
【2024年】PwCの眼(8)EV化における競争優位のポイントの変化
EV化が進む中、自動車業界の利益獲得の源泉は機械系/ハード系から半導体やソフトウェアといったデジタル系/ソフト系に移行しつつあるため、自動車メーカーやサプライヤーには事業戦略の再構築が求められています(日刊自動車新聞 2024年8月26日 寄稿)。
2023-09-14
2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻は、グローバル企業の地政学リスクに関する認識を大きく変えた。中でも多くの自動車関連企業は地域戦略の大きな方向転換を強いられており、ロシア生産事業からの撤退を進めている企業も多い。他方、西側諸国からの制裁下にあるロシアでは、日本や欧米メーカーが身動き取れない状況の中で、中国メーカーが一気にシェアを奪う勢力地図の地殻変動が起きている。
台湾では米国による大規模な追加の武器供与などの軍事支援が進み、米中両国の緊張が緩和される兆しが見えない状況下、自動車OEM各社は世界最大市場である中国事業を継続している。中国による台湾への軍事進攻などの可能性自体は短期的には低いと見られているものの、地政学リスクが高まってきている以上、企業は最悪の事態に備えた危機管理計画を策定する必要があるが、日系自動車産業にとってその影響度はロシア事業とは比較にならないほど大きい。
2018年の新エネルギー車(NEV)、2020年の商用車、2022年の乗用車と段階的に進んでいった中国政府による外資系自動車OEMへの出資比率に関する規制緩和は、皮肉にもCOVID-19による市場の混乱と米中間の緊張の高まりと重なり、これらの規制緩和政策を活用した外資系OEMによる既存合弁会社の子会社化はほとんど進まなかった。実際には業績不振による事業縮小や、既存のICE(内燃機関)事業とは異なる分野でのアライアンスを進めるケースが多いのが現状だ。
加えて、中国自動車OEMの台頭、特に電気自動車(EV)商品力向上と中国国内市場のシェア増加は日系自動車OEMにとって脅威であり、足元の販売不振への対応は経営課題の一つとなっている。個人情報保護法や外資規制といった中国独自の政策などにより、もともと外資系OEMにとって中国事業は概ね国内で完結する事業モデルとして確立されてきたが、昨今は半導体など一部の基幹部品調達に関する相互補完は不可能になり、ますます中国市場がグローバルから切り離されていく中で、日系OEMがサプライチェーンを含め中国拠点戦略をどう舵取りをするのか、大きな経営判断の岐路にあると言える。
日系OEMやサプライヤーの今後の中国事業に関する経営判断にはシナリオ毎の影響分析が必要となるが、幾通りものシナリオに対応できる柔軟かつ強靭なサプライチェーンの構築が求められるため簡単ではない。これまで、日系OEM各社のメインシナリオは中国市場から撤退しないという前提に基づくものが多く、EV向け部品に特化した地場サプライヤーからの調達や共同開発や資本提携などのアライアンスも視野に入っていた。今後、中国自動車OEMとの競争が激化して行く中で、米中対立が益々過熱するようであれば、中国政府は米政府が行ったような中国版IRA(インフレ抑制法)や中国国内の調達比率を更に引き上げるための別の施策を打ち出すことも考えられ、また台湾に関連する地政学リスクが過度に高まった場合など、日系OEMにとって中国市場からの撤退も選択肢の一つとなろう。逆に、中国市場に残る事を決めた日系OEMにとっては、中国国内で完結するサプライチェーンの構築が必然的なものになる。
※本稿は、日刊自動車新聞2023年8月28日付掲載のコラムを転載したものです。
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米国と中国の間での貿易摩擦や英国のEU離脱を巡る混乱など、地政学リスクのレベルが高まっています。日本企業にも、リスクマネジメントに地政学の視点が必要です。事業に対する影響の評価、リスクの定量化、シナリオ予測などの手法を用いて、地政学リスクによる損失の軽減や未然防止に向けた効果的・効率的な対策立案と実行を支援します。
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