日本への示唆
上記はPwC英国が作成した内容ですが、PwC Japanグループ(以下、PwC Japan)としても、日本市場において行動経済学を活用する大きな可能性を認識しています。
日本人は一般的に調和を重視し、集団の中で協力や統一を求める傾向があります。また、規律を守ることにも高い価値を置いています。これらの文化的特性は、例えば行動経済学のソーシャルノーム(社会規範)の理論と非常に適合性があり効果的に活用できます。他者の行動を参照することで、集団の中で同様の行動を促進することが可能であり、これが健康や環境に対する社会的に望ましい行動を推進する際に役立ちます。
行動経済学では、幅広い領域で多数の理論を適用可能ですが、特に以下の3つの領域においてその効果を発揮できると考えます。
組織内変革とデジタルトランスフォーメーション
新しい技術やプロセスの導入に対する従業員の抵抗を和らげ、積極的な採用を促進するために、行動経済学に基づくエンゲージメント戦略の展開が効果的です。従業員が率先して新しい技術やプロセスを採用するように、行動経済学の理論に基づいたコミュニケーションや業務プロセスを組み込んだ仕掛けを設計します。
アプリケーションのUI/UXの向上
アプリケーションやデジタルサービスにおいて、UI/UXの質は顧客体験に直結します。直感的で効率的な操作を提供するために、既存の設計に行動経済学の理論をより意図的かつ戦略的に適用し、テストを通じて継続的な改善を図ります。これにより、ユーザーの選択を容易にし、ストレスを軽減するデザインを実現し、顧客のエンゲージメントと満足度の向上を目指します。
公共施策
行動経済学は、公共施策における応用が世界的に進んでおり、日本においても多くの実績が確認されています。行動経済学の知見を活用することで、公共施策の市民への影響を最大化し、政策目標の達成を促進できます。例えば、リサイクル率の向上や健康診断の受診率の増加を促すことで、社会全体の利益に寄与します。
行動経済学は昨今、広く注目されていますが、実際にその理論を有効に取り入れて戦略・業務に適用し、成果を上げている企業は限られています。これまでの経験や推測に頼ったアプローチではなく、科学的に証明された理論を適用し、実証テストを通じて施策として展開することで、企業と顧客、組織と従業員、政府と市民など、関係者全てがwin-winとなる結果を目指します。PwC Japanは、これらの課題に対処し、実現をサポートするパートナーとして、共に歩んでいきたいと考えています。