第7回 金利指標改革とLIBOR公表停止への対応

保険業界が直面するリスクと対応策

1.はじめに

「2021年末でLIBORの公表が停止され、金融市場からLIBORがなくなるかもしれない」

LIBOR(London Interbank Offered Rate:ロンドン銀行間取引金利)は、銀行間の無担保での調達金利を示す指標金利である。デリバティブ、貸付、債券等の様々な金融商品の参照金利として利用されており、LIBOR関連商品の(想定)元本残高は350兆米ドルに達する。金融市場に不可欠なインフラといえるLIBORがなくなることにより、保険会社のみならず、大多数の市場参加者が取り扱う多岐にわたる金融商品と関連ビジネスにおいて、契約から決済に至る取引サイクル全般、かつリスク管理、システム・プロセス、財務会計等のフロントからバックに至るさまざまな領域での対応を迫られることとなる。

PwCとCentre for the Study of Financial Innovation(CSFI)が隔年で実施している、保険者におけるリスク認識の調査レポート(インシュアランス・バナナ・スキン2019)によると、「変革管理」は3位に位置付けられるリスクとなっている。本稿では、保険会社においても変革管理を要する可能性があるLIBOR公表停止にかかる一連の動きの背景、国際的な動向と想定される影響を概観した上で、保険会社への影響について解説を行う。

なお、本稿における見解は、筆者の個人的なものであること、執筆は19年8月末時点の情報に基づいていることにご留意いただきたい。

4.保険会社への影響と対応

本邦の保険会社は、まずはLIBORを参照している契約の状況、例えばデリバティブや貸付、債券等の投資資産の状況を把握する必要があろう。また、デリバティブをヘッジ目的で利用している場合には、ヘッジ有効性への影響や会計基準の動向に注意を払う必要がある。保険負債評価においてLIBORを参照する割引率を用いている場合には、割引率の変更およびその影響の検討も必要となる。資産・負債管理(ALM)の観点からの検討も必要であろう。特に日本円以外の通貨建て資産・負債を保有している場合や海外事業を行っている場合には、関連する海外の当局・市場動向を踏まえた対応が求められる。また、取引の売り手(例えば貸付契約)にあたる場合は、相手方への説明を検討する必要もあろう。

LIBOR移行の影響は広範にわたるため、影響が大きくないと予想される場合でも、その影響を適切に把握するにはそれなりの時間を要する。LIBOR公表停止の影響をできる限り緩和させるためには、売り手側の金融機関のみならず、保険会社を含むすべての金利指標ユーザーがLIBOR以外の金利指標の利用を促進し、満期が21年末を超える契約については頑健なフォールバック条項を追加する等の取り組みを早急に行うことが期待される。

※本稿は、保険毎日新聞2019年10月1日付掲載のコラムを転載したものです。

※本記事は、保険毎日新聞の許諾を得て掲載しています。無断複製・転載はお控えください。

※法人名、役職などは掲載当時のものです。

保険毎日新聞 連載寄稿


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