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2021年AI予測(日本)

Be Bold:今こそAI活用を加速せよ
AI Predictions 2021

はじめに

2020年12月にPwC Japanグループは企業のAIの取り組み内容や活用状況に関して、日本では第2回目となるAI予測調査を行いました。本レポートでは本年度結果を前回(2020年AI予測調査、2020年3月調査実施)1との比較や米国における2021年のAI予測調査 2,3 との比較を行い、紹介しながら、AI推進のために企業が取り組むべき課題と対応について考察を行っています。

今回、調査を行う中で日本におけるAIの導入状況と日本の米国の進捗度合いを比較したいと考えました。米国では2020年10月に実施し、1,032名の企業幹部に対して調査を実施し、日本では2020年12月に米国と同じ設問に日本独自の設問を追加して実施し、売上高500億円以上でAIを導入済みまたは導入検討中の企業の部長職以上315名を対象に調査を実施しました。

2020年、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により、人の行動や意識が大きく変わり、経済活動を停滞させ、生活スタイルも一変しました。一方でCOVID-19の拡大への対策を前提条件として、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進しようとしている企業は、「AI活用」により新たなビジネスモデルにチャレンジしています。本レポートでは経年および日米比較の結果を基に日本のAI活用の現状、そして2021年に日本企業がAIを最大限に活用しビジネスを変革するために取り組むべき優先課題やアクションなどについて提言します。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響

2020年、COVID-19はあらゆるビジネスとテクノロジーに影響を及ぼしました。それは今回の調査における、2020年度売上高への影響に関する回答(図表1)からも明らかです。日本企業において74%の回答者が売上高は減少していると回答し、そのうち44%はその減少幅が10%以上に及ぶと回答しています。一方で、売上高が増加すると回答した割合は日本においては9%、米国は18%にとどまっており、売上高への影響がないと回答したのは日本では14%、米国では8%でした。また、業界ごとでは、COVID-19は小売企業と消費財企業にはプラスとマイナス両方の影響を及ぼしましたが、金融サービス企業への影響は少なかったことが判明しています。

今回、COVID-19がAI利活用の取り組みに与えた影響について確認したところ(図表2)、日本の32%が「AI利活用は加速した」と回答していますが、27%が「AI利活用は遅延した」と回答しており、遅延した企業も加速した企業より少ないながら一定数存在しています。米国では52%もの回答者が「加速した」と回答しており、理由としては、AIが具体的な成果、すなわち売上高の増加、より良い意思決定や顧客体験の向上に至るまでの利益をもたらしていると感じているからと考えられます。一方で、米国では日本よりさらに多い35%が「遅延した」と回答しており、COVID-19によるAI利活用の取り組みへの影響が二極化していることがうかがえます。企業規模で見てみると、世界全体の売上高が1兆円(10億米ドル)を超える企業のほうが他の企業よりもAIへの投資がより加速しています。

さらに、企業におけるAI導入状況とCOVID-19の売上高への影響度を比較してみると(図表3) 、米国では回答者全体のうち売上高が増加すると回答している人が18%に対して、AIを全社的に広範囲の業務に導入している企業では25%が売上高へ増加すると回答しており、AIを広範囲に導入している企業のほうが高い割合となりました。また売上高減少についても回答者全体では73%に対して、AIを全社的に導入している企業では68%と若干ではありますが、低い数値となっています。

日本において、売上高増加への影響度は全社的に導入している企業と回答者全体ではほとんど差は見られませんが、売上高減少に対しては全企業の74%に対して66%と低い割合になっており、米国と同じ傾向が見られます。AIを全社的に導入し活用している企業のほうが、若干ではありますが影響が小さくなっており、推察の域を超えませんが、コロナ禍のような大きな環境変化への対応にも効果がある可能性があると考えられます。

以上のCOVID-19による影響を踏まえた上で、ここからは、こうした新しい環境にある2021年の日本における、AIに関する5つのトレンドを抽出し解説します。それぞれの傾向を基に2021年に企業がAIを最大限に活用するための方策を提言します。これらの提言は2020年と2021年のAI予測調査(日本)の結果、2020年に実施したその他の調査4、PwC Japanグループとグローバルチームが最近著した論文5、さらにPwC が日本のクライアントを支援してきた経験に基づいています。













2021年の日本におけるAIの5つのトレンド

トレンド1 二極化が進んでいるAI導入

トレンド1:二極化が進んでいるAI導入

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トレンド2 効果が出始めているAI投資

トレンド2:効果が出始めているAI投資

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トレンド3 AI推進体制の多様化

トレンド3:AI推進体制の多様化

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トレンド4 人員計画および社員のアップスキリングにおいても進む二極化

