深刻な人手不足社会における、人材サービス産業の戦略的提携・経営統合支援

市場動向

生産年齢人口の減少による人手不足の深刻化と、働き方の多様化によりさまざまなプレイヤーが参入

有効求人倍率が数十年ぶりに高水準を記録し、企業の人手不足問題が深刻化の一途をたどる中、人材サービス企業においても派遣社員や求職者情報の確保が重要な経営課題となっています。

2015年の労働者派遣法改正を機に、派遣ビジネスを展開している人材サービス企業は派遣社員の雇用安定をはかるためにストック型のビジネスモデルを構築する必要に迫られています。

また一方で、個人の働き方は多様化しており、自身のスキルを活用し、単一の企業にとどまらず、“複”業により複数から収入を得るなど、特定の企業に縛られない働き方も広がっています。こうした働き方を実現するサービスとして、幹部候補人材に新たな経験を積ませるために企業間で人材をレンタル移籍させるマッチングサービスや、個人のスキルや経験をC2Cでやり取りするためのプラットフォームの提供などが挙げられます。派遣社員を自社で抱えることなく始められるこういったフロー型ビジネスは参入障壁が低く、プラットフォーマーとしてすでに大規模な個人情報基盤を持つGAFAに代表されるような大手テクノロジー企業の存在感が高まっていくことが予想され、人材サービス業界においてもデジタルの活用が非常に重要となってきます。

企業は人材確保に苦心している 国内の完全失業率・有効求人倍率

出典:総務省「労働力調査」、厚生労働省「職業安定業務統計」を基にPwCが加工

人材サービス企業の戦略シナリオ

派遣法改正を機に、人材サービス企業は自らのコアコンピタンスを見直し、戦略を決めなければならない

人材サービス企業は、“人材不足”と“働き方の多様化”というビジネスチャンスに対し、“どういったビジネス戦略を選択するか”、もしくはそれらを組み合わせてどういった事業ポートフォリオを構築し、顧客に対してマーケティング活動をしていくか、判断を迫られています。

人材サービス会社の戦略シナリオ
人材業界のビジネスモデル

シナリオ別主要論点

シナリオ1.戦略人事支援型

企業の人事部に対し採用・育成・労務管理などの支援サービスを提供

  • 企業単独では導入が困難な大規模なHR Techや、実績の少ないHR Techスタートアップを取り込み企業に提供できるか
  • 企業にとってコストとなる法改正対応やキャリア研修制度などをコモディティ化し、サービスとして提供できるか
  • 多様化する人材スキルをどのように評価し、企業内の各部署のニーズに合わせて最適配置していくか

シナリオ2.プラットフォーム型

企業と求職者との直接契約を前提に、双方の条件をマッチングさせることを追求

  • 人材を募集している企業と求職者が優先的に利用してくれるプラットフォームをどう構築するか
  • いかにして求職者と企業双方のニーズを分析し、求職者のニーズに適したオファーを提案できるか

シナリオ3.ストック拡充型

より多くの派遣社員と求人をストックし、個々の成長に直接責任を持つことで替えの効かない人材を提供

  • 多くの派遣社員を惹きつけるための広告、派遣社員同士の紹介モデル、利用サイトのUX改善などのチャネル戦略をどう立案するか
  • 派遣社員と企業双方にとって、ベストとなるマッチング機能を提供できるか
  • 企業からのBPO、業務請負をいかにして増やし、RPAなどのデジタル化により効率化することで収益源とすることができるか
  • いかにして教育研修制度を充実化し、派遣社員の満足度、付加価値を向上させ再契約率を高めるか

PwCのアプローチ

人材サービス業における成長戦略の立案から事業運営支援までを総合的に支援します。

戦略策定支援

  • 業界動向を押さえた成長戦略の立案、中期経営計画の策定支援
  • 成長シナリオを踏まえた事業ポートフォリオの構築、営業改革
  • HR Techを始めとした人材サービス業界におけるデジタルを活用した新規事業検討
  • 国内外の人材派遣関連規制・法制度・税制対応などの参入障壁調査

戦略的提携・経営統合支援

  • HR Tech活用に向けたパートナー選定・提携先との交渉
  • スタートアップの企業価値算定(デューデリジェンス)
  • 買収先との経営統合(PMI)

その他

  • 登録されている派遣社員の個人情報管理・サイバーセキュリティ対策の検討

インサイト/ニュース

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主要メンバー

石本 雄一

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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溜井 智也

マネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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