次世代モダリティを用いた抗悪性腫瘍薬開発の現状と展望

悪性腫瘍(癌)は長らく日本人の死因の第一位であり、他の先進諸国でも主要な死因の1つです。そのため優れた癌治療へのニーズは常に大きく、近年癌治療薬(抗悪性腫瘍薬)開発が一貫して顕著に増加するとともに、新薬開発が癌(オンコロジー)領域に集中していることを私たちも報告しています(PwC、2024年「オンコロジー薬剤開発 パイプラインの世界状況」)。薬剤を構成するさまざまな基盤技術やそれに基づく分類は「モダリティ」と呼ばれますが、従来創薬モダリティの大半を占めていた低分子薬や、抗腫瘍薬分野において1990年代終盤から多く登場するようになった抗体薬に加えて、近年では先進的で多様なモダリティが有効な癌治療薬として開発されるようになっています。例えば、既に実用化されている免疫治療である免疫チェックポイント阻害薬や、遺伝子細胞治療薬であるCAR-T療法は、それぞれ免疫システムを活用したり、細胞を再プログラミングしたりすることで癌細胞を攻撃する革新的なアプローチによって、いくつかの癌種の治療成績を大きく向上させています。それでも決め手となる治療法を欠く難治性の癌や希少癌などはいまだに多くあり、それらへのアンメット・メディカル・ニーズ(UMN=満たされていない医学的・診療上の要求)は大きいままです。これまでにはなかった新たなモダリティが今後いかにそれらのUMNを効果的に満たす癌治療薬開発につながっていくか、期待と興味は尽きません。そこで本稿では多様である新たなモダリティ開発、特にそれらのなかでも新たに早期開発段階に現れ始めたいくつかの先進モダリティを「次世代モダリティ」と位置づけ、それらの悪性腫瘍分野における開発状況について調査するとともに概説し、将来展望についての考察を加えます。

本レポートの概要

  • 癌治療におけるアンメット・メディカル・ニーズは依然として大きく、mRNA治療薬を始めとする新規のモダリティを用いた創薬研究開発が進んでいる
  • 新たな癌治療薬候補として全世界で臨床開発段階にある開発化合物数は2010年から2023年までの間に約3.6倍にも増加した
  • 癌治療薬領域における臨床開発の年平均成長率では抗体医薬品(14.7%)と遺伝子細胞治療(34.3%)がとりわけ高く、癌治療薬全体の開発化合物数増加を牽引している
  • モダリティ別にみた直近の開発化合物数の推移では、ADC、Bispecific抗体、CAR-Tの増加が顕著であった
  • 今回我々は臨床開発段階にある開発化合物数から各モダリティの「成熟度」を測り、その結果、Bispecific ADC、CAR-NK、CAR-M、mRNA、放射線医薬品の5つを、注目すべき次世代モダリティ「Emerging 5」として同定した(図表1)
  • 次世代モダリティ「Emerging 5」に該当する化合物は、直近に非臨床開発が開始された新たな化合物の5.1%を占めており、今後の創薬の進展が注目される

図表1:臨床開発段階にある化合物数による先進的モダリティの分類

詳細については以下のPDFをご参照ください。

次世代モダリティを用いた抗悪性腫瘍薬開発の現状と展望

主要メンバー

船渡 甲太郎

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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佐久間 仁朗

ディレクター, PwCコンサルティング合同会社

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大出 侑樹

シニアアソシエイト, PwCコンサルティング合同会社

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尾山 翔平

シニアアソシエイト, PwCコンサルティング合同会社

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島田 雄貴

シニアアソシエイト, PwCコンサルティング合同会社

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鈴木 亘

シニアアソシエイト, PwCコンサルティング合同会社

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