トレンド4:人員計画および社員のアップスキリングにおいても進む二極化

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トレンド5 AIガバナンスの強化

トレンド5:AIガバナンスの強化

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トレンド1:二極化が進んでいるAI導入

日本におけるAIの活用状況を見てみると昨年に比べて確実にAIの活用が進んでいます。「全社的に広範囲にAIを導入している」企業は昨年の5%から16%と11ポイント向上し、「一部の業務でのAIを導入している」、限定した利用場面での活用も含めると27%から43%と16ポイント向上しています(図表4)。また、概念検証(PoC:Proof of Concept)を実施したが本番導入に至っていない企業は、26%から8%と大幅に減っており、このことからPoCから本番への移行が進んだ1年であったことがうかがえます。ただ一方でAIの利活用を検討レベルで終わっている企業は昨年の37%から33%と微減にとどまっており、日本企業におけるAI活用の二極化が進んでいることが判明しました。

図表4 AIの業務への導入状況(2020年・2021年比較)

なお米国では58%の企業が「全社的に広範囲の業務へAI導入している」または「一部の業務でAIを導入している」とAIを業務で活用しており、まだ21%が未導入で「AIの導入を検討中」または「PoCを実施したが本番導入に至ってない(PoC止まり)」と回答しており、米国においても日本ほど極端でないが、やはり二極化している傾向がうかがえます(図表5)。また、米国のほうがAI活用は日本より進んでいることが見て取れますが、決定的な差がついている状況ではなく、日本の企業が追い付くチャンスは十分にあると考えられます。

図表5 AIの業務への導入状況(日本・米国)

トレンド2:効果が出始めているAI投資

現時点でAI投資からリターンが享受できている領域を上位から順に見てみると、「より効率的な業務運営と生産性の向上」「製品とサービスの革新」「コスト削減の実現」「リスクの低減」「より良い顧客体験(CX)の創出」「売上高」の増加となっており、どちらかというと守りである効率化、コスト削減、リスク低減が半分、どちらかというと攻めである、製品とサービスの革新、CXの創出、売上増が半分となっており、AIの効果は攻守どちらにおいても効果が出始めています。

さらに、全社的にAIを導入している企業における、リターンを得ている領域の上位3位を見てみると日本では効率化、製品とサービスの革新、コスト削減、ですが、米国ではCXの創出、製品とサービスの革新、社内意思決定の改善、と傾向が異なります。特に米国の先進企業では社内意思決定の改善が2位であるにもかかわらず、日本においては最も低い効果となっています。日本ではまだまだデータ起点での意思決定が行われていないことがうかがえます。不確実性がより高まることが想定される経営環境において、迅速な意思決定をするためにデータ起点での判断が重要となる中、日本企業の意識は低いと言わざるを得ません。

図表6 現時点でAI投資からリターンを得ている企業の割合

また、日本は全社的に広範囲の業務にAIを導入している企業を見ても、現時点では米国と比べて投資へのリターンを得ている企業の割合はまだ低いですが、今後2年以内の成果を期待している企業を合わせると、全企業で見ても55%~79%、平均して72%の企業が利益を享受しているか2年後にはそれを期待しており、日本は今後2年ほどで多くの企業がAI投資へのリターンを実感できるようになるといえます。

図表7:AIへの投資からリターンを得ている割合 比較

トレンド3:AI推進体制の多様化

私たちは日本や世界各国のクライアントを支援する中で、多様なAI推進体制を見てきました。AI CoE (Center of Excellence:全社横断型組織)を設置している企業もあれば、全社のAI関連活動を推進するリーダーを設置する企業、各事業部門でAI推進チーム設置している企業も存在します。成果を上げているAI組織を持つ企業は、ビジネスやテクノロジー、企業の優先事項の変化に合わせて、長年にわたり、AIの推進体制を柔軟に変化させています。

2021年、日本企業はAI活用に対して推進どのような体制で管理、統制しようとしているか質問しました。AIを業務に導入済みまたは導入準備中の企業のAI推進体制を見てみると、AI CoEが34%、各事業部門が管理しているが28%、AI推進・統括リーダーが27%であり、AI CoEが最も高い数値でしたが大きなばらつきはなく、日本企業においてその組織・体制にはさまざまな形態があり、AI推進に関しては各社の企業文化や状況に応じて推進体制を構築していることが分かりました(図表8)。

