米国企業・消費者メタバース調査 2022

ビジネス上の成果を持続的に生み出すメタバース戦略構築を

昨今、メタバースその関連テクノロジーが、企業に大きなビジネスチャンスをもたらしています。PwC米国が5,000人以上の消費者ならびに1,000人以上のビジネスリーダー(企業のエグゼクティブ層)を対象に実施した調査によると、50%の消費者がメタバースは刺激的だと考えており、66%のビジネスリーダーが「自社でメタバースの活用に積極的に取り組んでいる」と回答しています。これらの企業では、概念実証(PoC)を行ったり、ユースケースの収集を試験的に進めたりしています。中には、メタバース空間やその基盤技術で既に収益を上げている企業もあります。また、82%のエグゼクティブは、メタバースの利活用計画が3年以内に自社のビジネス活動の一部となることを期待しています。

メタバースは単なるサイドプロジェクトか、戦略に不可欠なものか

ビジネスリーダーの3分の2が、「メタバースに関する取り組みを実験段階より先に進めている」と回答しています。また、その大半は、「数年以内にメタバースがビジネス全体に完全に組み込まれる」と語っています。


メタバースに期待しているのは どんな人たちか
メタバースがいつ通常のビジネスの一部になると 予想しているか

*「積極的に取り組んでいる」とは、PoCを進めている、ユースケースの作成を行っている、取引から収益を生み出している、のいずれかと定義しています。

出典:米国企業・消費者メタバース調査2022(PwC 2022 US Business and Consumer Metaverse Survey)、2022年7月。設問:メタバースに関する御社の活動レベルに最も近いものは、次のうちどれですか。御社のメタバースの利活用計画がビジネス活動の中に完全に組み込まれるのは、いつだと予想されますか。集計対象:ビジネスリーダーの全回答者(1,004人)

注:合計は四捨五入の関係で100%とならない場合があります。


これらの数字を見ると、多くの企業が野心的な目標を掲げていると感じられるかもしれません。しかし留意すべき重要な点は、「メタバースの完成形」(すなわち、完全にイマーシブで、多数のメタバース環境間をシームレスかつセキュアに移行できる)はまだ存在していないということです。メタバースの一部の要素は日々のビジネス活動に取り入れられつつありますが、まだ初期段階であることに変わりはありません。また消費者はメタバースを話題にしてはいるものの、何らかの既存のメタバース環境を利用している回答者は、わずか9%に過ぎません。

このように、メタバースに関するコンセンサスは確立されていませんが、こうしたことは、大きな変革をもたらすと予想される新たなテクノロジーによく見られることです。全体像が明らかになる前に、いくつかの部分が先に進歩する場合が多いのです。多くの企業が、拡張・仮想現実(AR・VR)、ブロックチェーン、暗号通貨、非代替性トークン(NFT)など、メタバースに含まれる主要技術や構成要素のいずれかの事業化に重点的に取り組んでいるのが最たる例です。これらの中には、消費者や従業員のエクスペリエンスの強化、取引情報の収集・記録、新たなマーケティング/販売チャネルの開拓などに十分に役立つくらい成熟しているものもあります。

「メタバースは私たちのビジネスを変革・発展させ、収益の増加と持続可能性の創出をもたらすと考えています」

最高技術責任者(テクノロジー業界)

ビジネスリーダーや消費者は、 メタバースに関する知識をどのくらい有しているのか

出典:米国企業・消費者メタバース調査2022(PwC 2022 US Business and Consumer Metaverse Survey)、2022年7月。設問:「メタバース」という言葉について、あなたの理解状況に最も近いものは、次のうちどれですか。集計対象:ビジネスリーダー の全回答者(1,004人);消費者の全回答者(5,212人)


メタバースが本当にビジネスに革命をもたらしたり、インターネットに代わる次の大きな波であったりするのならば、これは企業の将来の命運を大きく左右するものになるでしょう。現在の意思決定が、今後数十年に及ぶweb3.0やデジタル経済における役割を決定づける可能性もあります。そこで、メタバースが将来的にもたらし得る大きな可能性をフルに活用できるよう、今から準備を整えたい、と大きな賭けに出る企業もあるでしょう。しかし、インターネットが発展していった時と同じように、メタバースの場合も、ディスラプションが広がり、その真価が発揮されるまでには、期待に基づいた投機と幻滅のサイクルを何度か経ることになるかもしれません。したがって、過剰な前宣伝を信じ込んで、資本配分を間違えないようにすることが重要と考えられます。

