
次世代のB2Bセールス ―ヒトとAIの協働による次世代の営業スタイルの実現に向けて―【前編】
AI活用の営業改革を成功させるために、重要な5つのポイントのうち、「ヒトとAI協働での付加価値提供」「営業オペレーションモデル」について解説します。
サードパーティCookieは、デジタルマーケティングにおいて長年、広告主や広告業者によって活用されてきました(図表1)。
図表1
企業のマーケターはウェブサイト上のユーザーの行動を細かく捕捉(把握)するため、サードパーティCookieの収集および分析を実施しています。サードパーティCookie利用の代表例は「リターゲティング広告」です。一度広告に反応したユーザーに対して、繰り返し同じ広告を出稿する手法で、手軽に高い宣伝効果が期待できます。例えば、靴やパソコンといった特定の商品に興味を持ちオンラインで検索した後、無関係なウェブサイトでも同じ商品の広告が繰り返し表示される広告です。「リターゲティング広告」を使うことで、自社ウェブサイトの訪問者に対して自由に自社製品の広告を出稿できるため、広告主からは有用な広告手法として知られていました。このようにマーケターの視点で便利なサードパーティCookieですが、プライバシー保護の観点から廃止の動きが高まっています。
リターゲティング広告は、購入を検討していた顧客を対象としており、上手く機能すれば購買意欲を高める効果があります。他方、購入を検討しておらず、商品名の確認や画像の閲覧といった購入以外が目的である顧客の立場としては、顧客自身のオンライン行動が「追跡」されていると不快に感じることがあります。このように、情報の扱われ方に対して顧客は敏感であり、「信頼」できる企業による効果的かつ確実な取り扱いが鍵となります。
顧客の声などの影響もあり、国・地域も法規制や対策に取り組み始めています(図表2)。このようにプライバシーの観点から、サードパーティCookieは大きな転換期を迎えています。
図表2
欧州ではCookie規制の先駆けとして、2018年にEU一般データ保護規則(GDPR)が施行されました。EU域外の企業にも影響を及ぼすため、日本企業も対応が求められました。
米国では2020年にカリフォルニア州で、EUに追随する形でカリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)が施行され、2023年にカリフォルニア州プライバシー権法(CPRA)に改正されました。カリフォルニア州以外にもCookieを含む個人情報保護規制が進展しており、Cookie対策が重要視されています。日本では当初、Cookieに関する具体的な規制が制定されていませんでしたが、2022年の改正個人情報保護法と2023年の改正電気通信事業法により、Cookieの取得に対する制限が強化されました。一連の法整備により日本企業もCookie規制への対応が求められるようになっています。
こうした動きに呼応する形で、ウェブブラウザを提供する企業も、Cookieの取得に対する規制を進めています。EUでGDPRが施行される少し前から具体的なアクションを起こし、2020年代に入ってサードパーティCookieの完全な廃止に踏み切るケースも出てきました。
もっとも、ブラウザ提供企業側の取り組みも完全に一致しているわけではなく、廃止の期限延期や、廃止の取り下げ等、一貫性のない対応も生じています。このような状況下で広告業界を含め、関連する企業の間では手探りの対応が続いてきました。
国・地域によるCookie規制の強化、そしてウェブブラウザ提供企業によるCookie取得廃止の動きに対応するため、さまざまな企業がサードパーティCookieの代替手段を開発しています。これらの代替手段は大きく2つのタイプに分類されます。サードパーティCookieと同様に、顧客を追跡することで情報を入手する「追跡型」と、個人情報を削除した統計情報や集団として取り扱うことで顧客を特定しない「非追跡型」の2種類です(図表3)。
図表3
前者の「追跡型」はサードパーティCookieが抱えるプライバシーの問題を解決しているとは言い難く、多くの批判を受けています。そのため、サードパーティCookieと同様に規制の対象となる可能性があり、単独で使用する代替手段として長期的な運用は難しいと言えます。
一方、「非追跡型」は精度やコストの問題を抱えています。各技術を導入した際に広告に対してもたらされる影響をいくつかの企業がテストしており、パブリッシャーの収益が減少するという結果も報告されています。収益が減少する理由は技術によるものではなく、プライバシーの考慮とサードパーティCookieの代替の両立そのものが困難であることを示しています。他の代替手段であるデータクリーンルームやコンテキストマッチなども精度やコストの問題を抱えており、業界として同意の取れた画一的な代替手段は現状存在しないと考えられています。
代替手段が混在する状況の中、マーケターとしては、複数の代替手段を組み合わせて活用することが現実的な対策となります。また、顧客一人一人へのマーケティングを行うためには、マーケターが顧客から直接取得するファーストパーティデータ(First party data)や顧客が自らの意志で企業に提供するゼロパーティデータ(Zero party data)を有効活用することも解決策の1つです。顧客が自らの意思でデータを提供するためにも、サードパーティCookieと同様に「信頼」のおける企業による確実な取り扱いが重要となります。
個人情報や個人関連情報といった顧客データを利用した施策は、ウェブサイト以外にもリアルやデジタルを問わずさまざまな場面で必要とされます。したがって、デジタルマーケティングに限らず、企業は顧客からの「信頼」を育むことを前提とした顧客データの収集および利活用戦略を講じていく必要があります。
今回はサードパーティCookieの現状を解説し、現状のマーケティング課題について取り上げました。次回は、顧客からの「信頼」を育むためにマーケターが何をすべきかについて解説します。
AI活用の営業改革を成功させるために、重要な5つのポイントのうち、「ヒトとAI協働での付加価値提供」「営業オペレーションモデル」について解説します。
AI活用の営業改革を成功させるために、重要な5つのポイントのうち「学習データマネジメント」「トラスト」「テクノロジー」について解説します。
第2回では、プライバシー保護重視の時代において顧客からの「信頼」を育むためにマーケターは何をすべきか、顧客理解の重要性とともにアプローチ方法について述べます。
第11回は、金沢大学 融合研究域 融合科学系 教授 金間大介氏を迎え、PwCコンサルティングのディレクター東海林崇とマネージャー池田真由が、労働力減少問題の課題先進業界である「福祉・介護」業界における今後の人材獲得戦略を議論しました。
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