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2022-06-15
Meta(メタ)社のエンターテインメント部門インダストリー・ヘッド(Head of Industry, Entertainment)、Nick Callaghan氏が、「Meta」への社名変更のインパクト、同社のメタバースに対する考え方、メタバースがプライベートや職場など人々の生活に与える影響、そしてNFT(非代替性トークン)がコマース(商取引)を変容させる可能性について語ります。
対談者
Head of Industry, Entertainment at Meta Nick Callaghan
PwC英国 パートナー Simon Harris(インタビュアー)
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Harris:このインタビューシリーズではディスラプション、中でもメディア業界における大きな変化について業界各社からお話を伺っています。今回は旧FacebookであるMetaからNick Callaghan氏をお迎えしました。現在はMetaのエンターテインメント部門でインダストリー・ヘッドを務めています。Nick、ようこそいらっしゃいました。
Callaghan:Simon、お招きいただきありがとうございます。
Harris:さてメタバースについてお話を伺いましょうか。時代を映す言葉ですね。もう辞書にも載っているのではないでしょうか。私がメタバースをシンプルに定義するとこのようになります。
「インターネットの新バージョンのようなものだがよりイマーシブ(没入型)で相互運用性があり現実世界とオンライン世界の重なり合う部分」
あなた方が定義するメタバースとはどのようなものでしょうか。
Callaghan:実によい質問ですね。当然ですが答えづらい質問です。ただ1つはっきり言えることがあります。当社のCEO兼創業者であるマーク・ザッカーバーグも何度か明言していますが、ある1つの企業がメタバースとは何かを定義することはないでしょう。
私たちはメタバースがコンピュータープラットフォームの次の主役になると確信しています。それはポケットの中の小型のスクリーンに収まるようなものではありません。メタバースは私たち自身がその中に没入するようなプラットフォームでありその中にいることで他者と共有する「そこに存在しているという感覚(sense of presence)」をより一層強く感じることができます。
ただし、繰り返しになりますが、私たちはメタバースがある1社によって定義されたり、所有されたりするものではないと考えています。メタバースは現在構築されつつある新しいタイプの空間であり次の主役となるコンピュータープラットフォームです。旧Facebookのような企業は非常に多くの企業と同じ立場からメタバース内で一定の役割を果たしていくでしょう。
例えば「Fortnite(フォートナイト)」や「Roblox(ロブロックス)」といったオンラインゲームを展開する企業について考えてみましょう。両社は自分たちなりのメタバースを展開・構築することに成功し、現時点でメタバースの一角を占めるようになりました。私の子どもたちもRobloxで遊んでばかりなのでやめさせたいのですが、すっかり夢中になってしまっているので無理ですね。こうした仮想世界のオンラインゲームもメタバースに一定の役割を果たしているという一例でしょう。
以上が私の考えるメタバースの概要です。メタバースは私たちが今いる世界が進化した姿であり、小型スクリーンや固定されたスクリーンに映し出して観るコンテンツにはならないと考えています。むしろ、私たちがその中に入っていくような場所になるでしょう。
では、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの現状と、それが私たち同士の関わり方の変化をどれほど加速させたかということに目を向けてみましょう。例えば会議を開く、業務やイベントを実施する、といったあらゆることをバーチャルやオンライン上で行わなくてはならなくなりました。そして実際にそのようになっています。未来の職場の姿という観点で見ると、メタバースはその進化形の1つと言ってよいでしょう。現在Metaは「Horizon Workrooms」など、この種のテクノロジーをいくつか手掛けています。今後も数々の興味深い製品やサービスが登場することでしょう。
