【調査結果速報・第4弾】結婚観・家族観に関するアンケート(個人の価値観から少子化の原因を考える)

調査の背景と目的

調査の背景

  • 厚生労働省の平成30年(2018)人口動態統計によると、2018年のわが国における出生数は前年比27,746人減の918,400人(統計開始以降最低)、合計特殊出生率は前年比0.01ポイント減の1.42(3年連続の減少)となっています1
  • このまま状況が改善されない場合、労働力人口の減少や産業の空洞化による日本経済の衰退や社会保障制度の崩壊などにつながることが想定され、少子化対策は日本経済の持続的発展や社会の安定、安全を図るうえで避けて通れない課題となっています。
  • 政府では1995年のエンゼルプラン以降、子育てに対する金銭的な補助やワーク・ライフ・バランスの調和などを中心としたさまざまな少子化対策を実施していますが、必ずしも効果が出ているとは言えない状況です。
  • 上記の状況を踏まえ、PwCでは、これまでとは違った観点で少子化の要因を明らかにするため、これまで実態を把握しきれていなかった家族観や結婚観などの変化について一歩踏み込んで調査し、結婚をしない・子どもを持たないことの背景や、結婚・出産の後押しとなり得る要因を明らかにすることが必要と考え、「結婚観・家族観に関するアンケート」を実施しました。
  • 本調査の結果を踏まえ、結婚観、家族観、およびジェンダー意識などの個人の価値観が、結婚することや、子どもを持つことなどの実際の選択に及ぼす影響、ならびにこれらの価値観に影響を与える要素についての分析を通じて、結婚・出産の意思決定に影響を及ぼす要因を明らかにし、今後の少子化対策に向けた考察・提言を行うことを想定しています。

調査概要

(1)調査対象

全国の15~49歳の男女

(2)回収サンプル数

3,116人

(3)調査方法

インターネット調査

(4)実施時期

2020年4月10日~11日

(5)主な調査項目

結婚観、家族観、およびジェンダー意識などについて、一般的に言われている考え方に関する個人の価値観を問う設問を準備しアンケートを実施しました。

※ジェンダー意識や家族の在り方の多様性を踏まえた設問としていますが、一部については社会的な性役割区別に対する意識を問うためにジェンダーロールに関する固定概念を前提とした設問としています。

  • 回答者の状況について
    • 現在の状況:居住、学歴、就業、など
    • 育った家庭環境:両親について(両親の中、学歴、就業、など)、家計のゆとり、など
  • 結婚観について
    • 結婚状況、結婚のきっかけ、結婚年齢、結婚の意向(希望の有無、目標年齢など)、結婚していない理由、結婚に対するイメージ、結婚生活上の不安、離婚に対する考え方、など
  • 家族観について
    • 子どもの数、子どもを持ったきっかけ、子どもを持つことに対する意向、育児休業(有無、期間)、子どもを持ってよかったこと、希望子ども数、子どもを持つことに対するイメージ、親としての責任の範囲、など
  • 夫婦間の役割分担について
    • 家事・子育ての負担感、家事・育児の分担、望ましい分担の在り方、男女の役割に対する考え方、子育てにおける第三者の援助、など
  • 子育て環境等について
    • 子育て支援施策の認知、日本の子育て環境の良否、職場環境、親族との同居状況、親族からの援助有無、家計のゆとり、生活の見通し、など

調査結果の公表について

単純集計ベースの速報として、各調査項目に対する回答の傾向を複数回に分けて公表していきます。その後、結婚観、家族観、ジェンダー意識などの価値観と、結婚、子どもを持つことへの意向との関係性や、それらの価値観に影響を与え得る要素について、クロス集計を踏まえた分析結果を公表する予定です。まずは、単純集計の結果として「結婚観について」「家族観について」「夫婦間の役割分担について」「子育て環境等について」の順で結果を公表します。

子育て支援(全ての回答者が回答)

  • 子育て支援について、「利用している・したことがある」「知っているが利用したことはない」「よく知らない」の3段階で尋ねた。「よく知らない」と回答した人が最も多かったのは「子育てのための住居費用の助成」(71.5%)であり、次いで「不妊治療に関する医療機関の充実や補助金の整備」(60.1%)となっている。また、男女・子どもの有無別の結果を見ると、「子育てのための住居費用の助成」を「知らない」と回答した人の割合は、男性よりも女性の方が高い(男性・子どもあり:63.8%、女性・子どもあり:74.9%、男性・子どもなし:68.5%、女性・子どもなし:77.6%)。「不妊治療に関する医療機関の充実や補助金の整備」を「知らない」と回答した割合は、男女ともに子どもがいる人の方が、子どもがいない人よりも低い(男性・子どもあり:53.1%、女性・子どもあり:52.3%、男性・子どもなし:66.1%、女性・子どもなし:64.9%)。
  • 一方で、「利用している・したことがある」と回答した人が最も多かったのは「育児手当、児童手当など子育てに対する公的助成」(31.5%)で、次いで「妊娠・出産に伴う医療費などの助成」(30.8%)となっている。
  • 「知っているが利用したことはない」と回答した人が最も多かったのは「小学生向けの学童保育など」(49.7%)で、次いで「民間による幼稚園・保育ママ・ベビーシッターなど」(44.2%)となっている。

