
【2025年】PwCの眼(5)企業のサステナビリティ対応は統合的アプローチに昇華する
カーボンニュートラルに向け、エコカーの生産・販売にシフトしてきた完成車メーカー各社ですが、一方で事業において気候・自然・人権の負荷を同時に高めてしまうリスクが現実味を帯びてきています。課題を可視化し、コスト低減と価値創出を両立させるために企業がとるべき統合的アプローチについて考察します。(日刊自動車新聞 2025年6月2日 寄稿)
日本の半導体産業は1980年代に急成長し、90年代前半には世界市場の半数を占めていたが、日米半導体協定の締結や分業化の遅れによりシェアを落とした。現在は半導体製造装置や部素材が競争力を保っており、自動運転用途では海外製の先端半導体が多く採用されている。
車載用半導体は、車両システムを制御する電子制御ユニット(ECU:(Electronic Control Unit)などの「デジタル半導体」、電気自動車(EV:Electric Vehicle)のモーターを制御する「パワー半導体」、センサー、エンジン制御、ブレーキなどのシステムの中で自動車と外部とのコミュニケーションをつかさどる「アナログ半導体」、先進運転支援システム(ADAS:Advanced Driver-Assistance Systems)、自動運転システムなどで用いる「先端半導体」の4つに大きく分かれる。特に先端半導体は運転支援システムや自動運転システムで重要な役割を果たしている。
自動運転技術はカメラで取得した映像をAIが解析し運転を制御する方法と、3DマップとLiDAR(Light Detection And Ranging)を用いて自車位置を把握し自動運転を実現する方法の2つに大別される。前者は悪天候での運転が課題であり、後者はダイナミックマップを活用し交通状況に応じた予測運転を行う。
カメラ画像とAIで自動運転を実現するためには、画像認識や深層学習に特化した半導体が必要であり、自動車メーカーが自社設計しファウンドリに製造を委託することでコストを削減し差別化を図っている。一方、3DマップやLiDARを活用する自動運転車では、大量のデータを高速処理するための高度な並列処理やデータフュージョン能力が求められ、調達コストが高くなる。
自動車業界における半導体の将来を展望すると、短期的には自動車メーカーが自社設計もしくは共同設計し、ファウンドリに製造を委託する垂直統合モデルが増加するとみられ、日本でも先端SoC技術の研究組織が設立されている。中期的には日本発のファウンドリが先端半導体の専用多品種生産を狙っていく見込みで、AIチップの開発も進み、特定の機能に特化した専用品が多数登場するだろう。
長期的には先端半導体のコモディティ化が進み、価格競争が激化することが予想される。米半導体大手が自動運転開発プラットフォームを展開していくにあたり、日本の自動車メーカーはかつてハイブリッド自動車(HEV:Hybrid Electric Vehicle)の特許を無償提供した経験を踏まえ、車載用先端半導体においても、オープンソースでの研究開発に参画・展開することが求められる。そして、調達優位性を確保するための半導体メーカーへの出資や生産拠点の誘致が必要となるだろう。
※本稿は、日刊自動車新聞2025年2月17日付掲載のコラムを転載したものです。
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※法人名、役職などは掲載当時のものです。
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