
生成AIに関する実態調査 2025春 5カ国比較 ―進まない変革グローバル比較から読み解く日本企業の活路―
本調査では日本における生成AIの導入とその効果の実態を明らかにするとともに、米国・英国・ドイツ・中国との比較を通じて、日本企業の構造的な課題を考察します。また、効果を上げている企業に共通する成功要因を抽出し、日本企業が変革を実現するための具体的な示唆を提示します。
2021-08-07
フィンテックの進展による現金・現金同等物・金融商品のデジタル化は民間企業の経理・財務業務に大きな変革をもたらしている。現物を実際に確かめる「実査」、棚卸しなどの現場に立ち会う「立会」、文書で回答を求める「確認」などに代表される「現地・現場・現物」の精神を大切にしながら、経理・財務業務でサイバー空間と実世界をどう融合させていくのか。人工知能(AI)が重要な役割を果たしつつある。
すでに世界で、経理・財務業務や監査におけるAIの活用が進んでいる。例えば、現金と預金の監査手続きを自動化するツールが登場している。AIが被監査会社の文書を自動で読み込み、理解し、テストまで行う。このツールでは決算書の現金と預金残高、銀行勘定調整表、銀行残高証明書、為替書類など様々な文書が処理可能だ。
このようにAIを活用することで、経理・財務部門においては、大量のデータを処理・チェックする作業の大半は機械が行うようになる。こうした業務をAIに任せることで人間は、AIでは理解できない曖昧な事柄や事態に対処したり、通例でない処理や判断を下したりすることに、これまで以上に集中できるようになる。
また、現金の動きだけでなく、日々の取引や、取引の内容を貸借の勘定科目に分類する「会計仕訳」、帳簿を作成する「記帳」にAIを適用するツールも出てきている。全取引、全ユーザー、全アカウント、すべての明細金額などをツールにアップロードしたうえで、人間特有のバイアス(思い込み)を排除して、事業に関係するすべての取引を記録した「総勘定元帳」における不正・エラーの可能性を含めた不自然な取引を識別する。
監査人の経験に基づく判断を再現できるようにアルゴリズムを組み、使用すればするほど精度も向上する。特に大企業の経理・財務部門の場合、既存のシステムや人間の力だけで一つ一つの事業の取引をタイムリーに精査したり、一人一人が起票する会計伝票を精査したりすることは困難である。ところが、AIを活用したツールを使えば、ビジネスや個々人の特徴を踏まえて適切な対応ができ、信頼性の高い会計起票や財務報告を実現することにつながるだろう。
さらに見積書や請求書、領収書、契約書などの「証憑(しょうひょう)」の突き合わせでもAIの活用が可能であり、AIと人間のコラボレーションが進んでいる。
サイバー空間と実世界を高度に融合した「ソサエティ5.0」へのシフトは突然起こるのではなく、グラデーションのようにじわじわと、しかしながら確実に進む。この変革の過程ではアナログとデジタルの双方に神経を研ぎ澄まさなければならないため業務量が増えがちではあるが、AIを積極活用することによる業務変革のチャンスもたくさん生まれる。
内部統制の整備・運用にAIをうまく活用することで、役職員一人一人の行動に寄り添うリアルタイムのチェックが可能になる。経理・財務部門が様々な情報から示唆を引き出し、経営変革をリードする時代の幕開けである。
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※本稿は、日経産業新聞2021年4月6日付掲載のコラムを転載したものです。見出しおよび図表は同紙掲載のものを一部修正/加工しています。
※本記事は、日本経済新聞社の許諾を得て掲載しています。無断複製・転載はお控えください。
※法人名、役職などは掲載当時のものです。
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