
2035年に向けて進化を続けるAIエージェント どう使いこなすかが企業の明暗を分ける
チャットボットやRPAなどを活用する業務効率化が進んでいます。本稿では、AIエージェントの今後の進化と、企業経営にもたらす影響について紹介します。
近年、AIなど先進テクノロジーの進化により、業務の自動化が進み、人間の雇用が失われる可能性が指摘されています。そんな時代だからこそ、人はリスキリング(学び直し)によって自己成長を続け、未来に備えることがますます重要になっていると言えるでしょう。
PwCコンサルティング合同会社(以下、PwCコンサルティング)が2024年6月7日に開催した「Technology Day 2024-生成AIやテクノロジーをビジネスにどう活かしていくか-」のGuest Sessionでは、40代で大学に入学し、抗老化学研究者、ロボット工学者として活躍する俳優・経営者のいとうまい子氏と、PwCコンサルティング上級執行役員パートナーの三治信一朗が、「なぜヒトはリスキリングが必要なのか」をテーマに語り合いました。(モデレーター:経済キャスター 江連裕子氏)
(左から)江連 裕子氏、いとう まい子氏、三治 信一朗
登壇者
いとう まい子氏
俳優・経営者・研究者
三治 信一朗
PwCコンサルティング合同会社 執行役員 パートナー
Technology Laboratory 所長
<モデレーター>
江連 裕子氏
経済キャスター
ヒトは、ある程度の年齢に達すると、「学ぶこと」への限界やあきらめを覚えるようになるものなのかもしれません。そんな中、10代でアイドルとして芸能界にデビューし、現在も俳優として活躍しながら、抗老化学やロボット工学の研究を続けているのが、いとうまい子氏です。
セッションは、「なぜ、40代で大学に入学し、60歳になっても学び続けているのか」という、いとう氏への素朴な問い掛けから始まりました。
いとう氏は、「大学に入ったのは、『自分を支えてくれた周りの方々に恩返しをしたい』という単純な動機からでした」と話します。
「高校を卒業して芸能界に入った後、厳しい試練の時期が何度もありました。でも、周りの方々が力強く支えてくださったおかげで、何とか乗り越えることができたのです。お世話になった方々に何か恩返しをしたいけど、『自分には何ができるのだろう』と考え、その答えを見つけるため大学の門を叩きました」
2010年に44歳で早稲田大学人間科学部のeスクール(通信課程)に入学。予防医学の専攻を目指しましたが、3年生への進級時に担当教授が定年退職され、予防医学のゼミがなくなってしまいます。行き場を失ったいとう氏は、同級生に「どこか、おすすめゼミはないか」と相談。当時、人気だったロボット工学のゼミを紹介され、とりあえず入ることにしたと言います。
「実のところ学びたかったテーマではないし、ロボットに対する関心もなかったので、最初はどうしようかと悩みました。でも、芸能の仕事で、あまり人に流されない様にとの気持ちが強かったことで苦い経験をしたので、せっかく紹介してくれたのだから、素直に入ってみようと決意しました」(いとう氏)
これが、思ってもみなかったプラスの結果へとつながります。いとう氏が究めたいと思っていた予防医学と、ほとんど興味のなかったロボット工学は、実はかなり親和性の高い学問だったのです。
「当時、早稲田に来られた整形外科の先生が、ロコモティブシンドローム(運動器の障害のために移動機能の低下をきたす状態)の研究をされていて、その予防に役立つロボットを開発できないかというアイデアがひらめいたのです。ロコモティブシンドロームは、寝たきりや座りっぱなしで足腰の筋力が弱まり、歩けなくなってしまう状態なのですが、それを予防してくれる『ロコピョン』という介護ロボットを開発しました」(いとう氏)
ロボット工学の研究へと舵を切ったいとう氏は、大学卒業後も、修士課程で研究を続けます。ところが、そこでまた大きな変化を迫られてしまうのです。
「ロボット工学の指導をしてくださった先生は、修士課程までは担当されていたのですが、博士課程を持っておられませんでした。上に行ってもっと勉強をしたいと思っていたのに、行き場がない。そこで、基礎老化学という老化のメカニズムなどを研究する博士課程に進みました。予防医学からロボット工学に専攻を変えたときと同じように、再び全く新しいテーマにチャレンジすることになったのです」と、いとう氏は振り返りました。
いとう氏は現在も、早稲田大学大学院人間科学研究科の博士課程で抗老化学の研究を続けています。「もうすぐ60歳ですが、40代で“学びの世界”に入り、次々と新しい研究に関われたことは、自分にとってかけがえのない財産になっていると思います」と、熱く語りました。
モデレーターを務めた経済キャスターの江連裕子氏は、「いとうさんのパワフルなご経歴には圧倒されました。もうすぐ60歳になるとは思えないほど若々しい雰囲気ですが、常に新しい刺激を受けているからこそ、若さを保てるのでしょうね」と語りました。
とはいえ、新しいことにチャレンジし続けるのは勇気がいるものです。いとう氏の対談相手を務めたPwCコンサルティング執行役員 パートナーの三治信一朗は、「どうすればチャレンジしようとするモチベーションが湧いてくるのでしょうか」と尋ねました。
いとう氏は、「自分のためというより、これまで助けてくださった周りの人々に恩返しをしたいという思いが強かったから、学び続けることができたのでしょうね。何度もくじけそうになりましたが、『そもそも自分はなぜ、こんなことをやっているんだ。恩返しをすることが目的だったのでは』と原点を振り返っては、自分を鼓舞し続けたのです」と語ってくれました。
