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サーキュラーエコノミー(循環型経済)の潮流と企業と政府の歩むべき施策とは 【第2回 企業によるサーキュラーエコノミーの推進に向けたビジネスモデルの見直し・技術活用の可能性】

2021-06-23

サーキュラーエコノミー(循環型経済)という言葉を日常的に耳にするようになりました。これまでの一方通行の「リネア型」の経済モデルから、廃棄製品や原材料などを新たな資源として経済活動の複層段階で循環させる「クローズドループ型」の経済モデルへの転換を目指す動きが世界中で見られます。本稿では、サーキュラーエコノミー実現に向けたルール・政策動向と共に、企業が取り得る施策や新技術活用の可能性についての紹介および政府に求められる役割などを考察していきます。

企業はバリューチェーン上の資源の利用や商材の提供手法を多角的に見直すことで、循環型ビジネスモデルへの変革を

リネア型の経済モデルにおいては、企業は社会的・環境的な最適性よりも、より多く生産し、利益を最適化させることにインセンティブを持つ傾向にあります。他方で循環型経済モデル・循環型社会の実現に向けては、政府・市民・企業各々がエコシステム創出のために相互依存の関係にあることを認識し、必要な経済型ビジネスモデルを協働で創造することが求められます。企業は、自身の活動の外部への負の影響、あるいは外部からの負の影響の可能性についても理解し、自社のサプライチェーン上の慣行を見直し、クローズドループ型モデルへの転換を模索していくべきです。

例えば、原材料の生産や調達の段階において、供給量が少ない原材料や調達リスクが高い素材を活用する企業は、継続的に再生できない原材料やエネルギーがないかを見直し、代替となる生分解性・再生可能な原材料やエネルギーへのシフトを検討することが可能です。化学品メーカーがクリーンテクノロジー企業と手を組み、化学製品の生産を再生可能なバイオ素材や化学素材に変更することや、バイオ燃料やグリーン水素導入へ移行していくプロセスなどが該当します。実際に、ある素材メーカーでは亜麻・麻などを使用して再生可能かつ環境に配慮したバイオマス素材を開発し、100%天然の酵素を使用することで綿と同等の耐久性を担保すると同時に、綿の完成品に必要となる水量を99%削減することに成功しました。

製品の使用および消費の段階においては、故障などにより耐用年数前に廃棄されようとしている製品を回収し、修理やアップグレード、再製造などを行い、製品を保守・改善することで製品寿命の延長を図ることができます。リペア製品のモジュール化といった改善や、電機メーカーが未使用製品や返品製品、リース終了による返却品、外見が痛んだ製品の回収・修理・再販など、従来の売り切り型モデルから転換し、新たな事業活動を創出する例が該当します。

また、製造時や流通時に使用されていない資産・製品などを有効にシェアしていくことも施策として有用です。製造や輸送過程における施設や資産に無駄がないか、十分に利活用されていない製品や資産がないかを見直し、共同所有や利用を行うことで資源価値の最大化を図ることができます。加えて、廃棄されようとしている製品の再販や、使用していない製品の貸し借り・共有・交換などを行うプラットフォームを構築、あるいは活用することで、製品に使用される資源の価値を最大化することも可能でしょう。

廃棄物や副産物の有効な再利用を検討することも大切です。エネルギー回収、廃棄製品の回収、製品・部品の再利用方法の検討、従来廃棄物と見なされていたモノを他用途に活用するための生産・消費システムの構築、工場廃棄のリサイクルによるごみ排出のゼロ化なども重要な施策です。例えばエネルギー回収においては、CO2を資源と捉え、CO2を分離・回収して地中に貯留する「CCS」や、発生したCO2を化学原料として再利用する「CCU」の研究が進められており、今後技術・コスト面の問題解消により実装が進むことが期待されています。なお、こうした廃棄物・排出物の再利用を効果的に進めるには、再生可能な資源や、リサイクル率の高い素材を生産に組み入れるといった、設計や生産などの前工程を含めた包括的な検討が必要となります。

図5: サーキュラーエコノミー対応に向けた企業の施策方向性

環境悪化の加速や資源不足に伴う価格の不安定化は、企業のサプライチェーンに広範な影響を及ぼします。このような変化に備えるため、実際にさまざまな企業が自社のビジネスモデルの転換を図り、サーキュラーエコノミーを実践するようになってきています。ある乳製品メーカーは、酪農製品のパッケージに従来の石油ベースのプラスチックではなく、バイオベースの生分解性プラスチックを採用しました。また大手通信機器メーカーは、鉱山資源依存からの脱却を図るため、将来的に全製品をリサイクル材だけを使って生産する構想を示しており、アルミニウム、コバルト、銅、ガラスなどの優先すべき素材を特定し、リサイクル素材または再生可能な素材への転換を進めています。

