ダイバーシティ推進と働き方改革 第4回「2030年の組織運営─4つのワールド・オブ・ワークの特性」

2018-10-15

未来の働き方に影響するグローバル要因

日本では労務管理や賃金体系の是正などを中心に議論されてきた「働き方改革」ですが、AIやロボティクスの急速な進展により、現在は「人間の労働の在り方」に議論がシフトしてきています。テクノロジーの発達は、ビジネスパーソンに必要とされるスキルや、仕事と生活に対する価値観にも大きな変革をもたらすことは間違いありません。では、具体的にいかなる変革が起きるのでしょうか。

PwCでは、不確実性の高い未来に対し複数のシナリオを策定しています。これは英国オックスフォード大学との共同調査で、戦略シナリオプランの手法を使った分析です。各シナリオを検討し、未来に向けた最善策を議論するベースとなるものです。まず、不確実性の高い要素を2軸に取っています。横軸は、「個人主義」と「集団主義」。企業としての利益を追求していくのか、社会益を追求していくのかを示しています。縦軸が、「ビジネスの細分化」と「企業の統合化」です。

働き方に影響を及ぼすグローバル要因を検証する

働き方の分岐=4つのワールド・オブ・ワークで異なる人材マネジメント

上記の要因を検証した結果から導き出したのが、未来の働き方を示す4つの世界です。それぞれの世界は、「レッド・ワールド」「ブルー・ワールド」「グリーン・ワールド」「イエロー・ワールド」と、色の名前で区別しています。

「レッド・ワールド」

少し前のシリコンバレーのような世界観。規制よりイノベーションが先行する。非常に小さいながら特定の専門性に秀でた組織や個人からなり、プロジェクトベースでアライアンスを組んで成果を出す。個人の専門性が重要であり、スペシャリストやニッチビジネスが活性化する。ビジネスに関連するスキルや創造性が重視され、労働者にとってスキルこそが高い価値(報酬)につながる。プロジェクトやビジネスの単位で働く場所を移動する。

「ブルー・ワールド」

主役は大規模グローバル企業。企業は利益を優先させ、競合他社や新規参入業者に対し、徹底した規模と影響力によって対抗する。特別なスキルや能力ある労働者のみが、企業の囲い込み対象となる。優秀な人材を増やすために、能力向上のテクノロジーやスマートドラッグの投与などによって能力は最大化され、パフォーマンスはさまざまな地点や角度から測定・監視・分析される。正社員は専門スキルにより高い報酬が払われるが、最先端のスキルを磨き続けることが、雇用継続の必須条件となる。

「グリーン・ワールド」

道徳心が最も大切な世界であり、企業の社会的責任がビジネス上不可欠な要素。労働者も消費者も、従業員や人権を大事にする企業に対し、高いロイヤルティーを示す。企業の経営計画は、社会的道徳心や環境への責任、多様性への理解や人権問題などに重きを置く。従業員は家族と過ごす時間や、社会貢献活動が奨励される。また、給与や教育・育成、その他条件面に関しても公平性が重要視され、その結果、企業のアプローチや行動が文化として根付いていくことが期待される。

「イエロー・ワールド」

公平性と社会的利益が中心の世界。労働者は社会的かつ倫理的な組織で働くことにフレキシビリティや自立心、充足を感じる。倫理観と公平性に重きが置かれ、人の気持ちを大切にし、多くの職人を擁する企業が活気に満ちあふれた創造的な市場を創出する。新しい労働者組合が生み出される土壌を有し、これらの団体は独立した労働者を保護・支援し、ネットワークを作り、従業員が伝統的に受け継いできたものを次世代に伝える役割を担う。

4つのワールド・オブ・ワーク

未来は、この4つのシナリオのうちの1つに収束されるのではなく、同時多発的にこれらの現象が起こると予測されます。例えば、「ブルー・ワールド」の中に「レッド・ワールド」の価値観を内包するなどのケースも考えられるでしょう。

現在、「エンプロイー・エクスペリエンス」という言葉が広がっていますが、企業の中で体験・経験する価値を企業側が売り、従業員がそれを買うという関係性が今後拡大すると見られています。企業がどのような価値観を有しているのかを伝えることが、今後の人材獲得競争の差別的要因となっていきます。

第5回では、AIやロボティクスが発達した世界における、デジタルワークプレイスとヒューマンワークプレイスの共存・協働をテーマに取り上げます。デジタルによって置き換えられる業務が増える中、ビジネスパーソンに求められるスキルとは何か、また組織マネジメントをいかに変革していくべきかを紹介します。

佐々木 亮輔

佐々木 亮輔
PwCコンサルティング合同会社 パートナー

15年以上にわたり日系グローバル企業の本社と海外拠点において日本人および外国人経営幹部を巻き込む変革コンサルティングに従事。本社機能の再編、地域統括会社の機能強化、バックオフィス機能の組織再編と業務改革、海外営業組織の再編と能力強化、M&A(DD/PMI)、海外経営幹部の選抜と育成、チェンジマネジメント、組織文化改革など国内外のさまざまな変革プロジェクトの経験を持つ。シンガポールとニューヨークでの駐在など海外経験が豊富で、日本だけでなく、アジアや欧米のベストプラクティスに精通している。タレントマネジメントやチェンジマネジメントに関する講演や寄稿も多数。

プロフィール

※法人名、役職、コラムの内容などは掲載当時のものです。

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