PwC米国の調査データや、メタバース空間の活用やその基盤技術の構築に取り組む企業を支援してきた経験に基づき、企業が考慮すべき4つのアイデアを紹介します。

1. メタバースの土台を構築する:人材・技術の優先順位を決める

企業は、メタバース関連テクノロジーへの投資と同じくらい、あるいはそれ以上に、メタバースに対応できる人材の雇用やスキルアップ、競合分析や顧客調査を優先しています。テクノロジーは、ビジョンの実現のための手段に過ぎません。その価値を決めるのは、テクノロジーの活用に伴うプロセスやスキルです。

「自然を探検したり旅行を計画したりといったことをメタバースで計画できたら、とても面白いと思います。実生活でやりたいことを味わってみる機会になりますから」

消費者、男性、29歳

ビジネス戦略の推進に必要な人材・技術は揃っているか

企業は、メタバースやデジタルアセットに焦点を当てた役職を設けて採用を進めるとともに、仮想空間を構築するためのツールなど、テクノロジーの構成要素への投資を進めています。


メタバース活用に向けた 優先事項

出典:米国企業・消費者メタバース調査2022(PwC 2022 US Business and Consumer Metaverse Survey)、2022年7月。設問:自社のメタバース計画を推進するために今後12カ月間に実施予定の活動は以下のうちどれですか。集計対象:メタバースに関する計画があるとしたビジネスリーダーの回答者(861人)


「何をするにしても、新しいものに手を出すのは、最初は怖いものです。メタバースが社会に取り入れられ、一過性のものにはならないということを人々に納得してもらうには、私たち自身が経験を積み、試行を繰り返さなければなりません」

CTO(電力・ユーティリティ業界)

企業は、関連する組織の変更も進めています。調査対象のビジネスリーダーが所属する企業の32%が「メタバースリーダー」の採用または任命を予定しており、51%がメタバース活動に重点的に取り組む役職(メタバース活動に限定した役職ではない場合もある)を定めています。また、ほぼ同程度の企業が、暗号通貨またはNFTに重点を絞った役職も定めています。こうした役職を設ける企業の増加から本気度がうかがえますが、技術的先見性のある人材に責任を担わせるだけで、メタバースの利活用を軌道に乗せることはできるでしょうか。個々のスキルとテクノロジー、さらには社内プロセスを組み合わせ、メタバースビジネス上の成果を生み出せる構造を一体となって構築していく必要があります。


カギとなる人材の 確保状況
各技術要素の企業戦略への 組み込み状況

出典:米国企業・消費者メタバース調査2022(PwC 2022 US Business and Consumer Metaverse Survey)、2022年7月。設問:御社は、メタバース、暗号通貨、または、非代替性トークンの利用に関する活動を重点的に担う役職を定めていますか。集計対象:1,004人;以下のテクノロジーは、どの程度、企業戦略に組み入れられていますか。集計対象:ビジネスリーダーの全回答者(1,004人)

注:合計は四捨五入の関係で100%とならない場合があります。


「信頼性が高く、高品質で安全なメタバースを実現するためには、イノベーションとテクノロジーがカギとなるでしょう」

最高データ管理責任者(重工業)

企業が留意すべきポイント

  • 現在進行で投資を回収しつつ、将来にも備える。
    現在、すぐに利益をもたらすことができるメタバース要素に重点的に取り組み、ブランド構築やeコマース、データ収集、労働環境の充実などに活用しつつ、将来的に期待されるような、相互運用可能な複数の環境にまたがる、完全にイマーシブなメタバースの構築を視野に、確実に歩を進めるべきでしょう。
  • テクノロジーに柔軟に投資する。
    メタバースが最も効果的に機能するのは、それに特化したテクノロジーを利用した場合です。しかし、そうしたテクノロジーは必ずしもメタバース限定ではなく、大抵の場合、他の用途もあります。例えば、暗号通貨は、メタバース以外のところでも使用できます。自組織でメタバース関連テクノロジーを導入する際、どうすれば成果や効果を最大化できるかを考えることで、柔軟に取り組むことができると同時に、短期・長期の両方で利益を得られる可能性が高まります。
  • 制約を設けない自由な設計に。
    既存のウェブサイトで表現できている機能や世界観をメタバース上で模倣するだけなら、現時点では、わざわざやるだけの価値があるとは言えないでしょう。そうではなく、メタバースを企業やブランドを表現するための新たな次元として、また、働き方や顧客エンゲージメントの在り方、ブランド強化や従業員エクスペリエンス向上への取り組み方を再考する機会と捉えて、全く新しいイマーシブなデジタル世界として最大限に活用すべきです。その際、自組織で利用する各チャネルおよび各種コンテンツの間で一貫性を確保し、ブランドのゆれや希薄化を招くことがないように留意することが必要です。

