
レジリエントな明日を目指したサーキュラーエコノミーの採用 アジア太平洋地域の変革
本レポートでは、サーキュラーエコノミーがアジア太平洋地域の経済、産業、排出量に及ぼし得る影響について調査しました。また、企業の競争力を高める5つのサーキュラービジネスモデルや、移行に向けた課題および実現要素を考察します。
2022年1月1日以降、企業はEUタクソノミーで新たに導入された分類制度のもと、「グリーン」な売上高、設備投資額、営業支出額を開示することが義務づけられました。さらに、企業サステナビリティ報告指令(Corporate Sustainability Reporting Directive、「CSRD」)の導入に伴う変更により、2024年以降、これらの主要数値は、報告義務があるだけでなく、監査を受けることが義務づけられます。企業には将来、これ以外の項目についても開示義務が課せられます。
PwCは2021年、非財務情報開示について企業への調査を実施しました。このときの調査では、企業によるEUタクソノミーへの対応がどの程度進んでいるのか、また、各社の非財務情報のデータおよび情報処理の現状が、EUタクソノミーの基準に対応する上で、どの程度整備されているのかに着目していました。今回の調査は、前回の調査以降、企業で何が行われ、EUタクソノミー導入への対応がどのように進んだのかを調べることを目的としました。調査対象は、ドイツ、オーストリア、スイス、およびオランダの170社です。また、欧州8カ国の9行の大手銀行にもヒアリングを行いました。これら大手銀行にとっても、EUタクソノミーおよびその結果としての非財務情報開示は、EUが提唱する「欧州グリーンディール」を導入する上で重要であることから、無視できないものになりつつあります。中でも特に、「グリーン資産比率」、つまり「グリーン」な融資もしくは投資がポートフォリオに占める割合の開示義務が課題となっています。
調査結果のキーポイント:半数近くの企業が、すでにEUタクソノミーに対応したコンプライアンス報告を開始しています。
「EUタクソノミーの要求水準は高まり続けています。企業は導入のための労力を決して過小評価せず、必要なリソースを早めに投入するか、外部から調達してくる必要があります」
EUタクソノミーをきっかけに企業活動をサステナブルなものに変えていく企業は少なくありません。調査対象のうち42%もの企業が、EUタクソノミーによりサステナビリティの重要性が高まったと回答し、63%の企業が、サステナビリティは自社における優先度が高いと回答しました。
企業の48%がすでにEUタクソノミーに従った整合性(alignment)の開示を始めており、まだ開示を開始していない企業の80%が整合性の要件への対応を行っています。最も多くの企業(59%)が対応していると回答したのが、実質的な貢献(substantial contributions、「SC」)の基準であり、この点は、EUタクソノミーの構成から考えると、想定どおりの結果と言えるでしょう。
開示に要する労力を過小評価すべきではありません。タクソノミーへの対応を経験した回答企業の中で、必要な労力は少ないと考える企業はわずか13%で、46%の企業が開示義務に対応するために年度中に人員を追加する必要があると回答しました。すでに回答企業の61%が開示のために外部のサービス機関を活用しており、この数字は、前年の調査で予想されていた49%より、はるかに高い水準です。多くの企業が、対応に要する労力を過小評価していたことがうかがえます。
最も注目すべき結果となったのが、67%の企業はタクソノミー関連のデータを、一貫性をもって準備するための標準化されたプロセスをまだ確立していないと回答した点です。開示データの信頼性には、タクソノミーに適格な情報を処理するプロセスの標準化が必要不可欠であるにもかかわらず、そのプロセスを確立したと回答した企業はわずか20%でした。
その結果、次年度以後、タクソノミーに適格(eligible)な情報を社内で収集する体制が十分にできていると回答した企業はわずか13%であり、半数近くの企業(49%)が、情報収集のためには多くの労力が必要と回答しています。要求される開示基準は今後も高まり続けると考えられることから、社内におけるプロセスおよび責任分担の確立が急務です。
約3分の1の企業(31%)がサステナビリティ開示のための専用ツールを利用していると回答していますが、タクソノミー開示のための専用ツールがあると回答した企業はわずか9%でした。その一方、41%の企業がそのようなツールの利用を今後計画していると回答しています。現状では、72%の企業がエクセル、24%がワード、21%が電子メールを利用していると回答していますが、これらのツールは監査証跡として活用できないため、注意が必要です。
銀行にとってEUタクソノミー導入にかかる労力は、企業の数倍大きいと言えるでしょう。銀行は対象企業のタクソノミー分類だけでなく、個別案件ごとに分類を行う必要があるからです。
欧州の大手銀行9行を対象とした詳細な調査では、開示結果の一貫性に問題がある場合が多いことが判明しました。特に2023年以降のタクソノミー整合性評価に携わる社内の担当者が以前と異なる場合、プロセス指向のツールがなければ結果が異なってしまう可能性が高くなります。
また、規制当局が今後タクソノミーに整合していない融資について、必要となる資本要件を厳格化する可能性が高いと予想されることから、銀行も今後タクソノミー整合の有無によって、融資条件も含め、対応を変える可能性は高いと考えられます。
半数以上の企業が、EUタクソノミー対応に費やしたコストは10万ユーロ未満だったと回答しました。4分の1程度(26%)の企業が10万ユーロから50万ユーロ、16%の企業が50万ユーロ超との回答でした。調査対象企業の規模の分布に相応する分布となりましたが、今後、開示にかかる労力が増すのに伴い、導入コストは増加することが予想されます。
「プロセスの標準化は開示実務を機能させる上で必要不可欠です。準備したデータの信頼性を担保する唯一の方法であり、また、それによって信頼性のある企業経営が可能となります。プロセスの標準化をまだ確立できていない企業は、早急に対処するべきです」
本調査レポート内のパートAでは、2022年4月から6月にかけて、ドイツ、オーストリア、スイス、およびオランダの計170社を対象に調査を行いました。
EU加盟国でないスイスについては、EUタクソノミーの影響を必ずしも受けるわけではありませんが、スイスの企業は多くの場合、EU加盟国の開示義務を基準とします。また、スイス企業もグループ内にEU加盟国を拠点とする子会社がある場合には、それらがEUタクソノミーの規則に準拠する必要が生じるため、間接的に影響を受ける可能性があります。
本調査レポート内のパートBにおいては、8カ国の大手銀行9行からヒアリングによる詳細な調査を実施しました。
本稿で紹介されたEUタクソノミーの対象企業は、2024年より適用が開始となるCSRDと同一とされています(ただし、EUタクソノミーの対象企業はEU域内企業のみ)。
両者はサステナビリティに関する情報開示の基準であることから、私どもはCSRD対応支援チームを組成し、幅広いサポートを実施しているなかで、EUタクソノミーについても視野に入れたご支援をしています。
※本コンテンツは、EU Taxonomy 2022: The transformation of non-financial reportingを翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。
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