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2022-11-04
脱炭素達成に向けて自動車メーカーはLife Cycle Assessment(ライフサイクルアセスメント=LCA)の流れの中で動き出しており、サプライチェーンの自動車部品メーカー(部品サプライヤー)にもLCAへの対応が求められ始めている。一方、多くの部品サプライヤーは従来から排出ガス規制に取り組んできたが、製造段階からCO2を抑えなければいけないLCA対応の実践段階で苦労している。本稿では、部品サプライヤー業界に焦点を当てて、企業が抱える悩みや目指すべき方向を考察する。
脱炭素化に取り組む上で、各社が抱える典型的な悩みとしてまず挙げられるのはアジェンダの設定である。重要性は認識しつつも、誰に向けて何を目指し、何から手をつけていいかわからないという企業は少なくない。また、足元で好調な内燃機関車向け部品の製造を止められず事業転換の道筋が描けないことや投資対効果の観点で事業転換に後ろ向きになってしまうケースもある。
しかし、自動車業界全体としてはメーカーから部品サプライヤーへの脱炭素化の要求は欧州勢を筆頭に厳しくなりつつある。また、国連の責任投資原則提唱によって、ESG経営をしない企業には投資しないというルールに変わりつつあり、メーカーとの取引存続のみならず投資資金確保の観点でも、今後カーボンニュートラルへの対応は必須になると考えられる。
こうした状況の中、部品サプライヤーが目指すべき方向を3つ挙げさせていただきたい。
一つ目は、先行脱炭素製品開発・製造をおろそかにしないこと。そもそも可能な限り電力や熱を必要としない設計・製造がものづくりの王道であり、コストも下がることから、低排出量で性能の良い部品が今後一層競争力を持つようになる。設計段階からの削減工夫や製造段階での材料置換、廃熱利用など先を行く取り組みで、受注を勝ち取る企業も台頭し始めている。競合に先んじて排出量の低い製品開発をしておけば、まず取り残されることはない。そのためにもLCAで先端を行くメーカーとの取引での情報収集や厳しい要求に対応することも欠かせない。
二つ目は、将来のコスト回避のためにあえて今投資すること。たとえば、製造過程でのグリーン電力採用はコスト高となるためオフセットでの解決を選択しがちだが、将来的にはオフセット需要が増えるため価格が上昇し結局高くつく可能性が高い。とはいえ既存の意思決定の仕組みでは、短期的にコスト増に繋がる脱炭素化の推進は設計・製造・営業部門などからの反対が多く、実行は困難を極めるであろう。全社的な意思決定機関に判断を委ねる方法や、ICP(インターカーボンプライシング)のような、CO2換算量を金額に換算して仮想上のコストとみなして投資判断に組み入れるような仕組みから対応検討が重要である。
三つ目は、カーボンニュートラル対応の効率化である。理想を語っても排出量の算出は大変だ。現在メーカー各社が行っているScope3の計算の基準は統一されていない。部品サプライヤーは、メーカーごとに異なる排出量計算を効率的に計算できるツールの保有や、そのツールを2次仕入れ先と共有し連携を図ることが重要となり、こういった方向を持ってしかるべき対応を行うことが今後求められるのである。
※本稿は、日刊自動車新聞2022年10月31日付掲載のコラムを転載したものです。
※本記事は、日刊自動車新聞の許諾を得て掲載しています。無断複製・転載はお控えください。
※法人名、役職などは掲載当時のものです。
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