デジタルチャンピオン2025

統合的かつ自律的なサプライチェーンエコシステムによる成功

サプライチェーンのデジタルチャンピオンがサプライチェーンエクセレンスへの投資によってどのように利益を得ているか、またサプライチェーンを次のレベルに進めるためにどのようなケイパビリティ、イネーブラー、組織変革が重要であるかについて詳しく説明します。

未来のサプライチェーン ・ オペレーティング ・ モデル

ビジョン

私たちは、企業の枠を越えたサプライチェーン統合に向けた流れを、重要なトレンドだと考えています。このトレンドの結果、大量のデータがサプライチェーン全体で継続的に利用可能になりました。最終的には、パートナーはほぼリアルタイムで同時に関連情報にアクセスできるサプライチェーンのエコシステムへとつながっていくため、意思決定を最適化し、実際に何が起こっているのかを知ることができます。このエコシステム全体のデータを透明化することで、それぞれが連動した透明性の高い物流を実現するだけでなく、現在の需給に応じた供給計画の策定も可能になります。また、効率的なパラメータを定義し、意思決定のかじ取りを行うアルゴリズムに組み込むことで、人工知能(AI)を活用して、重要な活動を自動化できるようになります。

取得したデータとサプライチェーンの統合は、企業がサプライチェーンのリスクを特定し、対応する際にも有用です。とりわけ、今後サプライチェーンの混乱が例外ではなく自然に起きるようになった場合には必須です。

PwCの調査では、多くの企業がこの活動にすでに取り組んでおり、新しいサプライチェーンのケイパビリティと組織モデルに投資しているものの、デジタルチャンピオンははるかに先行していることがわかりました。

利点

デジタルチャンピオンは、昨年、サプライチェーンにかけたコストの9.1%を先進的なサプライチェーンケイパビリティに投じており、今後もさらなる投資を継続する予定です。デジタルチャンピオンの投資水準は私たちが調査したほかの企業より高いわけですが、以下の事例からも、その投資は成果に見合っているといえます。すなわち、デジタルチャンピオンは2019年には、サプライチェーンにかかるコストを年率6.8%削減し、収益を7.7%増加させており、それ以外の企業より大きな成果を上げたのです。また、OTIF(on-time in-full:時間通りに完全な)配送を高いレベルで達成することで、顧客満足度を確実に高めました。

利点は、数字だけにはとどまりません。これは、調査した全ての企業、特にデジタルチャンピオンについて当てはまるのですが、収益性や資産活用の向上に加えて、サプライチェーンの活用は事業全体に改善を促すことになります。このように不確実な現代において最も重要なのは、リスクを理解し、対応することによって、サプライチェーンのレジリエンスを向上させることです。デジタルチャンピオンの28%は、高度なサプライチェーンのケイパビリティへの投資から得られる主な利点として、より効果的なリスク管理体制を構築できることを挙げています。

デジタルチャンピオンは、 高度なサプライチェーンケイパビリティへの投資によって、 多くの利益を得ています
デジタルチャンピオンは AI を活用した透明性の実現に先行しています。

サプライチェーンの透明性とサステナビリティ

サプライチェーン全体で何が起こっているかを正確に理解し、サプライチェーンの透明性を確保することは、新しい概念ではありませんが、高度なケイパビリティによってまったく新しいレベルでの可視化が可能になりつつあります。企業は、原材料の段階から顧客から製品を回収するに至るまで、多種多様な情報源から、サプライチェーン全体にわたって生成されているあらゆるデータを獲得できるネットワークを使用し始めています。

大多数の企業はサプライチェーンの透明性を優先事項としていますが、デジタルチャンピオンは、エンドツーエンドの透明性実現について、より先行しています。具体的には、製品コンテンツ、トランザクションレベルのサプライチェーンの収益性、ほぼリアルタイムの物流フローにおいて、はるかに高いレベルで可視化を実現してします。実際、透明性を実装しているデジタルチャンピオンの半数近く(47%)は、すでにサプライチェーンにおけるデジタルツインを使用することができています。これにより、総所有コストの透明性と機能的な最適化が進展しています。

