
製造業の未来を切り開くエンジニアリングチェーンのDX
日立製作所のリーダ主任研究員 長野岳彦氏と主任技師 大石晴樹氏、PwCコンサルティングのシニアマネージャー佐藤 涼太が、設計開発領域の変革に取り組む理由、変革ポイント、活動推進における課題について議論しました。
2020-11-16
本レポートでは、PwC Japanグループが掲げる7大アジェンダのうち、自動車・モビリティ産業において企業が取り組むべき「DX(デジタルトランスフォーメーション)」について論じます。
自動車産業におけるDXは、昨今の事業環境変化によって、これまでの先進性を打ち立てる/差別化を図る「加点領域」から、事業環境変化への対応に不可欠な「減点領域」に移行しつつあります。もはやDXは各企業が取り組まなければならない重要な経営課題と言えます。企業経営には、新規事業と既存事業の2領域がありますが、それぞれにおいてDXに取り組む必要があります。
完成車メーカーの場合、「モビリティエコシステムのどのレイヤーで事業展開していくか?」を具体化し、事業構造を変革することが重要です。IoT(モノのインターネット)により生み出されるエコシステムには「エレメントデータ層」「データプラットフォーム層」「アプリケーション層」の3レイヤーがあります。このうち「どこにフォーカスして事業を行うと有利なのか?」「その中で、異業種も含めて誰と組むべきなのか?」「どう儲けるのか?」といったビジネスモデルの具体化や、データの蓄積・活用、API(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)の設計などを進めていく必要があります。
部品メーカーの場合、完成車メーカーよりも製品や技術をさまざまな領域へ用途展開しやすいという特徴があります。エコシステムでのポジショニングを考えるべき完成車メーカーとは異なり、従前から事業成長の検討基軸であった「市場・顧客軸」と「製品・技術軸」の2つの方向で事業展開を考えた方が、拡張性が高くなります。自社のコア技術を棚卸しした上で、「市場・顧客軸」では、自動車市場での既存顧客拡大と新規顧客開拓、自動車以外の市場での新規顧客開拓という方向性を、「製品・技術軸」では、単品部品から周辺部品への製品領域の拡大、部品売り切り(モノ売り)から部品に関わるデジタルデータを活用したモノ+コト売りへの拡大、これまで培った開発技術・評価技術・製造技術などのノウハウ外販といった方向性を検討していくとよいでしょう。
ここでは、高度化・複雑化をたどる製品開発・製造におけるDXを活用したQCD(品質、コスト、納期)高度化にフォーカスして述べます。
DXによるQCD高度化でまず取り組むべきは設計・製造品質改革です。品質を効果的・効率的に作り込めれば、おのずとコスト低減やリードタイム短縮にもつながります。DXをドライブするのはデータであり、それを支えるのがPLM(製品ライフサイクル管理)やERP(統合基幹業務システム)といった情報基盤です。品質は開発段階で7割以上が決まるため、開発領域の情報基盤であるPLMシステムが重責を担います。従前のパッケージ起点のシステム導入から、品質を作る業務を起点にグランドデザインを描き、業務要件定義やシステム導入を行うスタイルに変革することが重要となります。
また製造品質を高める上では、開発段階から早期に製造要件や良品条件を設計図や工程表に落とし込み、量産ラインを確立しておくことが求められます。BOP(Bill of Process:製品を組み立てる時の部品ごとのプロセスフロー)による量産工程のモデル化やVR(仮想現実)/MR(複合現実)による試作のモデル化、PLMシステムによる製品/工程のモデル化などに取り組むとよいでしょう。
さらには品質保証の自働化も進めるべきです。これまで困難だった視覚・聴覚といった人間の感覚に頼った官能検査に人工知能(AI)を活用して自働化する技術も進んでいます。工場内外の設備やセンサーをIoTで接続し、取得したデータを相関分析して品質保証を行い、リアルタイムでライン情報を分析することで品質問題を検知・予防することもできます。
日立製作所のリーダ主任研究員 長野岳彦氏と主任技師 大石晴樹氏、PwCコンサルティングのシニアマネージャー佐藤 涼太が、設計開発領域の変革に取り組む理由、変革ポイント、活動推進における課題について議論しました。
近年、自動車業界においてもAI技術の革新が進んでいます。 新たな安全規格となるISO/PAS 8800の文書構成や既存の安全規格(ISO 26262, ISO 21448)との関連性について概要を整理するとともに、AI安全管理およびAIシステムの保証論証について紹介し、AIシステム開発における課題について考察します。
京都大学の塩路昌宏名誉教授と、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、水素小型モビリティ・エンジン研究組合(HySE)の担当者をお招きし、水素社会実現に向けた内燃機関やマルチパスウェイの重要性について議論しました。
京都大学の塩路昌宏名誉教授と、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、水素小型モビリティ・エンジン研究組合(HySE)の担当者をお招きし、産官学連携での水素エンジンの研究開発の重要性と、具体的な課題について議論しました。