―中国の急伸と新規モダリティの拡大、停滞する日本の開発力―

オンコロジー薬剤開発 パイプラインの世界状況

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  • 2024-03-18

悪性腫瘍(癌)は現代人の死因の第一位であり、日本人のおよそ5人に1人は癌によって死亡しています。主な癌治療の1つである薬物療法では近年の進歩が著しく、従来の化学療法(いわゆる抗癌剤)に加えて、各種の分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤、細胞治療といった、多くの革新的かつ効果的な治療薬・治療法が実用化されています。これらの創薬にはライフサイエンスの基礎研究からの知見に加えて、効果的で安全な薬剤候補物質を創製する技術や、人体を用いての臨床開発(治験)を開始してやり遂げる資金や能力など、サイエンスからビジネスにまで及ぶ専門性と、また多くの異なるステークホルダーを連携させる総合力が必要となります。一方、わが国においては医療需要と国民医療費がともに増大し続けているにもかかわらず、他の国や地域で使用されている治療薬が国内では未承認のままである「ドラッグラグ」や「ドラッグロス」といった現象が顕在化しています。この、問題の背景は複合的であり、なかには「そもそも日本の創薬能力に不足がある(低下している)」という指摘もあります。

今般、以上の状況を客観的に可視化すべく、われわれは癌分野における世界と日本の創薬状況についての調査・分析を行いました。

本レポートの概要

  • 世界で臨床開発されている薬剤候補(化合物)の数は、一貫して顕著な増加傾向にある
  • 開発ターゲットとして最多を占める疾患分野は悪性腫瘍(癌)であり、その割合は漸次増加し、現在臨床開発段階にある化合物の4割以上が抗悪性腫瘍薬として開発されている
  • 欧米が長くリードしてきた抗悪性腫瘍薬開発であるが、2015年以降は中国による開発が劇的に活発化し、中国に由来する臨床開発段階にある化合物の数は既に欧州を凌駕し、米国に次ぐ世界第2位となってさらに増加している
  • 日本に由来する化合物の悪性腫瘍分野における臨床開発は過去20年以上にわたって停滞しており、この期間に大きく伸ばした米国・中国・欧州との格差が拡大してシェア低下が顕著となっている
  • 抗悪性腫瘍薬の開発では細胞治療や遺伝子治療に代表される先進的なモダリティが伸長しており、それら「新規モダリティ」に分類される化合物の割合は臨床開発段階にあるものの4分の1、前臨床の約3割に達している
  • 一方で日本発の薬剤候補は現在でも低分子が約6割を占めており、抗体薬および「新規モダリティ」へのシフトが鮮明なグローバルトレンドとは異なっている
  • 今後、抗悪性腫瘍薬開発では米・中2国の競争激化と寡占の行方が注目されるが、ここで日本がいかに貢献と存在感を示していくかが課題と考えられる

詳細については以下のPDFをご参照ください。

図表1 臨床開発段階における薬剤候補(化合物)数の推移
図表2 開発中医薬品候補がターゲットとする疾患分野
図表3 由来国別にみた臨床開発中である抗悪性腫瘍薬候補(化合物)数の推移

主要メンバー

船渡 甲太郎

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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佐久間 仁朗

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

Email

抗悪性腫瘍薬開発パイプラインの世界状況―中国の急伸と新規モダリティの拡大、停滞する日本の開発力―

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