2. メタバースから成果を生み出す:ビジネスニーズや消費者の望みに応える

メタバースによってもたらされる可能性があるエクスペリエンスやサービスに関心を示す消費者は増え続けています。メタバース上で新たなブランドを発見したり、有形の商品を売買したりすることも、近い将来には当たり前になっているかもしれません。また、アバターでの新人研修やミーティングなど、B to Bにおけるメタバースのニーズも飛躍的に高まっています。しかし、消費者がより望むであろうもの、例えばバーチャル旅行や遠隔医療、馴染みのブランドとメタバース上で便利にやりとりできるといったサービスは、まだまだ発展途上の段階です。顧客となる消費者が既にメタバースにワクワクしているのであれば、彼らが望むサービスをどうすれば実現できるのか、真剣に検討し始めるのが企業のやるべきことのひとつでしょう。

「メタバース上でスポーツイベントに参加し、コートサイドに座ってみたい。実生活の中では経験することが難しいですから」

消費者、男性、29歳

「企業はメタバースによって、研修や訓練についての考え方を一新することを余儀なくされるでしょう」

財務担当・副社長(保険業界)

私たちはメタバースとどのように関わっていくのか

ビジネスリーダーは、従業員の新人研修など、企業内での利用事例に最も関心を抱いています。それに対し、消費者は、アクセス拡大やカスタマーサービスの拡充に期待を寄せています。


企業はどのような メタバース計画を立てているのか
消費者はメタバースに 何を求めているのか

出典:米国企業・消費者メタバース調査2022(PwC 2022 US Business and Consumer Metaverse Survey)、2022年7月。企業への設問:メタバース上で行える活動を考えた時、以下のうち、御社が取り組む可能性が最も高いのはどれですか。集計対象:ビジネスリーダーの全回答者(1,004人);消費者への設問:以下は、メタバースでできるようになると考えられる活動の一部をリスト化したものです。それぞれについて、その活動をメタバース上で行うことにどの程度関心があるか、あるいはないか、ご回答ください。

集計対象:消費者の全回答者(5,212人)[「いくらか関心がある」「非常に関心がある」「その活動をメタバースで既に行っている」を選んだ回答者の割合(%)を表示]


「私は地方に住んでいて、頻繁に買い物に行くことができません。自分のサイズを入力し、衣服をバーチャルで試着できるようになったら、最高だと思います」

消費者、女性、33歳

メタバースの利活用を社内向けから始めることには、一定のメリットがあります。何かを試し、その結果から得られたデータを収集するにあたって、参加者が全て従業員であればコストやリスクは低くて済みます。また、社内の研修や会議をVRヘッドセットを使って行えば、テクノロジーに馴染み、必要に応じて業務プロセスを改善することも可能になります。とはいえ、前述のとおり顧客もまた、メタバースエクスペリエンスを求めているかもしれません。複数のステークホルダーのニーズを同時に満たしながら、一貫性のある独自のメタバースブランドを構築していくことが重要です。

「当社はVRやARを利用して、顧客とのつながりをもっと増やします。新たな方法で、新たなエクスペリエンスや情報を顧客に提供していきたいと思います」

CEO(テクノロジー業界)

企業が留意すべきポイント

  • 自社ブランドのイメージに忠実であり続ける。
    メタバースに初めて取り組む場合、最も利益が大きい始め方は、既存のブランドプレゼンスに基づき、メタバースに参入することでしょう。例えば、パーソナライズしたメタバース店舗、トークン・ゲート・コミュニティ、自社の製品やサービス、ブランドの紹介・発見を含むイマーシブエクスペリエンスにより、現行のマーケティング/ロイヤルティ・プログラムを拡充するといったことが考えられます。
  • メタバースデータの利用は慎重に。
    メタバースの利活用が本格化すれば、そこにはデータの宝庫が生まれる可能性があります。データから顧客の嗜好を明らかにし、データに基づいて戦略を立てることで、ビジネスチャンスをさらに拡大することができるかもしれません。ただし、ユーザーのプライバシー保護やセキュリティは慎重に担保しなければなりません。
  • メタバース価格戦略の立案を。
    メタバース固有の新価格設定が、収益増に貢献する可能性があります。デジタルアセットの提供、バーチャル体験へのアクセス、あるいは有形の商品・サービスの販売など、自社に合ったチャネルを模索することから始めましょう。

