大きすぎて潰せない自然

金融主体に求められる速やかな対応

2020年1月21日(スイス・チューリッヒ/ダボス)―PwCスイスおよびWWF Switzerlandは、共同で作成した最新報告書「大きすぎて潰せない自然――生物多様性:金融リスク管理の次の領域」で、2020年、とりわけ10月に昆明(中国)で開催予定の国連生物多様性条約締約国会議(注:新型コロナウイルス感染症の影響で2021年10月に延期)に向けて、生物多様性の喪失に伴う金融リスクが重要性を増すことを明らかにしました。気候変動と生物多様性の喪失は互いに強化し合うため、意思決定者は、金融不安のリスクが大幅に高まる中、この二重の危機に対処するという大きな課題に直面しています。

環境リスクとして認識されていない生物多様性の喪失

気候変動は金融リスクです。そのように認識する金融主体や規制当局は増えています。その一方で、関連性はあっても認識されていない環境リスクが、地球上の生物多様性の急速な喪失です。気候変動は種の絶滅を一層加速させ、生態系の急激な変化をもたらします。すると今度は生態系による自然の炭素隔離が大きく抑制され、気候変動がさらに悪化します。こうして負のフィードバックループが生じているのですが、これまでのところ意思決定者、金融セクター、規制当局のいずれもほぼ完全にこの状況を無視しています。

「生物多様性関連の金融リスクは、金融セクターだけでなく、世界中の意思決定者にも完全に無視されてきました。今こそ、生物多様性の喪失と気候変動という二重の危機に速やかに対応する時です。人類は『人と自然との新たな関わり方』の必要に迫られています。市場、政府、市民社会のあらゆる関係者は、これを実現しなければなりません。自然は大きすぎて潰すことはできないのです」

Thomas Vellacott, CEO of WWF Switzerland

2020年の金融リスク評価

2020年の 金融リスク評価

生物多様性関連の4つの金融リスクを定義

PwCスイスおよびWWF Switzerlandが共同で作成した報告書では、生物多様性関連の金融リスクを、物理的リスク、移行リスク、訴訟リスク、システミックリスクの4つに分類することを提案しています。同報告書ではさらに、気候関連の金融リスクをめぐる議論からの教訓を取り上げ、生物多様性の喪失を金融機関の伝統的なリスクフレームワークに統合するための枠組みを紹介している他、金融規制当局、中央銀行、金融市場参加者、各国政府、国際組織に向けた提言も行っています。

  • 各国政府は資金フローと生物多様性の保全・再生の整合性を図り、2020年に昆明(中国)において、生物多様性に関する野心的な国際的枠組みを採択すること(パリ協定第2条1cの生物多様性版)。(注:昆明で開催予定の国連生物多様性条約締約国会議は、新型コロナの影響で2021年10月に延期)
  • 生物多様性の保全・再生に関する資金ギャップ(年間5,000億米ドル以上)をあらゆる行為主体が協力して解消すること。
  • 生物多様性関連の金融リスクおよび気候変動に伴う負のスパイラル効果はシステミックリスクを引き起こすため、各国の中央銀行および金融規制当局は、規制対象企業が定期的に生物多様性関連の金融リスクを開示することの重要性を強調すること。さらに、生物多様性関連の金融リスクに関するストレステストも定期的に実施すること。
  • 2020年に自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)を設立すること。タスクフォースは自然関連リスクに関して、生物多様性の喪失に起因する物理的リスク、移行リスク、訴訟リスク、システミックリスクを考慮する標準化された情報開示を推進すること。(注:TNFDは2020年7月に非公式に活動を開始し、2021年6月に正式発足)
  • 金融主体は生物多様性関連の金融リスクを積極的に管理し、生態系サービスがもたらす機会を捉えること(水防、授粉、浄水、肥沃土、気候変動への適応など)

「生物多様性の喪失について金融セクターが説明しないのは特に危険です。なぜなら金融セクターが投資・融資・付保するあらゆる経済セクターは、生物多様性に支えられているからです。金融不安を回避するため、私たちは中央銀行および金融規制当局に対して、自然環境の悪化に起因する金融リスクを徹底的に評価し、その結果に基づいて対応することを強く求めます」

Andreas Staubli, CEO of PwC Switzerland

生物多様性関連の4つの金融リスクを定義

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主要メンバー

アナスタシア ミロビドワ

マネージャー, PwCサステナビリティ合同会社

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