
中国「個人情報保護コンプライアンス監査管理弁法」の概説 個人情報保護コンプライアンス監査で注意すべき点
2025年5月1日に施行された中国の「個人情報保護コンプライアンス監査管理弁法」およびその別紙「個人情報保護コンプライアンス監査ガイドライン」について解説します。
2022-12-13
鼎談者
デジタル庁 国民向けサービスグループ 企画調整官
加藤 博之氏
PwC税理士法人 公認会計士 税理士 パートナー
白土 晴久
PwC税理士法人 公認会計士 税理士 パートナー
PwC Japan グループ リスク&ガバナンス リーダー
野田 幸嗣
モデレーター
PwCコンサルティング合同会社 執行役員 パートナー
公共事業部 デジタルガバメント統括
林 泰弘
※本文敬称略
※法人名・役職などは掲載当時のものです。
(左から)林 泰弘、白土 晴久、加藤 博之氏、野田 幸嗣
林:
前回の対談(2021年6月)から1年半が過ぎました。デジタルインボイスを取り巻く状況もだいぶ変わっていると思います。アップデートをお願いします。
加藤:
前回の対談のときは、まだ構想段階でした。1年半がたち、日本のデジタルインボイスの標準仕様であるPeppol BIS Standard Invioce JP PINTも公開しました。会計ソフト・ERPシステムベンダーによるサービス・プロダクトの開発も進み、イメージが公表され始めています。
林:
そういえば、呼び方も「電子インボイス」からデジタルインボイスに変わりました。
加藤:
そうです。電子インボイスだと、紙を前提にした作業は残り、その紙を単に電子化するイメージが強まりかねないと懸念しました。今回の取り組みは、売り手のシステムと買い手のシステムの間でデータを連携し、自動処理する仕組みです。そういう観点からデジタルインボイスと呼ぶようにしました。各社のサービスもその点に重きが置かれています。
林:
デジタルインボイスもいよいよリアリティが出てきたということですね。具体的なサービス・プロダクトが見えてくると、デジタルでできることとできないことが明確になり、事業者は「どのやり方がベストなのか」を具体的に考えられるようになりますね。
野田:
デジタルインボイスのインパクトは税理士にもあります。2021年度の税理士法改正により「税理士の業務環境や納税環境の電子化といった税理士を取り巻く状況の変化に的確に対応すること」が求められています。このため、当然、デジタルインボイスの動向に注目していますし、対応していかないといけないと思っています。デジタルインボイスを前提にしたデータの自動処理により、前回の対談でもあったように、税理士の役割そのものが変わっていくのではないかと考えています。
デジタル庁 国民向けサービスグループ 企画調整官 加藤 博之氏
PwCコンサルティング合同会社 執行役員 パートナー 公共事業部 デジタルガバメント統括 林 泰弘
林:
自動処理が進めば、人の手によるマニュアル作業も減り、もっと業務効率を高められると思います。それ以外にどのようなことが期待できますか。
加藤:
そうですね。諸外国では「Reduce errors」(ミスの削減)も言われています。システムが処理をするので、例えば入力のし忘れや入力ミスなどの単純なヒューマンエラーは圧倒的に減らせます。
野田:
膨大な情報を瞬時に処理することもできます。これまでフォローできなかった情報を簡単に可視化でき、経営状況のリアルタイム把握に寄与するとも言われています。
林:
経営状況のリアルタイム把握は重要ですね。特に中小・零細事業者の中には、自らの経営状況をリアルタイムに把握できず、必要なときにきちんと示すノウハウが大企業に比べて乏しい、といった理由でビジネスチャンスを失っているとも言われていますね。
加藤:
諸外国では、金融機関が自らの顧客に対し、デジタルインボイスのやりとりを可能にしている例もあります。金融機関は顧客の同意を得た上でデジタルインボイスの情報の提供を受け、そのデータを融資審査などに活用するといったビジネスモデルも増えてきています。また、インボイスファイナンスといったビジネスも注目されています。デジタルインボイスのデータを担保に融資を受ける仕組みです。
林:
デジタルインボイスの普及・定着の先には、いろんな新しいビジネスが広がっているわけですね。日本でも新たな利益をもたらすような、新しいビジネスが増えてくると良いですよね。
林:
ところで、デジタルインボイスによるデジタル化が進むとこれまで見えなかった部分が瞬時に把握できるようになり、多くのメリットをもたらすことも分かりました。一方で、それまで「曖昧」なままで済んでいた部分も浮き彫りになってきてしまうのではないかと懸念しています。そんな声はありますか。
加藤:
そういった話は(2019年10月に導入された)軽減税率制度のときにもありました。適用税率を適切に判断するため「自身がいかなる取引を行っているのかを考え、なぜ対価を支払っているのか整理してください」と繰り返しお伝えしていました。確かに、日本の商取引の中には多くの「曖昧さ」がありますよね。
野田:
それは重要なポイントです。少し観点が違うのですが、税務調査の場面を想像してみても、ある意味で「曖昧」にされている部分があります。例えば、税務調査官が把握できた誤謬の金額が僅少だったために特段の指摘には至らないケースは珍しくないでしょう。デジタル化が進むことによって、瞬時にその誤謬を全て明確に把握できるようになり、そしてその結果、実は金額が多額になると分かったら、従来とは同じような結果にはならないと思います。
林:
それはあり得る話ですね。諸外国では、デジタルインボイスは税務コンプライアンスを底上げし、Tax Gap(納付すべき税金と実際に納付されている税金の差)を小さくすることにつながる、といった議論もあります。デジタルが「曖昧さ」を許容しないということは、そういうことなのかもしれませんね。
PwC税理士法人 公認会計士 税理士 パートナー PwC Japan グループ リスク&ガバナンス リーダー 野田 幸嗣
PwC税理士法人 公認会計士 税理士 パートナー 白土 晴久
白土:
確かに、リスクシナリオとしては(入力ミスなどの)ヒューマンエラー、初歩的なミスはデジタル化していけばなくなります。そうなると、結局、当局との解釈の問題というか、処理手続きが一貫して税法に照らして問題がないかを確認する必要もあります。そういう高度なリスク分析もできるようにしていくのが私たちの目指すべき方向性かな、と思います。
加藤:
注意しなければならないのは、どんな場面でも判断するのはヒトであり、デジタルはあくまでもヒトが判断するための材料を提示しているに過ぎないということです。
林:
税務においてデジタルがもたらす可能性と活用するうえでの注意点について理解が進みました。法令・制度、業務の流れ、ツール、そしてそれを扱うヒト、組織の在り方について、デジタル原則やデジタル完結の考え方に照らして、あらためて点検を始める時期にきていると感じました。
2025年5月1日に施行された中国の「個人情報保護コンプライアンス監査管理弁法」およびその別紙「個人情報保護コンプライアンス監査ガイドライン」について解説します。
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