図表8:2021年 AI管理・推進体制(日本:AIを業務に導入済みor導入準備中)複数選択

また、AIを本番導入済みまたは導入準備中の企業にAI導入・推進の責任者なのかを質問したところ(単一選択)、全体ではテクノロジー(CDO<最高デジタル責任者>/CIO<最高情報責任者>/CTO<最高技術責任者>)の割合が40%、各業務の部門長(LoB<ライン・オブ・ビジネス>)が34%、マネジメント(CEO<最高経営責任者>/COO<最高執行責任者>/CSO<最高戦略責任者>)が19%でした(図表9)。AI本番未導入の企業と比較すると、マネジメントは26%から19%と7ポイント下がり、各業務部門長が29%から35%と6ポイント上がり、テクノロジーは30%から40%と10ポイント上がっています。導入が進んでいる企業はテクノロジーか業務部門が推進していることがうかがえます。導入検討時など始めはCEOやCOOなどのトップマネジメントの強い推進力が必要になるかもしれませんが、導入状況が進むにつれ、テクノロジーや業務部門に権限を委譲して導入推進しているとうかがえます。また導入状況が進むにつれてより高度なAI技術や業務知識が必要になってくるため、それらを企業として責任を持っている部門にリーダーを委任しているともいえます。

図表9 組織におけるAI導入・推進の責任者(日本:「AIを業務に導入済み」または「導入準備中」)単一選択

トレンド4:人員計画および社員のアップスキリングにおいても進む二極化

今回の調査で、日本でのみ「AIを本格導入する際の課題」について質問したところ、日本の52%の回答者が「社員のAI利活用の推進スキル」に課題あると回答しました(図表10)。また、42%の回答者が「社員の開発/設計スキル」に課題を持っていると回答しています。このことからも人材育成に関する課題解決は日本企業にとって急務であるといえます。

図表10 AIを本格導入する際の課題(日本)(複数回答可能)

現在実施中のAI関連のスキル育成や従業員計画の取り組み状況について質問したところ、2020年は「AIを含むアップスキリングと継続学習プログラムの導入」というアップスキリングに関しての回答が33%と最も多かったのに対し、2021年は「AI活用に際し新たに必要となったスキルと役割を踏まえた人員計画の策定」が最も高く37%でした(図表11)。これはAI活用を具体的に検討し、導入する中で、AI関連のスキルアップだけでは足りず、技術スキルだけでなく、業務スキルや仮説構築力、ユースケースの企画力などのスキルや役割が必要であると認識され、その人員計画を立て始めているといえます。

日本企業の全体と米国を比較すると「AI活用に際し新たに必要となったスキルと役割を踏まえた人員計画の策定」が共に1位で22ポイント差、「AIを含むアップスキリングと継続学習プログラムの導入」が共に2位で21ポイント差があり、大きく後れを取っているようにも見えますが、日本企業の中の「全社的に広範囲の業務にAIを導入している企業」と米国を比較してみると、トップ3ではほぼ実施状況に差はありません。日本でもAI導入に関して進んでいる企業に関しては米国同様にスキル育成や人員計画についても必要性を十分認識し、着手しているといえます。

図表11 現在実施中のAI関連のスキル育成や人員計画

今後の予定も含めて取り組み状況を確認すると、「AI利活用に際し新たに必要となったスキルと役割を踏まえた人員計画の策定」では、おおむね実施計画中ですが、実施中もしくは1年以内に実施予定の企業は半分にも達しません(図表12)。多くの企業が重要としている従業員のアップスキリングにおいても、既に着手しているもしくは1年以内に着手しようとしている企業と、具体的な計画が作成されていない企業との二極化が進んでいます。人材開発は一朝一夕で実現できるものではありません。いち早く計画を実行に移した企業とそうでない企業では数年後に大きな差がついてしまう恐れがあり、その際には先駆者に追い付くことは難しく、手遅れとなる可能性が高いでしょう。故に、一日も早く従業員のアップスキリングを開始することが必要だと考えます。

一方で育成したAI人材が社外に流出しないような施策を合わせて実施する必要もあります。特にAIスペシャリストに関しては、その成果を正しく判断できる評価基準、また着実なキャリアアップが可能となるキャリアパスを明示する必要が出てくるでしょう。また、AIスペシャリストが彼らのスキルを十分発揮できる環境の提供、さらなるスキルの構築の機会の提供も重要になると想定されます。また一般社員も最低限のAIスキルが求められる時代がすぐそばに来ていると考えます。

