
顧客への提供価値拡大のアイデア創出に向け、組織間連携・協働をどう強めていけるか
各企業には事業の継続的成長が求められ、その実現に向けて顧客体験を強化する重要性が各所でうたわれるなか、競争優位の源泉として「人」の存在がよりクローズアップされてきています。本稿では、組織間連携に焦点を当て、具体的な実践方法などを解説します。
グローバル企業のCMO(最高マーケティング責任者)は、急速な技術進歩や顧客の期待の高まりに対し、限られたマーケティング予算で対応しなければならない状況に直面しています。さらに、その状況を乗り越えながらイノベーションを推進し、自社のマーケティング戦略を目標と顧客ニーズの両方に一致させなければならないという課題も顕在化しています。こうした環境下において、マーケティング戦略に影響を与えている重要なトレンドは以下の4つです。1
①新しいテクノロジーへの投資:テクノロジーの最適化により、価値を引き出す
②戦略と成長:戦略的イノベーターとして成長をリードする
③信頼の獲得:顧客や従業員の信頼を獲得し、それに基づいて成果を上げる
④顧客体験:パーソナライズでロイヤルティを高める
国内企業も同様の課題を抱えているものの、新しいテクノロジーの活用や新たな販路・顧客の開拓に対してグローバル企業よりも慎重な姿勢であることが影響し、経営層は今後の自社の状況により危機感を募らせています。2
経営層は今、自社のマーケティングの現状をどのように捉え、何を優先課題として取り組むべきと考えているのでしょうか。
今回、PwCコンサルティング合同会社(以下、PwCコンサルティング)は、国内企業のマーケティングの現状や課題を把握するべく、売上高500億円以上の国内企業の経営層280名を対象にCxO実態調査3を行い、各社のマーケティング成熟度や課題認識などについて聴取しました。そして、PwCコンサルティング独自のマーケティング成熟度モデルを基に280名の回答を成熟度レベル別に分類し、成熟度の高い企業と低い企業の違いや特徴を分析した結果、マーケティング基盤の現状だけでなく、取り組むべき課題や重視する指標も成熟度の違いによって大きく異なることが浮き彫りになりました。
成熟度のレベルは、マーケティング基盤やそれを運用・実践するための人材確保や戦略ができているかどうかによって大きな違いが生まれます。「パーソナライゼーション」4への取り組みにおいて、成熟度の高い企業と低い企業の差が最も顕著に現れています。
成熟度の低い企業は、まずはガバナンスの整備とともにマーケティング人材を確保・育成し、マーケティング基盤を構築して顧客データを活用できる状態にすることが課題となります。一方、成熟度の高い企業は、マーケティングをより高度化するために、製品・サービス開発においてパーソナライゼーションやブランド価値の創出を一層強化し、そのための戦略(管理指標の策定も含む)も磨いていくことが重要になります。
成熟度の低い企業ほど売上高と売上高総利益率を重視している傾向にあります。一方、成熟度が高い企業ほど顧客への提供価値醸成に向けた投資対効果を重視しており、非財務指標の重視度も全体的に高めとなります。
本稿では、自社のマーケティング成熟度がどの段階にあるのか、現状を把握できるPwCコンサルティング独自のマーケティング成熟度モデルを掲載しています。また成熟度レベル別に、成熟度や成果を向上させるためにはどのようなステップで何に取り組むべきかを提言します。
【調査概要】
2025年2月、売上高500億円以上の企業に属する回答者に対しスクリーニング調査を行い、そのうち経営層(経営者・役員/CXOクラス・本部長・事業部長クラス)かつ自社の経営企画・事業企画・全社改革・DX推進・営業・マーケティングのいずれかに関わっていると回答した280名に対して本調査を実施。
(売上別回答者比率 1兆円以上:22.1%、5,000億円以上1兆円未満 :15.7%、3,000億円以上5,000億円未満 :11.8%、1,000億円以上3,000億円未満:24.6%、500億円以上1,000億円未満 :25.7%)
1 PwC,2025, 「What’s important to the CMO in 2025: PwC」,(2025年5月15日閲覧)
https://www.PwC.com/us/en/executive-leadership-hub/cmo.html
2 PwC, 2025, 「第28回世界CEO意識調査(日本分析版)PwC」,(2025年5月15日閲覧)
https://www.PwC.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/ceo-survey.html
3 CxO実態調査:PwCコンサルティングは、2025年2月、売上高500億円以上の企業に属する回答者に対しスクリーニング調査を行い、そのうち経営層(経営者・役員/CXOクラス・本部長・事業部長クラス)かつ自社の経営企画・事業企画・全社改革・DX推進・営業・マーケティングのいずれかに関わっていると回答した280名に対して本調査を実施しました。
4 本稿における「パーソナライゼーション」とは「個客に最適化された情報の提供」を意味します。
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