
生成AIに関する実態調査 2025春 5カ国比較 ―進まない変革グローバル比較から読み解く日本企業の活路―
本調査では日本における生成AIの導入とその効果の実態を明らかにするとともに、米国・英国・ドイツ・中国との比較を通じて、日本企業の構造的な課題を考察します。また、効果を上げている企業に共通する成功要因を抽出し、日本企業が変革を実現するための具体的な示唆を提示します。
2021-08-12
企業による人工知能(AI)の活用は社会に多大な便益をもたらす一方、その影響が広範かつ甚大であるがゆえに、様々な課題やリスクが新たに生じる。例えば、学習データの偏りなどに起因するバイアス(ゆがみ)の問題である。
AIをどう活用し共存していくべきか。その原則的な考え方は、国際的なコンセンサス(合意)が形成されつつある。例えば、経済協力開発機構(OECD)は2019年5月に「AIに関する理事会勧告」を採択・公表し、それを踏まえた「G20AI原則」が同年6月に採択されている。日本では内閣府が19年3月に「人間中心のAI社会原則」を公表している。
現在は、これらのAI原則をどう社会的に実現、実装していくかを鋭意議論している段階だ。その中でAIを用いてDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する企業の経営層にとっては、AI活用による価値創出の最大化とそのリスクを最適化できる社内の管理態勢の構築が喫緊の課題ではないだろうか。なお、ここでのリスクは「アップサイドリスク(上振れリスク)」や「価値創出の機会」のプラス評価も含む。
この解決を困難にしている要因として、AI活用に際して識別すべきリスクが多岐にわたること、またその評価も採用する技術やモデル、適用ケースなどによって可変であることなどが考えられる。
そのため、経営層には、自社の経営理念に則したAI活用の目標を明確にするとともにAI原則を尊重するための「AI利用原則」や「行動指針」などの策定と公表など、組織全体を方向付けるリーダーシップが求められる。そのうえで、AIの活用に伴う多様なリスクを適切に識別・評価し、リスクを受容可能な水準で管理できるよう、社内外の様々なステークホルダー(利害関係者)からの意見を反映できる体制・プロセスを整備することが望まれる。
ステークホルダーには、ITやDX推進、法務・コンプライアンス(法令順守)などの社内の関連部署はもちろんのこと、AI開発会社や学習データを提供するパートナー企業、知的財産権やプライバシーなどを専門とする弁護士、技術的動向や企業倫理などの学識経験者、顧客や消費者に加えて、さらには株主など市場からの期待なども考えられる。
AIの活用促進に成功している企業では、AIを導入する目的と期待効果の説明だけではなく、リスクや懸念についても幅広く現場の従業員や関係部門などから意見を聞いたうえで、対応策も併せて社内外の関係者に説明、開示する体制を整備した例がみられる。
AIを活用した新たなビジネスがどれだけ価値を提供できているか、また受容可能な水準でリスクが管理できているかをモニタリング・評価し、次の資源配分への意思決定へとつなげるとともに、ステークホルダーに対する説明責任を果たしていく。このような仕組みと活動を通じたステークホルダーとの組織的な対話が信頼を醸成し、AIを活用したビジネスの成功に寄与することだろう。
経営層の役割 |
AI活用によるリスクをモニタリング、評価・判断し、対策を方向性付けする |
社内の管理体制 |
リスクを認識・影響調査・対応する体制を整え、個々の案件のリスクを管理 |
ステークホルダーとの対話 |
市場(ESG投資)や社会(SDGs)、パートナー企業、外部の有識者などと対話 |
※本稿は、日経産業新聞2021年4月14日付掲載のコラムを転載したものです。見出しおよび図表は同紙掲載のものを一部修正/加工しています。
※本記事は、日本経済新聞社の許諾を得て掲載しています。無断複製・転載はお控えください。
※法人名、役職などは掲載当時のものです。
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