
3兆米ドルのソーシャルコマース市場への対応は万全か
デジタルコマースが1990年代に始まって以来、企業による取り組みは進化しており、関連の市場は今後も拡大すると予想されています。本レポートでは、世界の最新動向や事例などを紹介するとともに、日本企業がとるべき対応策を解説します。
多くの日本企業がPBR(株価純資産倍率)1.0を下回る中、2023年3月31日に東京証券取引所が「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」と題し、上場会社の持続的な成長と中長期的な企業価値向上の実現に向けて重要と考えられる事項への対応を要請しました。日本企業は今、企業価値向上に取り組むことを社会から求められています。
企業価値向上に向けた重要な取り組みの1つであるマーケティングについて、企業の経営幹部はどのような課題意識を持っているのでしょうか。PwCが実施したパルスサーベイやCxO意識調査によれば、経営幹部はコスト削減ならびにマーケティングROI(投資対効果)への課題意識を持っていることがうかがえます。CMO(最高マーケティング責任者)は今後、マーケティング予算の効率化に加え、より少ないリソースで多くの成果を上げることを、これまで以上に求められると予想されます。すなわちROI*1に基づき、マーケティングに費用を投下した結果、どの程度ビジネスのトップラインへの貢献が創出されたかの説明責任を、これまで以上に負うことになり、その成果を実証しなければなりません。
ROI最大化に向けては、大きく5つの取り組みが挙げられます(図表参照)。1つ目は、ビジネス成果への寄与度の観点から、事業全体で最適な施策を実行するとともに、企業として共通の価値を事業横断で効率的に訴求する、「全体最適かつ事業横断でのマーケティング施策の実行」。2つ目は、実行したマーケティング施策のビジネス成果がタイムリーに可視化される仕組みを構築する、「マーケティング施策成果の可視化」。3つ目は、成果の可視化を踏まえ、施策ごとに設定されたビジネス上の目標が達成されるように、施策改善のPDCAをスピーディに実行する、「施策改善PDCAの適切かつスピーディな実行」。4つ目は、マーケティング業務をインハウス化(内製化)することにより、施策実行のノウハウを社内に蓄積し、施策改善のPDCAをスピーディに実行できる組織を構築する、「マーケティング業務のインハウス化」。5つ目は、施策運用におけるルールを整備することで、施策運用の妥当性と透明性を担保する、「施策運用ガバナンスの確保」です。
これらを実施することで、ビジネスのトップラインに一定程度コミットしたマーケティング運用/組織の構築ができ、マーケティングROIを最大化する施策実行が可能になります。しかし、多くの企業ではマーケティング人材不足・業務の属人化など運用面/組織面ともに課題を抱えており、ROI最大化につながる施策を実行できていないケースが散見されます。例えば、マーケティングKPIがビジネス成果とひもづいておらず、施策改善や費用投下を重ねてもビジネス成果に結びついていない、あるいは事業別の縦割り組織での施策実行により、企業全体で見た時に効率的な施策運用やコーポレートとしての価値の創出ができていない、などの状況に陥っているケースが多くあると思われます。
上記5つの取り組みを推進することでROI最大化を実現するには、事業戦略とひもづいたKGI・KPI設計からマーケティング業務見直し/組織改革まで、幅広い領域において変革が必要であるため、自社単独で取り組むにはハードルが高いと考えられます。そのため、第三者の客観的な視点による外部からの支援を受けながら、自社で自走できる体制を構築することが得策だと私たちは考えます。
本稿では、ROI最大化というCMOのミッション達成に向けた各取り組みについて述べていきます。
*1:ROIとはReturn On Investmentの略語。マーケティングにおいては、マーケティング投資・費用に対するリターン、すなわちマーケティング活動による投資収益率を指す。
*2:PwCがフォーチュン1,000企業と民間企業のエグゼクティブと取締役609名を対象として2023年8月に実施したパルスサーベイにおいて、「今後12~18カ月間に実施を検討している戦略的事業変革は何か」という問いに対して「コスト削減」と回答した取締役の割合。
*3:PwCコンサルティング合同会社のBusiness Transformationが2023年12月に実施した、日本のCxOを対象とした意識調査において、「マーケティングROI(投資対効果)の事業課題としての重視度合い」について尋ねた質問に対して、「重視している」と回答したCxOの割合。
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