3. メタバースのリスクへの対処:信頼の構築・拡大

メタバースにはどのようなリスクが存在するのか、どのリスクを優先すべきか、どこから手を付けるべきか――。これらは、新たなテクノロジーやアプリケーションを導入するにあたって企業が直面する、共通の課題です。ビジネスリーダーと消費者それぞれがメタバースを利活用するにあたって懸念することとして、サイバーセキュリティやプライバシーが最上位を占めています。消費者は、メタバースを安心して利用するために何が重要か、はっきりした考えを持っています。IDおよびデータの保護、セキュリティプロトコル、自分自身でデータを管理する権限です。


ビジネスリーダーの メタバース利活用上の懸念事項
ビジネスリーダーが考える、 メタバースを安心して利活用するために必要なこと

出典:米国企業・消費者メタバース調査2022(PwC 2022 US Business and Consumer Metaverse Survey)、2022年7月。設問:以下の課題について、最も懸念を抱いている上位3つをランク付けしてください(最も懸念の大きいものは1)。集計対象:メタバースの利用に懸念を感じている回答者(993人);メタバースにおける信頼確立に最も大きな影響を及ぼすのは、以下のうちどれですか。集計対象:ビジネスリーダーの全回答者(1,004人);メタバースを信頼できるようになるために最も大きな影響を及ぼすのは、以下のうちどれですか。集計対象:消費者の全回答者(5,212人)


「将来、私たちがメタバース上の事業展開を成功させられるか否かは、自社データと顧客データの両方を確実に安全に保管できるかどうかに懸かっています」

取締役(ビジネスサービス業界)

メタバースの利活用に積極的に取り組んでいる、あるいは取り組む計画があるのであれば、リスクを減らすために迅速に行動し、信頼を構築していく必要があります。メタバース空間でサービスを提供する場合、知的所有権や金融取引、顧客データを保護し、円滑なカスタマーエクスペリエンスを提供していくことが求められます。コンプライアンス上の課題や税務要件、ブロックチェーンや暗号通貨、NFTに関するサードパーティリスクにも対応できる新たなプロセスが必要になる場合もあるでしょう。さらに、例えばマネーロンダリング防止(AML)や本人確認(know your customer;KYC)といった要件に応えるため、分散化されたデジタルアセットに対応できる新たなパートナーや管理方法、スキルが必要になるかもしれません。

「インターネット上では、身元確認がされていない限り、誰も信用することはできないでしょう。メタバース上にいる人々を認証する方法があるなら理想的ですね」

消費者、男性、41歳

企業が留意すべきポイント

  • 信頼を築くための設計を。
    最初にアプリケーションを構築し、後からリスクを特定・軽減するのではなく、最初の段階、つまり、メタバース上のデータや取引、エクスペリエンスなどを考慮してどうアプローチしていくべきかを先に考え、信頼に足る設計へと高めていくのです。このような方法を取ることで、あらかじめリスクを低減できるだけでなく、長期的なコスト効率の向上も見込むことができます。
  • 自社のリスク分類方法を明確に。
    メタバースに関係する新たなリスクの多くはほとんどの企業で共通していますが、自社特有の優先順位を設けておくべきでしょう。特に優先すべき分野としては、ユーザー識別・認証、セキュリティとデータの機密性、ユーザーエクスペリエンス、コミュニティガイドラインとモニタリング、ガバナンス、規制手段、レポーティングなどが挙げられます。
  • 重要関係者に関与してもらう体制を。
    デジタルトランスフォーメーション(DX)の場合でも同じことが言えますが、メタバースの取り組みにおいても、最初から税務やセキュリティ、プライバシーやリスク、コンプライアンスの専門家に関与してもらうべきです。既存のルールやこの先できる可能性があるルールがメタバースにどう適用されるのか、現時点で確実に言えることはありません。そのため、早い段階から各分野の専門家に関与してもらうことが重要です。例えば、メタバース空間におけるデジタルアセットには、新規特性評価や間接税、移転価格やレポーティングといった面で考慮すべき事項があります。リスクを減らし、メタバースに新たな価値を見出していくためにも、早期から専門家が関与できる体制を構築すべきと言えるでしょう。

