2023年ワークスタイル調査:

With/After COVID-19のワークスタイルを成功に導くために

  
  • 2023-06-30

多様化する働き方の成否を分ける重要な転換期が訪れている

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行は、企業の事業活動のあり方から、そこで働く従業員一人ひとりの働き方や価値観にまで大きく影響を与えてきました。世界的流行から約3年が経ち、COVID-19が収束に近づいている状況を受けて、従来の働き方(オフィス出社)に回帰する企業や、リモートワークを継続する企業など、各社が選択するワークスタイルは多様化しつつあります。リモートワーク継続や従来の働き方(出社)への回帰をするのではなく、各企業がそれぞれに働き方を選択し、働き方は多様化した状況となっています。

このように働き方が多様化する中、今回、PwCコンサルティング合同会社(以下、PwCコンサルティング)が企業・従業員双方に対して実施した実態調査では、現在の働き方に対しての肯定的な回答比率はどの出社頻度においても半数を超える結果となった一方、現在の働き方に対して「上手くいっている」とは言い切れない企業が約4割となっています。

一方で各企業は、それぞれの働き方に応じた課題も同時に抱える形となっています。しかし、働き方が多様化している中で、こうした課題に対する解決には一様な解が存在せず、実施する施策も、オフィスのレイアウト変更やツール導入に留まらず、マネジメントの意識改革やカルチャー変革に至るまで多岐にわたります。企業は、こうした多様な選択肢の中から施策を場当たり的に選びとるのではなく、俯瞰した目線で働き方のビジョンを捉え、自社に適したワークスタイルを戦略的に選択していくことが、自社の価値や競争力を高める一助となります。

PwCコンサルティングは、企業がWith/After COVID-19におけるワークスタイルを成功に導くための提言を行うべく、HR総研(ProFuture株式会社)と共同で日本国内422社に対して、また独自で従業員1,080人に対して、日本企業におけるワークスタイルに関する調査を実施しました。

主な調査結果

1. With/After COVID-19においても各企業の働き方は多様な状態

COVID-19が収束に近づいているという状況を受けて、35%の企業が週5日出社を実施しており、昨年の調査からは13ポイント増えています。一方で週1~4日リモートワークの企業は50%、週5日リモートワークの企業は8%で、企業における働き方は依然として多様な状態となっています(図表1)。

図表1:リモートワークの実施状況(企業 全体 昨対比)

2. 出社の頻度が高いほど、現在の働き方を上手くいっていないと評価する割合が高い

現在の働き方の成功度合いに対する企業の評価を見てみると、どの出社頻度でも約半数以上が「上手くいっている」もしくは「おおむね上手くいっている」と回答しており、リモートワークの頻度が高まるほど選択割合が高くなっています。しかしその一方、リモートワーク導入企業の回答と比べ週5日出社を取り入れている企業の方が、自身の働き方について「どちらともいえない」「(あまり)上手くいっていない」と回答する傾向が見受けられ、それぞれの働き方に応じた課題も同時に抱えていることが分かります(図表2)。

図表2:現在の働き方の成功度合い(企業 出社頻度別)

3. リモートワークを実施する企業では「心身の安全性向上」や「ワークライフバランスの向上」がメリットとして認識されている

現在の働き方におけるメリットとしては、月1日以上のリモートワークを実施する企業では「従業員の心身の安全性の向上」「従業員のワークライフバランスの向上」をメリットとして認識する割合が週5日出社の企業に比べて特に高く(図表3-①)、週5日出社の企業では「業務・組織における生産性向上」をメリットとして認識する割合が月1日以上のリモートワークを実施する企業より高くなっています(図表3-②)。従業員側でも、「心身の安全性の向上」と「ワークライフバランスの向上」に関しては同様に月1日以上のリモートワークをする企業においてメリットとして選択される割合が高いですが、「業務・組織における生産性向上」に関しては企業側とは逆に、リモート頻度が高いほど選択割合が高まる傾向が見られます。企業と従業員の間のメリットに認識の相違がある点に関しては、さらなる検証の余地を残します。

図表3:現在の働き方のメリット(企業・従業員 出社頻度別)

4. リモートワークを実施する企業では「コミュニケーション機会の減少」「マネジメントや部下育成の難易度上昇」「組織の一体感低下」が課題として認識されている

現在の働き方における課題としては、月1日以上のリモートワークを実施する企業においては「コミュニケーション機会の減少」「マネジメントや部下育成の難易度上昇」「組織の一体感低下」を課題として認識する割合が週5日出社の企業よりも特に高く(図表4-①、②)、週5日出社の企業においては「心身のストレス増加」「ワークライフバランスの低下」を課題として認識する割合が月1日以上のリモートワークを実施する企業より高くなっています(図表4-③)。従業員側でも「コミュニケーション機会の減少」「マネジメントや部下育成の難易度上昇」「組織の一体感の低下」に関しては同様に月1日以上のリモートワークを実施する企業で課題として認識される割合が高い一方で、「心身の安全性低下」「ワークライフバランスの低下」に関してはどの出社頻度でもおおむね同程度の認識という結果となっています。

図表3:現在の働き方のメリット(企業・従業員 出社頻度別)

5. 多くの企業が今後も現在と同じ働き方を継続すると見られる

今後の働き方の展望に関しては、企業も従業員も、おおむね現在の働き方と同じワークスタイルの継続を希望する傾向が見られました(図表5)。今後、週5日出社から完全リモートワークまで、それぞれの企業が自社に合った働き方を選択する中で、社会における働き方の多様化が進むと推測されます。

図表4:現在の働き方の課題(企業・従業員 出社頻度別)

With/After COVID-19におけるワークスタイルを成功させるための7つのエッセンス

こうした現状の中、それぞれの働き方における課題を解消して生産性向上やコミュニケーション機会増加を実現し、自社の働き方を成功に導くために各企業に意識していただきたい7つのエッセンスを、PwCコンサルティングからの提言として以下に示します(図表6)。

図表6:With/After COVID-19 時代のワークスタイルを成功させる7つのエッセンス

2023年 ワークスタイル調査:日本企業におけるワークスタイル変革の現状と展望

企業および従業員双方に対して実施したワークスタイルの実態調査をもとに、現在直面している課題や将来的な働き方の展望に関して分析を実施し、企業がWith/After COVID-19時代におけるワークスタイルのあり方を検討するにあたっての提言をまとめました。今後、働き方の選択肢が多様化する中で、「企業価値を高める働き方とは何か」について企業が自ら考え、自社の戦略やビジネスにとって最適な働き方を選択していく必要性がさらに増していくと予想されます。企業の視点だけでなく、従業員の視点にも寄り添った本質的なワークスタイル変革を実現するために、本稿が一助となれば幸いです。

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主要メンバー

北崎 茂

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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喜島 忠典

マネージングディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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鈴木 貞一郎

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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石川 圭悟

マネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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吉川 真莉恵

マネージャー, PwCコンサルティング合同会社

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緒方 春菜

アソシエイト, PwCコンサルティング合同会社

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