他方で、サーキュラーエコノミー型の原材料調達・使用、サプライチェーンの再構築を進める際は、その他のサステナビリティ課題に対し、ネガティブな影響を与えないよう、全体の連関性にも配慮する必要があります。例えば、再生可能エネルギー事業への転換を図ろうとするインフラ事業者がタービン事業を展開していたところ、銅やコバルトなどの原材料調達において、人権リスクに対する情報開示が不十分であったとして、NGO団体より非難されるという事態も発生しています。他にも、バイオマスプラスチックへの転換を図る中で、原料穀物の調達方法や廃棄が適切に行われない場合、結果としてトウモロコシなど食料の価格高騰や土地利用の侵食、廃棄処理段階でのメタンガスの排出など、二次的な悪影響を及ぼしてしまう可能性もあります。

このような事態を回避するため、ある環境系スタートアップでは、農業残渣物を添加物や化学物質を必要としない自己結合性繊維に変換し、それらをテーブルウェアや包装材に転換する手法を考案しました。また、別のマテリアルサイエンス系企業では、農業副産物を活用したバイオ素材を自社生産施設で育成することで、食料を栽培する土地に干渉せず効率的にサーキュラー型原材料を生産し、なおかつコスト面でも石油系化学プラスチックに比肩する水準を達成しています。企業のサーキュラー型事業の推進には、包括的な社会課題解決視点からビジネスモデルを検討、変革する姿勢が求められていると言えます。

企業は循環型ビジネスモデル構築および経済合理性確保のため、新技術の積極的な活用・実装の検討を

サーキュラー型のビジネスモデルヘの転換は、新たな製品やサービスの創出、新技術の積極的な導入といったポジティブな機会と捉えられるべきです。例えば、修理可能性の向上やアップグレードなど製品の長寿化サービスを提供することで、消費者のリテンションを長期化させ、その過程で得られるデータを保守や保険などの付加サービスに展開していく、といったことも考えられます。その際、近年のデジタル・データ関連技術やエンジニアリング技術を積極的に活用していくことで、追加の投資資材を抑えながら、サーキュラー型のビジネスモデルに効率的に転換していくことが期待できます。

デジタル・データ関連技術においては、携帯電話やタブレット端末などを通じた製品やサービスへのアクセスによってシェアリングプラットフォームを形成することや、同技術を活用したコンテンツへのアクセスによる中古品取引の活性化および効率化、バーチャル体験による実マテリアルの削減などが挙げられます。また、IoT技術の活用、ビッグデータアナリティクス、実データ収集によって製品・サービスの品質および予防保守の精度向上、それによる製品・サービス寿命の拡大や故障・廃棄の低減などを図る施策も考えられます。このような取り組みは、消費者利用の観点や静脈物流の観点でポジティブな影響を創出するだけでなく、適正な生産稼働や修理・保守の実施・投資が行えることで、企業のコスト削減にもつながります。また、位置確認・資産管理などを行う追跡・トレース技術も活用していくことで、原材料の生産・加工から製品流通、修理・リユースに至るまで、原材料の種別や地理的な観点からデータを取得し、資源活用・コストの最適化や廃棄物基準への準拠状況のモニタリングなどのコンプライアンス対応を効率的に行っていくことも可能です。昨今ではシステム関連企業やイノベーターがRFID、GPS、センサー、モバイルデバイスなどを活用したトレースシステム・ソリューションを提供しています。バリューチェーン上の活動の「見える化」によって、資源利用・コストの最適化や思わぬ資源リークの防止などができるでしょう。なお、トレーサビリティの効率的な追及やセキュリティ強化には、ブロックチェーン技術も重要な役割を果たします。

エンジニアリング関連技術に関しては、例えば部品の交換や修理、改修、再生産、アップグレード、メンテナンスを容易にすることで製品寿命を高める「モジュラーデザイン」、電子機器などの製品から原材料を再生・リサイクルして化学物質などの原材料リサイクルまでを目指す「スマートリサイクル」、従来の原材料に代わる高品質かつ低環境負荷な原材料創出を企図した「マテリアルサイエンス」などの採用が考えられます。これらの技術に基づき、製品の設計段階からユースケース、廃棄段階を考慮した改良を図ることで、調達や組立、修理、廃棄のコスト削減などの効果も期待できます。また、3Dプリンティング技術を活用し、多様な材料を模型技術や半自動印刷に用いることで、サーキュラーエコノミーに必要な製品の効率的な開発、環境負荷を軽減した製品の製造や長寿化に、より寄与できると考えられます。例えば、ある自動車OEMとリサイクル会社との合弁会社では、中古自動車部品の加工・販売向けの物流およびコンサルティングサービスを提供すべく、これらのITを活用することで、アフターサービスと物流網の最適化、高価な製品の効率的な再製造、資材の追加投入を必要としない再利用および回収プラットフォームの運用などを行っています。

執筆者

三治 信一朗

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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