ダイバーシティ推進と働き方改革 第5回「真のイノベーションを求める『攻めの働き方改革』」

2018-10-26

テクノロジーとヒューマンの「共存・協働」で実現する生産性向上

生産性や成果の向上は、長らく経営の優先課題の一つでした。その課題解決のために自動化が注目され、事務や製造の単純作業がAIやロボティクスに取って替わられると考えられてきました。しかし近年は、RPA(ロボットによる業務自動化)の急速な進展によって、知識労働やプロフェッショナルサービスにもその適用範囲が及んでいます。2025年までには、一億数千万人の知識労働者が担う職務が自動化されるという試算もあるほどです。

しかし、計算処理や記憶、情報整理などが得意なAIに対し、人間には想像力や直感力、問題解決における意思決定など、AIに比較して優れた能力があります。つまり、デジタルワークフォースとヒューマンワークフォースの両者の共存・協働を軸に、労働生産性を高めるためのアイデアや技術を導入する「攻めの働き方改革」こそが、今取り組むべき課題なのです。

人材ポートフォリオの変化─求められるスキル

将来、AIとの共存・協働の時代が来ると考えた場合、「デジタルスキルが強い人が勝つ」という発想になるかもしれませんが、実はそうではありません。逆に、デジタルスキルやSTEM(科学、技術、工学、数学)スキルこそAIによって置換可能とも考えられるからです。

では、人に必要なスキルとは何か?─PwCが実施した「第21回世界CEO意識調査」(図1)によれば、「重要性が高く」「獲得困難」とされる、右上の「スキル獲得競争領域」に位置する要素こそが、今、世界のCEOが自社の人材に求めるスキルと考えられます。ここに位置する「問題解決能力」「創造力・イノベーション」「リーダーシップ」「適応力」は、いずれもヒューマンスキルであり、「知識」よりも「経験」によって培われるものです。これらのスキルを企業内でいかに短期間のうちに鍛錬するかが、ビジネスパーソンにとって重要な課題となります。

世界のCEOはヒューマンスキルの獲得競争に着目している

急速な環境変化に適応するための人材マネジメント必須要件

また組織の在り方は、中央集権的な「ピラミッド型」モデルから、独立した個々が必要に応じて組織を形作る「ネットワーク型」モデルにシフトし、専門性を持つ人材がいかに価値を生み出すかが重視されるようになると予想できます。スピーディーな環境変化に適応し、機動性と多様性を生かせるプロジェクト型のタスクが増えていくでしょう。

このような時代に向けた組織の変革に必要な三大要素として挙げられるのが、「能力と人材のマネジメント」と「組織と役割のマネジメント」の需給管理によるタレント/ジョブマッチングであり、その成果を分析・活用する「業績と処遇のマネジメント」です。

最近では、ジョブマッチングの精度を上げる施策に注力する企業も多く、その有力なツールの一つとして人材データ分析を活用した「ピープルアナリティクス」が注目されつつあります。企業にとってどのような資質を持った人材が必要なのか、高いパフォーマンスを発揮する社員にはどのような要因があるのかなど、データ解析によって要件の特定が可能になってきているのです。

環境変化に適応し機動性と多様性を備えるには、プロジェクト型のタスクが増え、現場でリソースプランニング(需給管理)ができないと変革が進まなくなります。

環境変化に適応し機動性と多様性を備えるには、プロジェクト型のタスクが増え、現場でリソースプランニング(需給管理)ができないと変革が進まなくなる

ビジネスのグローバル化や労働市場の流動化、ダイバーシティの加速など、ビジネス環境が複雑化・多様化し、人事においても幅広いスキルと人材プール、新しい思考方法が求められています。このような中、ビジネスパーソンにとって今後最も必要とされるスキルの一つが「変革するスキル」、時代ごとの変化に適応して新しいアイデアを生み出す力です。スピードの速い時代にあって、今ある専門性はすぐに無用の長物になる可能性もあり、「専門性は時代によって獲得すればよいもの」という発想の転換も必要です。

まとめ

ここまで5回にわたり、「ダイバーシティ推進と働き方改革」を軸に、ビジネス環境の変化をお伝えしてきました。現在、企業は次世代に必要となる新たなスキルを模索しながら、「採用・育成の高度化」や「パートナーシップ」などによる人材獲得戦略を進めています。今、ビジネスパーソンに必要なことは、不確実性の高い時代を生き抜くための「ヒューマンスキル」に着目すること。未来を描きながら常に準備することが大切なのです。

佐々木 亮輔

佐々木 亮輔
PwCコンサルティング合同会社 パートナー

15年以上にわたり日系グローバル企業の本社と海外拠点において日本人および外国人経営幹部を巻き込む変革コンサルティングに従事。本社機能の再編、地域統括会社の機能強化、バックオフィス機能の組織再編と業務改革、海外営業組織の再編と能力強化、M&A(DD/PMI)、海外経営幹部の選抜と育成、チェンジマネジメント、組織文化改革など国内外のさまざまな変革プロジェクトの経験を持つ。シンガポールとニューヨークでの駐在など海外経験が豊富で、日本だけでなく、アジアや欧米のベストプラクティスに精通している。タレントマネジメントやチェンジマネジメントに関する講演や寄稿も多数。

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