また、高い透明性は、サプライチェーン全体にわたる製品の保管、追跡など、日々高まるサステナビリティの要求の対応も可能にします。

クローズドループと統合計画

需給計画は、サプライチェーンマネジメント(SCM)の中核をなすものです。計画の精度と対応力を高めるための最善策は、サプライヤー、運搬業者、顧客を含むエンドツーエンドのサプライチェーンの範囲を網羅したアプローチを実施することです。このようなアプローチは関係する時間軸をまたぐため、短期、中期、長期の計画プロセスは分断されず、量産計画や財務計画と完全に統合され、関連付けられます。また、実際の注文、消費された原料、または生産の変動に基づき、必要に応じて計画データを調整する能力を備えた、計画と実行の間に強力な連携(クローズドループ)を確立することも重要です。このケイパビリティは、急速に変化する市場環境において、現実的な計画と予測を適応させるうえで、これまで以上に重要になります。

これら全てのチェック項目を満たす計画は、同期化されたクローズドループ計画と呼ばれます。ほとんどのデジタルチャンピオンは、重要な要素の1つであるエンドツーエンド計画をすでに実装しています。また、供給と需要のバランスを保ち、実行精度を高め、業務効率を向上させるために、より高度な手順を踏んでいる先進的なデジタルチャンピオンもいます。

チャンピオンは部分的または完全な エンドツーエンド の計画実装において他社を凌駕しています
スマート物流の一部 またはすべてを実装している企業

スマート物流フロー

商品の物理的な流れを生産の原点から消費点まで管理し、実行することはサプライチェーンの中核となる要素です。そして一つ上のレベルであるスマート物流とは、サプライヤー、製造業者、流通業者、顧客間の物理的な出荷と情報の流れをインタラクティブかつほぼリアルタイムで結び付け、サプライチェーンの透明性と統合計画を構築するということになります。

デジタルチャンピオンは自動倉庫や次世代輸送管理システムを含むスマート物流を、サプライチェーンにおける最優先事項として位置づけています。スマート物流は、サプライチェーン全体のコスト削減の半分以上に寄与しており、効率性を最大化するうえで重要な役割を果たしています。また、新しいBusiness-to-Business-to-Consumer (B2B2C) およびB2C 事業モデルの主要な成功要因でもあり、新しい収益源の確保と事業の成長にも貢献しています。

物流エコシステムの全てのパートナーとプロセスを完全に連携させることで、大手企業は物流ネットワークを戦略的資産へと生まれ変わらせ、多様なチャネルから寄せられる要件をよりよく管理することができます。また、一部の国における国境封鎖や工場閉鎖など、システムに内在するリスクに対応し、適応することにも有用です。

動的なサプライチェーンセグメンテーション

サプライチェーンセグメンテーションとは、サプライヤーから顧客までの異なるエンドツーエンドのサプライチェーンを明確に設計し、運用することです。個々の顧客の価値から、製品、製造、供給能力に至るまで、さまざまな属性がこれらのセグメントを定義し、それによって特定のサプライチェーンの構成を決定します。少なくとも過去10年間はコスト削減の観点で重要な要素でしたが、現在は新しい時代に入りつつあります。

過去には、各顧客と製品の組み合わせをあらかじめ定義されたセグメントに割り当てていましたが、現在は、各トランザクションをサプライチェーンセグメントのいずれかに動的に割り当てることができる、柔軟かつ要求主導型の体制に移行しています。サプライチェーンにおける計画、調達、製造、納入といった主要なプロセスは、特定のビジネスニーズを満たすよう最適化されます。特にデジタルチャンピオンは、個々の製品や取引に適用されるスマートなアルゴリズムに基づき、強化された機能的なサプライチェーンセグメンテーションをより一層活用しています。これにより、顧客中心で、柔軟性が高く、スループットの高い体制が実現し、パフォーマンスは大幅に向上します。

