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2022-12-20
鼎談者
デジタル庁 国民向けサービスグループ 企画調整官
加藤 博之氏
PwC税理士法人 公認会計士 税理士 パートナー
白土 晴久
PwC税理士法人 公認会計士 税理士 パートナー
PwC Japan グループ リスク&ガバナンス リーダー
野田 幸嗣
モデレーター
PwCコンサルティング合同会社 執行役員 パートナー
公共事業部 デジタルガバメント統括
林 泰弘
※本文敬称略
※法人名・役職などは掲載当時のものです。
(左から)林 泰弘、白土 晴久、加藤 博之氏、野田 幸嗣
林:
デジタル化を進めるとともに潜在的な税務リスクへの備えも必要になります。もちろん、それを税務リスクと判断する人が、デジタルにより税務リスクが明らかになり得るという事実を認識しておくことが重要であることはいうまでもありません。とりわけ、税理士には大事な認識だと思いますが、いかがでしょうか。
白土:
これまでの税務調査では、インボイスを原始帳票とする主要取引の税務上の処理に何らかの誤りがあっても、取引の数が膨大であるため、誤謬金額全体を正確に算定することは困難でした。インボイスがデジタル化されデータとして保存されていれば、誤謬全体の金額を容易にかつ正確に算定することができます。つまり、デジタルインボイスは納税者にとって、入力処理の自動化により工数の削減などのメリットがあると同時に、税務調査官にとっても、ある取引で発見された誤謬の全体像を把握するのが遥かに容易になります。こうした点を認識できている税理士は少ないかもしれません。
加藤:
やや悩ましい話の1つだと思います。仮に税理士がそれに気づいていたとしても、システムが処理した膨大な情報を前にしたとき、何を、どう処理したらよいのか戸惑うのではないでしょうか。より実効性を高めるには、システムが処理した情報をさらにシステムが分析し、潜在リスクをあぶりだし、人がそれを認識しやすくなる仕組みが必要ではないでしょうか。
白土:
不適切な税務処理を効率的に抽出する仕組みは税務会計のデジタル化に欠かせません。PwC税理士法人はPwCアドバイザリー合同会社とともに、そうした課題を解決しようと「Tax Risk Data Analyser」を開発しました。反復継続する日々の営業取引のデジタルインボイスのデータをもとに誤謬のシナリオを想定し、一定のロジックや人工知能(AI)などを使って全数チェックし、問題点の発見や影響額の算定ができます。
デジタル庁 国民向けサービスグループ 企画調整官 加藤 博之氏
PwC税理士法人 公認会計士 税理士 パートナー 白土 晴久
加藤:
Tax Risk Data Analyserという網を通すことで、税理士や事業者自身が確認しなければならない潜在的な税務リスクは限定されますね。デジタルにデジタルで対峙する。面白い発想ですね。ただ、その場合、Tax Risk Data Analyserの網の「目」が重要になりますね。どのようにふるいにかけるのか、相当センスが問われる気がします。
白土:
「目」の付け所や網の「目」の粗さといったリスクシナリオの想定は、やはり税務実務の知見を持った税理士でないとできないと思います。法律と、それがどのように実際の取引に適用されているかについての知識。これを提供することがまさに私たちの役割だと思います。また、そうした「目」の設定には不正調査のノウハウ・経験を持つPwCアドバイザリーのフォレンジックサービスチームも関与しており、複数の視点から網を編んでいます。
加藤:
まさに税理士の知見だけでなく、PwC Japan グループに蓄積された膨大な情報・経験も生かしているということですね。
林:
ちょっと視点を変えてみたいのですが、税務行政、特に税務調査の現場は、そういった事業者の対応にどのように対応していくのでしょうか。事業者がせっかくデジタルを活用した対応をとっていても、税務調査の現場で評価されなければ、デジタルを活用しようという事業者のモチベーションが高まらないのではないかと懸念します。
野田:
デジタル化を進めるにあたって非常に重要な問題です。税務行政は税務ガバナンスの向上を図っています。必要なのは、デジタルの活用によるリスク軽減をきちんと評価する、税務調査の負担が軽くなるといった期待を納税者が持てるように、より分かりやすい制度を整えることだと思います。税務行政と納税者が一緒になって考え、税務行政全体のデジタル化の推進と、それに伴う社会的便益をお互いに実現して享受できるように取り組んでいくことが重要です。