図表12:2021年 AI関連のスキル育成や従業員計画の取り組み状況(日本)

トレンド5:AIガバナンスの強化

AIガバナンスについて、現在、企業はどのような施策を実施しているのでしょうか。具体的に、6つの領域、すなわち、AIガバナンス体制(会社全体としてAIを管理/監視する組織の設立)、データ入出力に関するガバナンス、機械学習に関するガバナンス、AIのアウトプットと意思決定に関するガバナンス、AIのモデル開発に関するガバナンス、ビジネスインパクトとその報告に関するガバナンスについて、それぞれの現状の取り組みを質問しました。

その結果、AIを業務に導入済みまたは導入準備中の日系企業において、6つのAIガバナンスの領域のうち5つの項目について十分に対応していると回答した企業は10%台にとどまり、20%台の回答を得たのは、データ入出力に関するガバナンスのみでした。

一方、米国企業においては、すべての回答項目において、日系企業よりは高い回答を得ており、AIガバナンスへの取り組み状況の違いが浮き彫りとなりました。もちろん、米国企業においても、リスクや課題を網羅的に特定し、完全に対処している企業の割合は非常に高いとは言えませんが、今後、日本においてもAI投資がさらに拡大していく中で、AIガバナンスの取り組みを強化していく必要性は高いといえるでしょう(図表13)。

図表13:AIガバナンス取り組み状況‐ 十分に対応している企業の割合(日本・米国:AIを業務に導入済みまたは導入準備中企業)

日系企業における、AIガバナンスへの取り組み状況の詳細は図表14のとおりです。6つのガバナンス項目間に大きな差はなく、どの項目も35%から40%の企業がガバナンス強化に着手済みであり、実施範囲を拡大しようとしていることがうかがえます。

一方で、リスクや課題を認識し、そのリスクや課題に対する対処が必要であると認識していながら未着手の企業がAI導入企業においても23%~32%存在します。まだ何も対応していない、すなわちリスクや課題の認識もできておらず、何の対処もしていない企業を含めると31%~38%にのぼっています。データ入出力、AIのアウトプットと意思決定、AIモデル開発などAIの機能に関する領域は比較的ガバナンスの強化が進んでいますが、会社全体としてのAI管理/監視組織の設立やビジネスインパクトとその報告に関するガバナンスなど、ビジネスや会社全体に影響があり早期に着手すべき領域のガバナンス強化が遅れており、今後のガバナンス強化の挑戦領域となっています。

AIの導入・活用が進むにつれて、関連する業務範囲が広くなり、ステークホルダーも社内から社外の取引先や顧客などに飛躍的に拡大します。こうした点から、海外のみならず、国内においてもAIガバナンス強化の動きは進んでいます。日本経済団体連合会(経団連)6や内閣府が推進しているSociety 5.0実現7において、AIを活用した製品やサービスの重要性は高まっており、AIアプリケーションの開発管理のみならず運用プロセスや推進体制はもとより、社会全体への影響も含めて、さまざまな視点でAIに関連するガバナンスを強化することが期待されています。

図表14:AIガバナンスの取り組み状況 詳細(日本:AIを業務に導入済みまたは導入準備中企業)

 

2021年に日本企業が取り組むべきこと

2021年AI予測調査において明らかとなった傾向と、日本をはじめとする世界中のクライアントを支援してきた経験から得たPwCの知見を総合して、AIの適切な活用をより一層加速していくために、2021年に企業が取り組むべき事項を4つ提言します。

1.AI活用の自走化の加速

不確実性がより高まると想定される将来において、AI活用の領域は拡大されると予想されます。AIを構築する際は試行錯誤を繰り返しながら精度を高めていく必要があり、また精度が高まった後もその精度を維持する必要があります。となると従来のシステム開発のように外部へ過度に依存していると柔軟性も俊敏性も維持することはできず、その精度を維持することが難しくなってしまいます。ついては、自社内のエンジニアで全て対応可能できることが望ましいですが、一部外部の力を借りながらも、自社でコントロールしながら自走化をすることが必要になります。自社内で自走できるスキルを構築するには時間がかかるので、一日でも早く自走化の準備を始めることを強く推奨します。

2.AIを活用した意思決定の促進

「社内の意思決定の改善」における日本でのAI活用は米国に対して大幅に遅れています。数多くの日本企業に接している私たちの肌感覚も同一であり、日本では経営管理などの重要な意思決定にアナログな部分が目立ちます。複雑な状況判断を要する経営管理においては、人間にとっても全ての状況を考慮した正しい意思決定ができているとは言い難いのが実情です。

