モールからモバイルへ:新たな消費行動への適応

世界の消費者意識調査 2018

PwCの世界の消費者意識調査では、消費行動の発展と転換が最も顕著に現れている分野(買物に利用されるチャネル、オンラインで注文した商品の発送リードタイム、買物のきっかけ)や、この状況に対して企業がいかにビジネスを変化させ、利益につなげられるかについて明らかにしている。

  • 過去3回の調査の結果を見ると、実店舗で週1回買物をする割合が2016年の40%から、今年は44%に増加している。実店舗での買物の割合の増加は、より感性に訴える社会的体験への欲求に起因していると言えるかもしれない。
  • 消費者は自分のまわりの人がどう考えるかを知りたがっている。回答者がオンラインのどこで買物をする上でのきっかけを得るのはSNSが1番であった。
  • 企業はスマートフォンのダイナミクスに注意を払い、AI(人工知能)への投資を行い、店舗の体験に焦点を当てることで、これらの傾向に対処することができる。

チャネルにかかわる消費行動の変化

初めて実施した2010年での調査以降、実店舗での買物頻度は減少傾向であった。2014年までの調査において、実店舗で週1回以上買物をすると答えた回答者は36%だった。しかし、実店舗で週1回買物をする割合が2015年の40%から、今年は44%に増加している。事実として、実店舗での買物が好まれなくなっているわけではない。なぜ週に1回の店舗訪問が増えたのだろうか?消費者は何か他のものを求めているようだ。単なる買物という代わりに、消費者は、買物をますます感性に訴える社会的な体験として捉えるようになっている。

大幅に減少したのはPCによる購入で、過去6年間で27%から20%に減少した。また、タブレットによる購入は8%から12%へわずかしか増加していないことも分かる。一方、モバイルコマースは7%から17%へ2倍以上増加し、近い将来PCによる購入を上回る可能性が高い。

買物のきっかけを得る手段:新たな影響

もう1つの新たな消費行動は、企業が販促メッセージを伝える方法に大きな影響を与えている。その消費行動とは、消費者が他の消費者の意見を知りたがっていることである。買物のきっかけをどのオンラインメディアから得ているかを尋ねたところ、37%がソーシャルメディアを選び、小売業者のウェブサイトと答えた割合は34%であった。中でも最も興味深いのが、全回答者の中でブランドや小売業者からのメールと回答した人の割合が14%にすぎなかったことである。このことから、メールという手段は、押しつけがましいセールスに否定的で、企業側に誠実さを求めている消費者に響いていないことが分かる。

新しい消費者行動への対応

これらの新しい消費行動‐スマートフォンを利用しての買物と実店舗での体験‐は、小売業者やメーカーにとっては機会となる。在庫の削減、より魅力的な商品のショーケースのためのスペースの解放、ブランドの補完的な施策の提供が可能となる。そして、ユビキタススマートフォンのおかげで、これらの投資はそれほど資本集約的であるとは言えない。例えば、店内に大きな画面のためのスペースを作る代わりに、店舗は、買物客はスマートフォンからビデオにアクセスするように招待することも可能だ。

意欲的な小売業者なら、仮想現実(VR)の導入をさらに拡大することも考えられるが、このような動きはまだ鈍い。全回答者のうち、3分の1以上の人はまだ実店舗で仮想現実を体験したことがなく、体験した回答者だけを見た場合でも、この技術に満足している人は半数程度にとどまっている。

企業は、新しい消費行動に対して、フォーカスと投資をシフトする必要がある。つまり、スマートフォンのダイナミクスや、AI(人工知能)や店舗での体験への投資にもっと注意を払う必要がある。これらの投資をサポートする新しいビジネスにより、新しい消費行動の流れに乗ることが可能になる。

日本における示唆

グローバルの調査結果によると、食料品のオンライン購入、モバイル購入、店頭ピックアップまたはドローン配送、バーチャルリアリティによる体験、SNSやAIデバイスの活用は、今後さらに拡大することが見込まれている。日本においても経年の拡大傾向に変わりはないが、調査結果だけ見ると、グローバルやアジア諸国と比較した場合にその傾向は若干弱まる結果となっている。

特に中国との差異が大きく、例えば食料品のオンライン購入では、中国の59%に対して日本は27%、モバイル購入に関しても中国の83%に対して日本は24%となっている。他の項目に関しても、いずれも中国の利用度と関心度が世界で上位にランクインするほど高いのに対し、日本は相対的に低水準である。

ただし、その傾向は人口構造にも影響を受けている可能性があり、日本は高齢者の割合が高く、より保守的な傾向が強く出ていると思われる。実際、日本の調査結果データを年齢別に見ると、若年層は利用度・関心度共に相対的に高くなっている。とはいえ、今後人口構造が大きく変化することはないため、すぐに中国に追いつくことはないにせよ、パソコンや携帯を日常的に利用してきたバブル世代(1963年~1970年生まれ)が高齢者となり、人口の中で高い割合を占めるにつれ、利用度・関心度は相対的に高まるかもしれない。

主要メンバー

矢矧 晴彦

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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