加藤:
ところで、AIを使って異常値を検知する場合、少し厄介なことがあるのではないかと思います。AIは学習をして判断の精度を高めます。Tax Risk Data Analyserの場合、学習内容は過去の会計・税務処理になりますよね。仮に、過去の会計・税務処理が正しくないものだった場合、AIが正確に異常を検知できないのではないかという懸念があります。
白土:
おっしゃるとおり、この点はAIを活用するうえで重要な問題の1つだと思います。つまり、AIを形成している過去の人間の行為(データ)が正しくなければ、AI自体も正しくないというものです。一方で、税法とAIの相性はいいとも言えます。税法は不特定多数の方が運用する制度です。法制度の中でも、税法は一定の「曖昧」さはあるもの、いたずらにそれが広がらぬよう、その解釈や運用方針等が示されていることもあります。さらに税務執行でその解釈や運用は補正されていきます。また、企業にとっても税務リスクへの姿勢が異なることもあります。同じ事実関係でも、ある企業は費用を固定資産計上しますが、他の企業は資産計上しないといったことも実務ではあり得ます。こうした個々の企業の解釈やリスクのとらえ方もデジタルの世界では、違いが浮き彫りになり、分析するケースが増えていくにつれ、ある処理に収斂していくのではと思います。こうした収斂の仮定でも税理士の判断が求められると思います。
加藤:
あくまでデジタルはツールです。デジタルが出した結果を評価するのは人です。人は盲目的に「デジタルは万能」と考えてはいけないですし、「デジタルだから正しい」という発想は持つべきではないと思います。さらに言えば、デジタルツールで自動処理した情報は、人がどこかで介在しないと適切に生かせないことも想定されます。そういう意味で、デジタルを使いこなせる人が重要なのです。
PwCコンサルティング合同会社 執行役員 パートナー 公共事業部 デジタルガバメント統括 林 泰弘
野田:
さきほどAIの有効性についてお話ししましたが、AIも万能ではありません。例えば、現実の税務行政では判例などで法解釈が変わり、過去の判断がある日突然正しくなくなることもあり得ます。そうした意味で、Tax Risk Data Analyserを使う際にも税理士の責任は重いと言えます。今は経済社会情勢が目まぐるしく動く激動期です。人が既存の判断や仕組みを批判的に検証し、アップデートしていくサイクルはますます重要になります。(将来の税金発生について計画する)タックスプランニングへの社会の価値観も変わるでしょう。過去のデータだけでは判断できない、新たな課題が浮上するにつれ、税理士にしか判断できない領域も広がります。新たな時代の税制を判断できる人材を育成するのも、税理士法人の重要な役目だと考えています。
林:
伴走型支援のデジタル化ですね。単にデジタルツールの導入を促すだけでなく、ツールを使いこなせるよう人材を育てていくことも重要ですね。その結果、一人一人のスキルが向上し、生産性が高まれば、賃金上昇にもつながる可能性も高まります。とても重要な取り組みですね。
加藤:
デジタルインボイスでも同じことが言えるのではないでしょうか。税理士はデジタルインボイスの仕組みそのものやシステム的な内容を理解する必要はないと思いますが、目の前に展開されるサービスやプロダクトはぜひ理解して、自らのクライアントの伴走者としてサポートしてもらえたらいいですね。
野田:
デジタルインボイスをはじめ社会の仕組みがデジタル化していくなか、Tax Risk Data Analyserのような仕組みを活用して納税者の税のガバナンスを高める、潜在リスクを減らすといった仕組みをきちんと整えるのは避けられない課題です。一方、こうしたデジタル化やデータをしっかりと理解し、行政や企業経営、リスク管理に適切に活かすことが社会にとって重要です。
林:
デジタル原則に基づいて、今後、さまざまな行政サービス、民間サービスがデータ駆動型に変わり、デジタル完結に基づくサービスが具体化されることが期待されています。こうした取り組みの中で税務についても透明度が高まり、社会全体でのリスクの低減、信頼の向上につながることに私どもも貢献していきたいと考えます。
PwC税理士法人 公認会計士 税理士 パートナー PwC Japan グループ リスク&ガバナンス リーダー 野田 幸嗣
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