ただ確実なことは、この分野に画期的な変化の瞬間が訪れるのは3年先か、5年先か、10年先なのか分からないということです。これは今日や明日起こる変化ではありません。一定の時間を要する総合的な変化のプロセスになるでしょう。
Head of Industry, Entertainment at Meta Nick Callaghan
Harris:では、働き方についてお伺いします。これは非常に興味深いテーマです。メタバースはリモートワークを促進するでしょうか。今となっては、誰もがリモートワークに慣れてきましたね。メタバースはこの体験をよりよいもの、より魅力的なものに変え、職場の効果的な連携を促すとお考えでしょうか。
Callaghan:ええ、そう確信しています。もちろんこのテクノロジーが導入されるまでには時間がかかるでしょう。あなたはどうか分かりませんが、この席に着くまでの間に次のような話をしましたね。私はこの18カ月ほどの間ずっと在宅勤務を続けてきて、これ以上オンライン会議に参加したり、モニターに映る何十人もの顔を見続けたりするのは苦痛だという話です。
そこで私はメタバースのテクノロジーを試してみたのです。実際に自分のチーム会議をこの新しいプラットフォームを使って開催したところ、以前と同じ職場空間を共有しているような感覚を得ることができました。ブレインストーミングでアイデアを書くためにホワイトボードが欲しければ、すぐに仮想ホワイトボードを設置することができます。また、その環境に誰かを呼び入れたい時には、その人がヘッドセットを装着していなくてもボイスチャット機能で参加することができるため、両方の世界を融合することができます。
ただし、これらを実現するにはその機能がポイントとなります。これらのテクノロジーは、私たちが他者と対面している際に感じていた「同じ空間を共有している」という存在意識をもたらします。例えばあなたが私に話しかける際に私の右側に座っていれば、その声は右側から聞こえます。そして私が右を向けば、あなたの顔が見えます。一方で、どれだけ優れたカンファレンス・テクノロジーであっても、そうした感覚は全て失われます。スクリーンに大量の顔が並んでいるだけだからです。私たちの頭の中は、そのようなやり方で会議やイベントを処理するようにできていないのではないでしょうか。1つの空間を共有し、ある人から別の人の方に身体の向きを変えたり、移動したりするようにできているのです。メタバースのテクノロジーには、その感覚を取り戻させてくれるものがあると私は考えています。
仮想世界が実世界にとって代わることはありません。現実の世界で生活することが、これからも常に私たちが活動する上での最もよい形でしょう。ただし、両者の融合は進んでおり、現在の在宅勤務の状況がいつまで続くかも分かりません。テクノロジーはその融合された形を提供し、それが増え続けるオンライン会議の新たな選択肢になるのではないでしょうか。今後の展開を楽しみに注目しています。
また機能について言えば、個人的にはメタバースによる会議では終了後もそのやり取りが記憶に残りやすいと思っています。周囲を見わたすと会議のメンバーが席に着いており話をしていた情景が浮かぶため「あの場面であの人がこう言っていたな」と思い出せるのです。あくまで個人の意見ですが、大勢が参加する長時間のオンライン会議終了後、メンバーの半分は出席者の半数の話した内容を忘れていると思いますよ。私たちの脳は、そのようなやり方でコミュニケーションを処理するようにはできていないと思います。
Harris:では人間が最良で最適なコンテンツを選択するにあたり、AIは役に立つとお考えでしょうか。
Callaghan:その可能性はあると思います。もう1つ注目している分野なのですが、例えばポッドキャスティングが最近また流行しています。これもパンデミックの初期に人々がロックダウンを経験しより多くのコンテンツを聴くようになったころからです。また、AIテクノロジーがディスカバリー機能をサポートしてポッドキャストの人気を復活させる一因になっているというケースも散見されます。AIテクノロジーを使って音声ストリームとビジュアルフィールドを取り込めば、話したり、歌ったりするだけでなく他にもいろいろなことができるキャラクターをポッドキャストの音声ストリーム上に構築できます。