子どもを持つ動機となりうる支援(全ての回答者が回答)

  • 子どもを持つ動機となりうる支援について尋ねたところ、「子どもの教育費に対する助成」と回答した人が最も多く(38.5%)、次いで「育児手当、児童手当など子育てに対する公的助成」(33.6%)となっている。
  • 子どもがいない男女を見ると、子どもがいない男性で最も多い回答は「いずれのサービスがあっても子どもが欲しいと思わない」となっている(22.7%)。一方、子どもがいない女性で最も多い回答は「子どもの教育費に対する助成」(22.3%)となっている。
  • 子どもがいる男女を見ると、最も多い回答は男女ともに「子どもの教育費に対する助成」(男性・子どもあり:14.0%、女性・子どもあり:20.7%)となっている。

日本の子育て環境の良さ(全ての回答者が回答)

  • 日本の子育て環境の良さについて、「とてもそう思う」「どちらかといえばそう思う」「どちらかといえばそう思わない」「全くそう思わない」「わからない」の5段階で尋ねた。「全くそう思わない」「どちらかといえばそう思わない」を合わせると、約6割の人が「日本の子育て環境はいいと思わない」と回答している(全くそう思わない:23.5%、どちらかというとそう思わない:35.8%)。
  • 男女、子ども有無別に見ると、男女ともに子どもがいる人は子どもがいない人と比べ、「とてもそう思う」「どちらかといえばそう思う」を合わせ、「日本の子育て環境はいい」と感じている割合が高い(男性・子どもあり:41.8%、女性・子どもあり:33.9%、男性・子どもなし:24.9%、女性:子どもなし:24.3%)。

日本の子育て環境がいいと思う理由(日本の子育て環境の良さについて「とてもそう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答した人を対象)

  • 「日本の子育て環境はいい」と回答した人を対象に、「日本の子育て環境がいい」と思う理由を尋ねたところ、「地域の治安がいいから」と回答した人が最も多く(48.9%)、次いで「公園など、子どもを安心して育てられる環境が整備されているから」(31.2%)となっている。
  • 一方で、最も少ない回答は「子育ての経済負担が少ないから」(9.7%)で、次いで「育児休業や出産休暇を取りやすい職場環境が整備されているから」(12.6%)となっている。

家計のゆとり(全ての回答者が回答)

  • 家計のゆとりについて「ゆとりがある」「ややゆとりがある」「あまりゆとりはない」「ゆとりはない」の4段階で尋ねたところ、全体では家計に「あまりゆとりはない」との回答が最も多く(41.6%)、次で「ややゆとりがある」(32.2%)となっている。
  • 男女別に見ると、男性と比べ女性の方が家計に「あまりゆとりはない」と回答した割合が高くなっている。(男性・子どもあり:43.3%、女性・子どもあり:46.9%、男性・子どもなし:36.0%、女性・子どもなし:42.4%)。
  • 家計に「ゆとりがある」「ややゆとりがある」を合わせ、「家計にゆとりがある」と回答と回答した人の割合は、男女ともに子どもがいない人の方が、子どもがいる人よりも高い(男性・子どもあり:40.5%、女性・子どもあり:30.2%、男性・子どもなし:42.4%、女性・子どもなし:38.8%)。

将来の生活に対する展望(全ての回答者が回答)

  • 将来の生活に対する展望ついて尋ねたところ、「同じようなもの」になると回答した人は全体で43.1%と最も多く、次いで「良くなっていく」(21.8%)となっている。
  • 男女、子ども有無別に見ると、男女ともに子どもがいる人は「同じようなもの」と回答した割合が、子どもがいない男女に比べ高い(男性・子どもあり:51.1%、女性・子どもあり:46.3%、男性・子どもなし:38.0%、女性:子どもなし:40.6%)。
  • 男女ともに子どもがいない人は「わからない」と回答した人の割合が、子どもがいる人よりも高くなっている(男性・子どもなし:19.3%、女性:子どもなし:18.2%、男性・子どもあり:6.8%、女性・子どもあり:12.2%)。

以上

1 厚生労働省 平成30年(2018)人口動態統計(2019年11月28日公表)

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