン車に使え、CO2フリーも実現できます。

従来、発電セクターにおいてはエネルギーの多様化を進めてきました。運輸セクターにおいても、石油系燃料依存から天然ガス、カーボンニュートラル燃料(エタノール、バイオディーゼル)、カーボンフリー燃料(水素)、電気エネルギーに転換することが急務となります。水素はFCVのみならずエンジン車の燃料としても使え、あらゆる産業のクリーンエネルギーとして活用することが可能です。電力セクターにおいても、2020年以降は石炭などの化石燃料の使用がピークアウトするため、再生可能エネルギーやバイオ燃料に転換していく必要があります。当面、電気自動車はWell to Wheel(WtW)ではガソリンHVよりもCO2排出量は多い(詳細は後述)ですが、大都市での大気汚染対策手段として導入することはやむを得ないでしょう。再生可能エネルギー(風力、太陽光など)による発電は安定していないため貯蔵が必要となりますが、水素に変換しておけば、貯蔵のみならず、電池よりも容易に輸送可能なので、注目が集まっています。

Well to Wheel:製造から走行までの過程を表します

今後、エンジン車、次世代車の技術開発を推進するのと併行し、石油系燃料に代わる天然ガス、バイオ燃料、水素、電気への転換を今から急速に進める必要があります。

図表2は各種燃料の体積当たりのエネルギー密度の比較です。ガソリンを基準にして比較すると、移動体としての自動車に最適な燃料は液体燃料ですが、液体燃料の中でエタノールは発熱量が少ないため、エネルギー密度は40%程度劣ります。天然ガス、水素などの内燃機関への適用に関しては、航続距離の問題から液化などの技術開発も今後必要となります。電池に関しては、重量当たりのエネルギー密度で考察するのが妥当ですので、ここでは説明を省きます。

図表2:各種燃料の体積エネルギー密度

図表3に各種燃料ごとの自動車のWtW CO2排出量を整理しています。燃料の製造・輸送時に発生するCO2排出量をWell to Tank(WtT)CO2排出量、自動車が走行中のCO2排出量をTank to Wheel(TtW)CO2排出量、それらを合わせたものをWtW CO2排出量と定義します。自動車により使用する燃料あるいはエネルギーが変わる場合、CO2排出量はWtWで比較検討する必要があります。

ガソリン車と比較し、HVは50%、ディーゼル車は75%程度のCO2排出量となります。バイオエタノール(サトウキビ)を使ったSIエンジン車では20%程度となります。バイオ燃料は成長過程でCO2を吸収するため、カーボンニュートラル燃料と呼ばれます。ただし、バイオ燃料を製造する過程でエネルギーを使用する際に発生するCO2排出量がカウントされるため、100%低減とはなりません。今後は、バイオ燃料製造時のCO2排出量低減の検討が必要になってくるでしょう。水素に関しても再生可能エネルギーで発電した電気により製造されたものでなくてはなりません。

バイオ燃料は、脱石油燃料としてエンジン車での展開拡大が比較的早いと考えられます。また、バイオ燃料の活用は、温暖化に対応するためのCO2削減に貢献し、かつ新しい産業の雇用創出にもつながると考えられます。

米国の再生可能燃料基準(RPS:Renewable Fuel Standard)は2005年から開始されました。バイオ燃料への転換が現実化したきっかけは、2010年前後のオイルピーク報道に始まります。その後、米国ではシェールオイル、ガス採掘が採算にのるということから、バイオ燃料の生産は頭打ちになりました。しかし現在の状況はオイルピーク報道のあった当時とは異なります。環境保護のおよびCOP21対応の観点から、今後は石油が採掘できるとしてもバイオ燃料への転換を急速に進めることが必要になります。石油は埋蔵されていても使えないということになります。