ソーシャルメディアをスクロールしている時にフィードから音声や映像が流れてくることを想像してみてください。以前は音声だけに頼っていたコンテンツディスカバリーが、AIテクノロジーによってビジュアル面でもサポートされるようになるのです。人々のコンテンツ開拓という意味で、大きな反響が期待できると思います。
ご存じのように多くのソーシャルメディアがビジュアルフィードを採用し、ユーザーはそれをハイスピードでスクロールしています。ビジュアルとオーディオの両方を使って注意を集める。これはAIテクノロジーに備わった機能であり、今後も必要に応じてそういったコンテンツのディスカバリーを大いに後押しするでしょう。
PwC英国 パートナー Simon Harris
Harris:さて、現在注目すべきもう1つのキーワードがあります。NFTです。NFTについては誰もが理解しようと努力していると思いますが、新しい種類のマネタイゼーションであり、自分の所有物をマネタイズするテクノロジーと言えます。またメタバース内では自分の購入した、例えば世界に1つしかない物を人に見せる手段になるでしょう。私が友人にレコードのコレクションを見せびらかし、嫌がられるようなものですね。NFTはこうしたことに大きな役割を果たすようになると思いますか。
Callaghan:ええ、私が今までに手掛けてきたテーマと同じように、実に興味深いテクノロジーです。
NFTはまだ非常に新しい、萌芽期のテクノロジーであり、私たちは実際にはまだその分野に着手できていません。しかし、これも個人的な意見ですが、ディスカバリーとコマースを組み合わせるというアイデアの延長であり、どのように融合するかということだと思います。例えば、ソーシャルメディア上ではすでにディスカバリーコマースが実施されています。人々は自分の好きなもの、お気に入りのブランドやプロダクトを眺めるためにフィードをスクロールします。広告主はカタログを活用し、最も適切な自社のコンテンツをフィードに表示します。小売業者も同じです。カタログを活用してより多くの商品を人々のフィードに届けようとしています。こうしたディスカバリーコマースの進化は、メタバース内においても起きるでしょう。
はっきり言えることは、人々のマネタイゼーションにとって実に興味深い、大きなチャンスがあるということです。こうしたテクノロジーを使い慣れた一部の人々と比べてやや年上の、私たちのような世代の人間にとっては少し非現実的に感じられます。しかし私も子どもを通じて経験しました。彼らはRobloxのような世界で本物のお金を支払ってアップデートしたりアバターを購入したりします。それは私にとっては奇妙な感じがします。デジタルアバターの外見を新しくするのにお金を払うのですから。でもそれがある種のステータスなのでしょう。
私たちはこれまで現実世界で外出し、ブランド品のパンツやスニーカーを購入してきました。だからと言って、私たちが今後新しい形のイマーシブな世界に移行し、そこで長い時間を過ごすようにはなることはないと断言できる理由にはなりません。
私は現在構築されつつある新しい「経済圏(economy)」が実際に形成されると確信しています。新進気鋭のあらゆるクリエーター、ブランド、小売業者がデジタル世界に参入しています。彼らは物理的な製品をショップで販売していますが、デジタル版の似たような製品を生み出すでしょう。もちろん、そうした空間内で活動できないブランドも一部にはあるでしょうが、大多数が参加すると考えてよいと思います。ファッションやエンターテインメントの世界で最高級のブランド製品がステータスになることを考えれば、それは当然のことです。デジタル世界に参入することは事業者にとって実に有意義なチャンスになると思われます。
Harris:それらの分野については先ほどのお話にもありましたね。ゲーミングや音楽・映像といった産業はメタバースと非常に近い分野で、今後もこのテクノロジーの先頭に立つと思われます。小売業についても述べられましたが、メタバースはあらゆる分野に適していると言えるでしょうか。また、その他にも変化が起こりそうだと思われる業界はあるでしょうか。
Callaghan:そうですね。ある程度は業界を問わず、際限なく広がると言ってよいでしょう。ほぼ全ての業界にとって、デジタル世界に参入することは可能だとみています。本気でじっくりと検討すれば、どの業界にも活用する道が開けるはずです。