4. メタバース戦略の立案:新たなデジタル世界に備える

ビジネスリーダーはメタバースを、大きな影響を与えるものと考えています。回答者の半数以上が「インターネットに代わる次の大きな波である」あるいは「ビジネスに革命をもたらすものである」と回答しています。私たちは、メタバースは革命というよりは、むしろ進化というべき形でやってくると考えています。テクノロジーをはじめメタバースを構成するさまざまな要素が、それぞれ異なる時期に、数年間かけて成熟していくでしょう。こうした前提をもとにすると、企業の戦略策定にあたっては、将来のweb3.0の設計を含めた長期ビジョンと、現在進行で具体的なビジネス上の成果を生み出すことができるテクノロジーやスキル、ユースケースに投資するという現実的な路線の両方を含める必要があると考えられます。今のうちからメタバースのビジネス利活用の経験を積むということは、メタバースが完全に社会に浸透した時に備え、顧客の望みを予測・先取りするための準備と捉えることもできるでしょう。


ビジネスリーダーは メタバースの今後をどう考えているか
消費者はメタバースに対して、 さまざまに異なる見方をしている

出典:米国企業・消費者メタバース調査2022(PwC 2022 US Business and Consumer Metaverse Survey)、2022年7月。設問:以下の記述のうち、最も可能性が高いと考えるのはどれですか。集計対象:ビジネスリーダーの全回答者(1,004人);メタバースに関する以下の記述にどの程度、賛成ないし反対ですか。集計対象:消費者の全回答者(5,212人)


「将来、メタバースで成功を収めるためには、経営陣と取締役会による真のコミットメントが必要でしょう」

CIO(エンタテインメント&メディア業界)

現在、多くの消費者は、メタバースがもたらす社会的影響(オンラインでのヘイト発言や差別、性犯罪など)を心配しているほか、メタバースは若者のためのものに過ぎないと回答しています。同時に、ほぼ半数の回答者が、メタバースは刺激的で、デジタルアセットの利用を加速するとも回答しています。一過性の流行であると回答した人は5分の2に留まり、メタバースが今後、社会にさらに浸透していくとの考えが読み取れます。不安や恐れ、楽観が入り混じった、メタバースに対するこのような見方は、急速な進歩とともに多くの負の側面ももたらしたインターネットでの経験を反映しているのかもしれません。

最後に、私たちが考える、メタバースのビジネス活用を通じて持続的な成功を収める企業の条件を紹介します。1つは、メタバースとその要素技術を使って、ブランドと消費者との関係性を真に強固にする製品やサービス、エクスペリエンスを作り出すこと、そしてもう1つは、そうした取り組みを通じて信頼を構築することができるよう、早期から行動することです。

「早い段階でメタバースに参入しない企業は、マーケットシェアを確保するために、より大きな投資が必要になるのではないでしょうか」

代表取締役(テクノロジー業界)

企業が留意すべきポイント

  • メタバースならではの価値を生み出す。
    現在行っている企業活動をメタバースへと拡張することも一案ですが、メタバースでしかなし得ない、人々の生活に変化をもたらす新しい製品やエクスペリエンスを創り、提供するほうが、持続的な成功につながる可能性が高いと考えられます。
  • とにかく有用なものを。
    持続的な有用性を提供する製品やサービス、すなわち、人々やコミュニティ、企業が、そこから得られる情報やサービス、エンタテインメントや利便性を求めて繰り返し訪れるような製品・サービスの開発を検討しましょう。
  • ぶれない目的を持つ。
    企業のパーパスに基づいてメタバースを活用し、顧客からのさらなる信頼構築につなげましょう。メタバースによって(物理的活動をバーチャルに置き換えることで)カーボンフットプリントを削減したり、ESGに関するデータを検証・提示したりすることも、揺らぐことのない存在意義の確立につながります。

米国企業・消費者メタバース調査について

PwC米国が初めて実施した本調査(PwC 2022 US Business and Consumer Metaverse Survey)では、メタバースのコンセプトやユースケース、関連技術に関する認知度、メタバースに対する考え方、利活用計画、実際のアクションについて調べました。調査は、PwCリサーチ(PwC Research)によって2022年4月から5月にかけて実施され、5,000人以上の米国の消費者ならびに1,000人以上のビジネスリーダーを対象としました。消費者の年齢は21歳以上で、収入レベル、性別、年代、雇用状況が均等になるように抽出しました。消費者のうち企業に従事する回答者は、64%が総合職、36%が技術職です。業種別の内訳は、工業製品・サービス(31%)、消費財・小売(20%)、金融サービス(16%)、テクノロジー・エンタテインメント&メディア・情報通信、エネルギー(15%)、ユーティリティ・鉱業(9%)、ヘルスケア(8%)となっています。

※本コンテンツは、PwC 2022 US Metaverse Surveyを翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。

企業のためのメタバースビジネスインサイト

メタバースのビジネス動向や活用事例、活用する上での課題・アプローチなど、さまざまなトピックを連載で発信します。

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