今、多くの社会人が、新しい知識や技術を習得するためのリスキリングに励んでいますが、全く触れたことのない分野に一歩踏み出すのは勇気がいるものです。いとう氏はモチベーションと学びを長続きすさせるためには、まず「なぜ自分はリスキリングをするのか」という目的を明確にすることが重要だと言います。
学びが続かない理由の1つは、思うように成果が現れないことにあります。いとう氏は、この点について「1日、2日学んだとしても、すぐに成果が表れることはありません。やはり積み重ねが大切です」とアドバイスしました。
また積み重ねの効果を、いとう氏は紙に例えて説明。「1日で学べることは、紙なら1枚。2日なら2枚です。でも、それを365日続ければ、紙も365枚になり、かなりの厚みが出てきます。『いつの間にこんなに厚くなっていたんだ』という手応えは、後になってから実感できるものなのです。私の場合、どんどん厚くなるのが嬉しくて、気が付けば、もう15年も学び続けています」。
いとう氏のアドバイスを受け、三治は「学びを続けると、ヒトの能力は“複利効果”で伸びていくものです」という考え方を示しました。
「例えば、『1年で10%能力を高めよう』という目標を掲げたとします。この場合、1年後の能力は1.1です。これに対し、『1日1%ずつ能力を伸ばそう』という目標を設定したらどうなるでしょう。“複利効果”でどんどん能力が膨らみ、365日後には37.78になっています。1.1対37.78ですから、その差は歴然。1日1日の積み重ねが、いかに大切なのかが分かると思います」(三治)
何事も継続するのは容易ではありませんが、続けていけばいくほど大きな手応えを感じ、「もっと続けてみよう」と思うのではないでしょうか。いとう氏と三治の言葉は、「そんな好循環を回してほしい」という応援メッセージだといえます。
三治はPwCコンサルティングの執行役員として、テクノロジー領域のコンサルティングサービスをリードしています。いとう氏もロボット工学などのテクノロジーに関する造詣が深いことから、セッションの話題はリスキリングだけにとどまらず、テクノロジー領域へと広がりました。
近年、ビジネスにおけるテクノロジー活用は急速に広がっていますが、三治は「生成AIにせよ、ロボットにせよ、導入したテクノロジーをヒトに受け入れてもらえるようにする社会受容性(ソーシャルアクセプタンス)よりも、ヒトとテクノロジーが互いに作用し合い、進化していく包摂性のほうが重要ではないかと考えるようになりました」と語ります。
三治は、ある社会学者との対話の中で、この考え方の重要性に気付かされたと言います。「誰かが作ったものを、他の誰かに『受け入れてほしい』と押し付けるのはナンセンスです。むしろ一緒に何かを作り上げ、一緒に進化させていこうとする取り組みが大事なのではないかと考えました」(三治)
いとう氏も、「作る側と使う側の間に距離があると、結果的に『使えないもの』ができあがってしまいます。それでは意味がありませんよね」と同意しました。実際、いとう氏が専門とする介護の現場でも、補助金を使って導入はしたけれど、使いこなせず倉庫に眠っている高額な介護ロボットなどが相当数あるそうです。
一方で三治は、「高齢者だからテクノロジーは使いこなせないといった思い込みは、なくしたほうが良いですね」とも提言しました。
「PwCコンサルティングが一般の方々を対象に行ったアンケート調査によると、『テクノロジーを使ってみたいですか』という問いに『はい』と答えた人の割合は、世代にかかわらずほとんど同じでした。私たちが勝手にバイアスを掛けているだけで、実は高齢者でもテクノロジーを活用したいと思っている方は、一定数いらっしゃるのです」(三治)
こうした思い込みをなくすべきなのは、リスキリングについても言えることです。
いとう氏は最後に、「『学ぶには遅すぎる』とあきらめる高齢者もいらっしゃいますが、何もしないと筋力だけでなく、脳もどんどん衰えてしまいます。それよりも、新しい知識や技術を学び、仕事や社会に積極的に関わったほうが、人生は楽しくなるもの。年齢を言い訳にせず、ぜひリスキリングにチャレンジしてほしいですね」と語り、セッションを終えました。
(※掲載されている内容は、イベント開催当時の情報です)
チャットボットやRPAなどを活用する業務効率化が進んでいます。本稿では、AIエージェントの今後の進化と、企業経営にもたらす影響について紹介します。
AIのビジネス活用が加速しており、企業においては無視のできない経営課題となっています。本稿では、AIエージェントの進化と活用価値について紹介します。
消費デバイスや消費形態の多様化が進むコンテンツ業界でビジネスモデルの変革が求められる中、権利処理業務の煩雑さが課題となっています。テクノロジーを活用して業務量を合理化し、コンテンツ流通のボトルネックを解消する鍵を解説します。
2025年5月2日付で公表された「重要経済安保情報保護活用法の運用に関するガイドライン(適合事業者編)」、「重要経済安保情報保護活用法の運用に関するガイドライン(行政機関編)」及び「適正評価に関するQ&A」の概要を解説します。
PwCコンサルティング合同会社は、6月17日(火)に表題イベントを対面で開催します。
PwCコンサルティング合同会社は5月30日(金)より、表題のセミナーをオンデマンド配信します。
PwC Japanグループは、5月19日(月)より表題のセミナーをオンデマンド配信します。
PwCコンサルティング合同会社は3月10日(月)より、表題のセミナーをオンデマンド配信します。セミナーの最後に無償トライアルのご案内があります。