また、動的セグメンテーションにより、コストとサービスレベル、需要と供給、新製品の導入やフェーズアウトなどの製品ポートフォリオオプション、製品ごとのサプライチェーンフローなどの意思決定を行う際に、さまざまなトレードオフを継続的にシミュレートし、バランスを取ることができます。これら全ての要因を考慮すると、全体的な総所有コストの観点に基づいて最適化に向けた決定を行うことができます。

セグメンテーションは大きな、 または非常に大きな影響を与えていると回答した企業
デジタルチャンピオンはAIを活用することでケイパビリティを強化し、 優位性を維持しています

AIを駆使したサプライチェーンマネジメント

AIは、効率的な意思決定を推進し、また変わりゆく状況に自動的に適応できるシステムを構築するポテンシャルがあり、サプライチェーンのケイパビリティにとって非常に強力な加速要因となります。機械学習や自然言語処理などの高度なAI手法をサプライチェーンのケイパビリティに適用することにより、企業は透明性を高め、より優れた計画によって、物流フローを強化することができます。デジタルチャンピオンはこの領域において他社よりかなり先行しており、データを広範にわたり活用し、サプライチェーンの重要な意思決定にAIを適用している割合が高くなっています。

しかし、AI の活用は必ずしも簡単ではありません。企業は、サプライチェーン全体でデータが生成されることによって生じる課題を克服する必要があります。構造化データと非構造化データの高度な組み合わせが、データ分析の基盤となります。データポイントは、さまざまなソースから流されており、内部、外部、または一般公開されているデータソースから生成される場合があります。そのため、これらの多様な情報源を全て読み取り、取捨選択し、分析できるデータネットワークを確立することが重要です。また、AI が単なる「ブラックボックス」にならないように注意する必要があります。例えばアルゴリズムの解釈性と説明可能性を考慮し、バイアスの可能性を検討するなどして、責任を持ち、十分なガバナンスによりAIを適切に導入することも重要です。

オペレーティングモデル開発

本調査に参加した企業が抱える課題の上位3つは、「収益性の管理」「数量調整における柔軟性の向上」「サプライチェーンの可視化とトレーサビリティの向上」でした。デジタルチャンピオンはすでにこれらを克服しており、サプライチェーンの変革にとって、循環性と持続可能性、マスターデータの技術的成熟と信頼性の向上が重要であることを認識しています。これらを克服するために、企業は高度なケイパビリティを推進し、継続的なイノベーションを促進するための戦略を採用しています。サプライチェーン・センターオブエクセレンス(CoE)は、共通の出発点であり、最先端のITインフラを含む強力なテクノロジーの屋台骨を築くことも重要です。デジタル初心者とデジタルフォロワーは、IT機能とサプライチェーンを統合することでITとビジネスを密接に結び付けるという基本に最も重点を置いています。一方、デジタルチャンピオンは、サプライチェーン機能に高度な分析を組み込むことを最優先事項としています。これにより、自己調和が可能な、自律的なサプライチェーンの確立が可能になります。

環境が絶えず変化し続ける中で、企業は継続的に適応し、改善していく必要があります。これは、サプライチェーン関係者のスキルを向上させ、デジタル人材を獲得し、その上で部門横断的なチームで管理するなど、とりわけ人材に焦点を当てることを意味します。最終的には、効率性を高め、サプライチェーンのイノベーションを加速し、組織の俊敏性を高めるために、企業はエコシステムにおける外部パートナーとのサプライチェーン上での連携をより広範囲にわたって促進する必要があります。

コネクテッド ・ オートノマス ・ サプライチェーンエコシステムに変革するための基本要素

主要メンバー

田中 大海

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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鈴木 慎介

パートナー, PwCアドバイザリー合同会社

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藤倉 麻実子

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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