また、変化が激しく、不確実性が高いビジネス環境において迅速な意思決定も求められています。全ての意思決定をAIに任せることは推奨しませんが、意思決定をサポートする材料提供にAIを活用することを検討すべきでしょう。

AIによる業績予測は意思決定の土台を作り、What if分析のようなシミュレーション技術は、意思決定による未来の効果を概観することができます。

AIを人間の代替と捉えずに、意思決定のサポートツールだと捉えることで、活用領域の幅は大きく広がるはずです。

3.AI専門家と業務知見者によるリーダーシップ

デジタルトランスフォーメーション(DX)を実行する上でデジタル分野に精通する人材を外部から登用し、推進リーダーに据える企業が増えてきています。AIも導入を進めていく上で技術的な点を含めたAIの専門知識は必要不可欠であり、そういった人材がリーダーとして求められています。外部から登用しない場合には自社においてAIの専門的なスキルや知識がリーダーにも必要になってきます。ですが外部のAIの専門家だけでは足りません。AIの導入領域が本格化し、対象が業務機能におよび導入範囲が全社的になることで業務への理解度や社内のさまざまな部門との連携が必要不可欠になります。その際、自社の事業や業務に精通し、現場と業務用語で会話ができ、社内各部門と人脈を築いているリーダーもAIの本格導入には必要不可欠です。AI専門家と自社業務に精通した従業員の融合でAI推進体制を構築することで、AIの専門知識と業務知識の両方を兼ね備えることができ、AIの本格導入を成功することができるでしょう。

4.AIガバナンスの実践

AIの活用を推進・加速する企業にとって、AIの活用による価値創出の最大化はもとより、そのリスクを最適化するための社内の管理態勢をどのように構築・維持していくかが喫緊の課題となっています。しかし、この課題の解決は一筋縄ではいきません。なぜなら、AIの活用に際して識別すべきリスクが非常に多岐にわたるからです。例えばAIが取り扱うデータの信頼性やデータプライバシーの管理はもとより、機械学習を通じた判断プロセスのブラックボックス化、学習データの品質不十分による誤処理、低い処理精度に起因した業務品質の低下、セキュリティ対策の不足による情報漏洩、非倫理的な利用など、検討すべき課題は枚挙にいとまがありません。さらに、これらのリスクは、採用している技術やモデル、適用ケースなどによって一様ではなく大きく変動し得ることも、リスク対応を困難にしています。このため、自社の目的や経営理念に則したAI活用の目標を明確にするとともに、自社のAI利用原則や行動指針などを策定・開示し、社内外のステークホルダーとの建設的な対話を行うリーダーシップが求められます。こうした開示と対話を通じて、AIの活用に伴う多様なリスクを適時適切に識別・評価し、リスクに応じた受容可能な水準で管理できるよう、社内外のさまざまなステークホルダーからの意見を反映する体制、プロセスを整備することが強く期待されます。

AIを活用した新たなビジネスが多くの価値を提供できるようにするためには、受容可能な水準でリスクが管理できているかどうかをリアルタイムにモニタリング・評価し、次の資源配分への意思決定へつなげることが、すなわち、PDCAサイクルを高速で回せるようになることが不可欠です。AIガバナンスを強化するだけでなく、ステークホルダーに対する説明責任を適切に果たしながら、社会からの信頼を醸成することは、AIを活用したビジネスの成功に大きく寄与し得ると考えられます。

おわりに

2020年には大きなビジネスの混乱が起こり、それがビジネスプロセスのデジタル化を加速しました。これにより生成されるデータの量が増加し、AIチーム、AIアプリケーションへの投資を促進しようという企業が増えています。

今回、日本においてAI導入が加速し、積極的にAIを活用している企業も出始めている調査結果が得られました。企業のAI戦略を実現するため、明確な目標を設定し、組織にあったAI推進体制を構築する将来の傾向も見えてきました。本レポートがこれからAIをビジネス戦略に活用し、さらなる飛躍を遂げようとしている企業の方々の参考になれば幸甚です。

 

主要メンバー

中山 裕之

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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藤川 琢哉

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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久禮 由敬

パートナー, PwCあらた有限責任監査法人

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池田 雄一

パートナー, PwCアドバイザリー合同会社

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加藤 靖之

パートナー, PwCアドバイザリー合同会社

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小野寺 美恵

パートナー, PwC税理士法人

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