バイオ燃料にはガソリン燃料の代替となるバイオエタノール(直接混合とETBEに変換して混合)と軽油燃料の代替となるバイオディーゼル(脂肪酸メチルエステルFAME:Fatty Acid Methyl Esters)および酸化劣化の少ない水素化植物油(HVO:Hydrotreated Vegetable Oil)があります。全世界のバイオ燃料の年間生産量は、2015年時点で1.6億キロリットル(1.2億トン)で、これは自動車の年間石油消費量20.3億トンの約6%に相当します。バイオエタノールは80%、バイオディーゼルは20%の比率となっています。

図表4:バイオエタノール生産実績(百万kl)と今後の予測

図表4はエタノール燃料の世界の生産実績(~2015年)と生産予測(2020年~)です。米国とブラジルの合計が約70%を占めています。詳細は後述しますが、2040年に向けてエンジン車用に6億トン程度のバイオ燃料の活用検討が必要となります。

電気の水素変換

また、再生可能エネルギーの効率的な活用として、電気の水素変換が注目されています。

図表5は各種エネルギーの貯蔵期間と貯蔵量です。再生可能エネルギー発電は電源の供給が不安定なため貯蔵が必要となます。特に、バッテリーの場合は貯蔵量がメガワットレベルで自然放電も伴います。一方、水素に変換しておけば、季節を超えたギガワットレベルの電気エネルギー貯蔵法として、再生可能エネルギーの効率的活用が可能となります。またバッテリーに比べ軽く、輸送も容易です。

図表5:各種エネルギーの貯蔵期間と貯蔵量

日系完成車メーカーを初めとするグローバル13社は、2017年1月に水素協議会を設立しました。水素エネルギーを活用する新たな社会システムに向け、ビジョンと長期目標を提唱し、日本政府の後押しもあって、2017年11月にはCOP23で以下をアナウンスしました。2018年9月時点で参加企業は54社まで大幅に拡大し水素化社会実現に向けた世界的な活動が始まっています。

  • 二次エネルギーとしての「水素」需要は、2050年までにあらゆる動力の20%を見込む。産業セクターでも、原材料、熱源、動力源、発電用、貯蔵など、さまざまな用途で利用されると想定。
  • 2030年までに乗用車1500万台、トラック50万台の燃料電池車が走る(新車販売2030年1.5%に相当)

発電形態とWtW CO2排出量

図表6は発電形態に着目した、ガソリン車、HV、EVでのWtW CO2排出量比較です。

図表6:ガソリン車、HV、EVのWtW CO2比較

CO2排出量を比較する際は、発電形態とシステム効率を考慮に入れる必要があります。エコなイメージがあるEVも、従来の化石燃料による発電ではWtW CO2排出量はHVより多くなります。原子力発電が主流の仏ではHVに対しEVのWtW CO2排出量が少なく、逆に発電に石炭を多く使っている中国、インドではEVのWtW CO2排出量は悪く、システム効率25%のガソリン車並みとなります。(都市部で大気が改善されても、発電所周辺の大気は大幅に悪化)。さらに、米国および2011年福島原発事故以降の日本においては、EVはHVよりもWtW CO2排出量が悪いです。

ここで少し電力セクター、エネルギーセクターの今後の動向について触れます。社会全体で再生可能エネルギーによる電力利用がますます重要となるでしょう。ただし、電力セクターはEVのために再生可能エネルギーに転換するのではなく、COP21パリ協定の目標達成のために独自に脱化石燃料への転換を図る必要があるということを認識しておく必要があります。オイルメジャーなどのエネルギーセクターにおいては、自動車メーカーがCOP21パリ協定の目標達成に向け、燃費改善、脱石油化を図れば、需要は確実に減少していくと見られます。自動車メーカーには規制値という強制力があり、今後はより厳しい値に見直すことが必要とされるでしょう。ここで最も課題を抱えているのは電力セクターです。経済産業省は2030年に向けた電力のセールスミックスを公表しましたが、石炭火力の抑制、再生可能エネルギー拡大に関しては先進国の中で最も後れを取っていると言えるでしょう。現時点で欧米主要国の再生可能エネルギー比率が30%を既に上回っているのに対し、日本の目標値は2030年においても23%です。

執筆者

藤村 俊夫

顧問, PwC Japan合同会社

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