
「デジタルエコシステムの最前線」コラム 第15回 「孤独戦略」の限界と、エコシステム形成の重要性
エコシステムの持続的な成長と競争優位性の確立に直結する、戦略適合性・実現可能性・協業手法の3つの観点とその評価軸について解説します。
2020-09-28
デジタルヘルス・エコシステムとは、個人/患者の健康/医療データを中心に、健康・予防・治療・予後・介護のサービスプロバイダーが有機的につながり、データ流通・活用によるサービスが行われるエコシステムです。
デジタルヘルス・エコシステムでは、未病段階を対象とするヘルスケアエコシステムと、治療段階を対象とするメディカルエコシステムの2種類が形成され、必要なデータが相互に活用/流通されます。
デジタルヘルス・エコシステムには、医療機関、薬局、製薬企業、医療機器メーカーといった医療/医薬業界以外にも、健康保険(企業/国民健康保険)、民間保険、アカデミア、アナリティクス、健康サービス(美容、フィットネス、グルメ、小売)などのヘルスケア関連企業・団体が関連します。
デジタルヘルス領域では、中核的なプレイヤーが不在であること、個人/患者の健康データなどの必要なデータが散在していること、法制度の壁があることなどから連携が困難であるため、エコシステム化は進んでいるとは言えません。海外では保険会社が契約者向けに予防サービスを提供し、医療費の抑制を図るエコシステムを形成していますが、国内ではいまだ形成の途上にあります。
医療/健康は、疾患別の特性や地域単位の医療/健康サービス資源の有無など個別性が強いため、疾患や地域を網羅した広範なエコシステムが突然生まれることは起こりにくい領域です。そのため、まず単一疾患でのアナログ/デジタル連携や、地域単位での連携が先に進み、それらがつながることでエコシステムが形成されていくと考えられます。
デジタルヘルス・エコシステムにおけるデジタルの影響としては、以下の2点が考えられます。
第一に、個人/患者の生活・健康データの取得・活用による、パーソナライゼーション精度の向上です。ウェアラブル機器やスマートフォンアプリの活用により、病院や施設外でも個人の健康データが取得可能となりました。検査・診断結果などのある一時点のデータだけでなく、日々の生活環境における鮮度の高い時系列データと組み合わせることで、より個人の健康状態に合わせたサービス提供が可能となります。
第二に、データの活用によるリアル(アナログ)なヘルスケアサービスの高度化があります。ヘルスケアデータを有する企業が、健康・予防・予後領域のサービス企業を取り込むことによる、リアルとデータの融合を企図した買収または提携が起こっています。また、1対1のみならず、関連する複数企業との相互提携を進めることで、エコシステムの形成を図る例も出始めています。
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