例えば、旅行に関するあるレポートを読んだところ、VIP顧客向けにプレミアムな仮想旅行体験を作り出すというアイデアがあるそうです。もちろん現時点ではやや奇をてらったもののように感じられますが、旅行と、私たちを連れていく場所の可能性を広げるアイデアです。一方で2つの世界を融合するというアイデアも聞きました。現実世界で旅行を体験する際に、実際に関わっている対象や見ているものをテクノロジーの力で拡張することで、人々に少し特別な体験を提供することができます。旅行・観光業界はまだ具体的に参入していないものの、最終的にその可能性はあるとみています。
私たちMetaが相対的に力を入れているのはゲーミング業界とエンターテインメント業界の2つですが、職場での活用にも注目しています。旧態依然とした慣行が多い分野なので、新たなテクノロジーは変革を起こす大きなきっかけになると思っています。
また先ほども述べたように、仮想世界で過ごす人数が増え、過ごす時間が長くなるにつれ、小売やコマースのアイデアが果たす役割も大きくなるでしょう。自分が仮想世界でどのように見えるのか、何を持っているのかを人々が気にかけるようになるからです。
Callaghan:例えば、背景の壁にかかっているアートワークなどです。また音楽については、バーチャルな2次会でバーチャルな商品を購入するといったことも考えられ、可能性は広がる一方です。これはかなり現実離れしていますが、仮想世界が大きくなり、人々がそこで過ごす時間が長くなれば、こうしたことが起こると思います。
Harris:非常に楽しみですね。最後になりますが、画期的な変化の瞬間が訪れるのは3年先か、5年先か、10年先なのか分からないということを先ほどおっしゃいましたね。つまり、メタバースは「ビッグバン」にはならないという意味に受け取りました。「メタバース前」「メタバース後」が存在するような急激な変化ではないということでしょうか。徐々に変化が進展するというお考えだとすると、どのくらいかかるのでしょうか。今後数年間でしょうか、それとも10年間でしょうか、あるいは……どのようにご覧になりますか。
Callaghan:非常によい質問ですね。私がその正確な答えを知っていたら、おそらく今ごろ違う場所にいることでしょう。とはいえ、おっしゃることは確かにそのとおりです。変化は徐々に進むと考えています。はっきりと「ここが節目だ」と言える将来の一時点が存在するかどうかは、私には分かりません。
ただ、Metaで私の立場からさまざまな仕事を見ていると、一部の広告パートナーにおいては、すでに大規模なイノベーションが起きており、人々は新しい手法に大いに期待しています。また最近ひらめいた類似点についてですが、振り返れば歴史は常にイノベーションを加速させてきました。例えば世界大恐慌は映画産業に数々のイノベーションを促す役割を果たしました。映画館は必要に迫られ、ロビーでソフトドリンクやポップコーンの販売を始めました。B級映画やアニメ映画の上映もそうです。全ては館内に長く滞在してもらい、お金を落としてもらうために必要な仕掛けでした。結果的にそれが成功を収めました。現在のパンデミックとそれに伴う物事の推移は当時と変わらないと私は思います。
そして、こうした変化を本当の意味で活用できるのは、私たちのパートナーやクライアントだと考えています。没入型のこの新しい世界において、オーディエンスを開拓し、楽しませる新たな方法について、私たちは真剣に検討しているところです。私はこれが真の成功につながると思っています。特に音楽とオーディオはこれまでメタバースを重視してきた産業であり、素晴らしいことにいくつかのケースにおいて全く新しい手法が生み出されています。その他多くの業界もすでに私たちと協力し、テクノロジーとエクスペリエンスを生み出しています。
Harris:今後ますます加速していきそうですね。
Callaghan:そう思います。まだまだこれからです。
Harris:楽しみな時代ですね。今日はどうもありがとうございました。興味深いお話でした。メタバースから目を離すな、ですね。
Callaghan:おっしゃるとおりです。
※本コンテンツは「Meta (Formerly Facebook) interview」を翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。